はっきりしたケンカ
本日から、この作品と同じ世界観の
『戦う鎧もの』
を投稿致します。
あちらの作品は文章を読みやすく。
こちらの作品は文章を読みにくく。
を心がけています。
<あん?にく?肉食いてえ!
はい、文章をも食べたがるような作品です。
もしよろしければ、あちらもお読みいただければ幸いです。
あの後、ザルインから正式に調査を依頼された。
以下の3つを調査して欲しいとのことだ。
1.何故兵士のふりをするのか
2.新たに補充される偽兵士はどこの組織から来るのか
3.一部の人たちが支払ってしまった税金はどう使われたのか。
もし使われていなければ、何かに使うのか
また、出来る範囲での治安維持も頼まれた。
先程俺の顔が知られてしまったために、
今回の俺は少し目立つくらいがちょうどいいだろう。
と言っても、普段から俺が目立って、
シャラが隠密活動するのが俺たちの探偵スタイルだ。
こういう時こそ相棒を頼ろうと思い、
シャラと相談して今後の方針を立てる。
「さて、じゃあこれからどうするかを決めようか」
「今回は相手の居所はわかってるよね。
私が駐在所に行って見張る?」
「シャラは耳がいいからな。
50m先の話し声だと聞こえるか?」
「うん。この街はあんまり風が吹かないし、
犬も人も静かだから問題ないと思うよ」
先ほどのザルインがいた建物にも4匹の犬がいたが、
とても静かだったな。
飼い主にあまり似ていないのはどういうことだろう。
「わかった。
なら、俺がそういう話題を出すようにさっきの兵士を突いてみる。
本当に偽兵士ならば、
俺がそういう話題を出しながら啄いたら、親玉に相談するだろう」
シャラが少し安心した顔を見せる。
すぐに偽兵士だと決め付けて動くことは早計だということだ。
現段階で得ている情報としては
『国旗が数年前のものだった』
それだけで、偽兵士だと断定はするべきじゃない。
「まだ偽兵士と決まったわけじゃないもんね。
じゃあ、早速行ってくるねー」
走って北に向かっていった。
100mを10秒で走る速さで。
シャラについて少しだけ説明しよう。
口調や年齢のせいもあり、いつもは頼りなく思うが、
仕事になると真面目になる。
はっきり言って探偵としての技術は俺より高い、
頼りになる相棒なのだ。
日頃から真面目にして欲しいとは思うが、まぁいいだろう。
あ、俺がシャラより劣ってるってわけじゃないぞ。
「さてと、あの兵士を探さないとな」
まず俺は、ザルインに紹介してもらった宿まで向かう。
必要ない荷物を置き、
武器と最低限の食料が入ったリュックを持って宿を出た。
ここで時刻を確認する。
街に着いたのが、日がちょうどてっぺんの時だ。(12時ごろ)
ザルインと話を始めたのがてっぺんから少しずれた辺りだったな。(14時すぎ)
そして先程から少しずれたことを考えて(15時の少し前)
ひとまず2時間程度行動するか。
街の住人に聞いてあいつらの居場所を探す。
いつも2人ずつの4組が、
バラバラになって街を巡回しているそうだ。
先ほどの兵士たちはまだこの辺りにいるそうだ。
他の住人に聞いても同じことを聞いたため、
確実な情報だろう。
10分ほど探し回ってようやく兵士を見つけた。
それにしても、
先程から住民から物珍しそうに見られている。
何人かは付いて来ている様子だ。
わざと絡もう。
「おーい」
「あ、てめぇさっきの!」
「なんだぃ貴様!何か用か?」
二人ともすごく怒っているようだ。まぁ当然か
「お前らが偽兵士って聞いたんだけど本当?」
「だ、誰だ!俺たちを偽物呼ばわりするのは!」
「俺たちを侮辱するつもりか?」
ん?本物になりきりすぎているな。
本当に怒ってしまった。
「貴様!こうなったら本気で相手してやる!」
先程も戦った相手が剣で切りかかってくる。
周りに人が大勢いるのによくやる・・・。
後ろに下がって剣を避ける。
しかし相手の体が大きく、
鎧や鎖かたびらがあるために、
どうしても俺より遅い。
そう思っていると
「喰らえぃ!」
右からもう一人も攻めてくるな。
剣での突きだが、さっきの兵士より遅い。
前にも戦った相手をA、
今剣で突いて来た赤ら顔をBと呼んで、
戦いながら状況を考える
右後ろに送り足で避けて、
Bの体でAから見えないようにする。
足場が砂のため、少しの力で下がることができる。
右足の親指に力を入れて、滑りすぎないようにする。
そしてそのまま、体勢が前に戻る瞬間で右足を上げて、
Bの手首をつま先で蹴り上げる。
「はっ!」
掛け声も出すが、あまり威力はない。
俺が距離を取ろうとすると、
Bもすこし下がって、Aに道を譲るようだ。
確かにチンピラのような戦い方だ。
今のうちに武器を取り出そう。
「なんだそれ!刀は抜かねぇのか!」
Aが驚く。
俺が取り出したのはマロホシと言う、
十手のようなの小さな武器だ。
十字架に似た形をした十手といえばわかりやすいだろうか?
持ち手から伸びる鎖を右手の手首に取り付ける。
Aは小さい武器を出さないから、
俺が手加減していると思っているようだ。
「刀はあまり使いたくないんだ。
本来の刀は刃金で打ち合ったりしないんだが、
お前の攻撃を刃で受けただろ?
これ以上刀を使うと刃こぼれするかもしれない」
「舐めやがって!クソ!
俺の体も剣もお前よりはるかにでかいんだ!
しっかりとビビれよ!」
「そういう反応が欲しいのか?
甘えた環境で育ったらそうなるんだ。
覚えとけ、態度もでかいエリートさん」
Aの顔が真っ赤になる。
自分より体が小さいやつは自分より弱くないと許さない。
そう思っているのだろう。
反撃してこない奴ならいじめても構わない
って発想と全く同じだな。
つい本気で腹が立ってしまい、
さらに煽ってしまったが・・・まぁ良いだろう。
「絶対ぶっ殺してやる!おい、俺がやるからお前はそこで見てろ!」
AはBより立場が上のようだな。
Bが少し離れた場所に立つ。
Aと俺の距離は、現在4m程だ。
剣を振るには少し距離が空いている。
マロホシを右手で逆手に持ち、相手の攻撃を待った。
少し睨み合ったあと、Aが一歩踏み出した。
俺は剣を振り切られる前に、右足を前に出して、
右手をAの右肩に向けて突き出す。
その瞬間にAは、俺の背中の方に回り込んだ。
剣を頭上で構え、あとは斬り下ろすだけだ。
剣を持つ者は普通このように動いて、相手の腕や肩を切るのだ。教本のような動きだな。
反応も早く、Aが強い兵士であることを実感する。
しかし、そう動くのは予測済みだ。
「もらっブゥ!」
もらったぁ!って言いた言うんだろうが、
それはこっちのセリフだ。
右手をすぐに戻して、
マロホシの鎌部分とAの側頭部を思いっきりぶつける。
兜があるが、振動が頭まで伝わり脳震盪を起こす。
突いたあとのマロホシは、落ちてくる剣を払うため、
頭を殴った一から動かさない。
すぐに立てなくなり、Aは倒れた。気絶したようだな。
剣を離さないのは良い事だ。
砂を吸い込まないように、足で転がして顔を上向きにした。
「ひぃ!」
Bが情けない声を上げる。
マロホシをBの右足首に投げると、
「グア!」っと悲鳴を上げて震えだした。
話をするなら今だな。
マロホシを鎖で引っ張り、Bの顎下に押し付ける。
更にBの右手首をひねってから、耳元で話しかける。
「俺は探偵だ。お前たちが偽兵士だと聞いた。なぜ偽物のふりをする?」
「し、知らねぇよ!」
「では胸の章はなんだ?これは古い章だろう?なぜそれをつけている」
「俺はこの街に半年前に来たんだ!詳しいことは知らねぇよ!」
「では話題を変えよう。先程税金の話をしていたな?」
ザルインと会う前だ。税金を若者から取り上げようとしていた。
「回収した税金は何に使う?」
「そんなのイタールアに納める事以外で使い道なんかねぇよ!」
「う、嘘つけい!」
住民の一人である、まるで酔っ払いのように肌が赤い、老人が大声を出した。
これは面倒だな
「し、俺は何も知らねぇんだよぉ」
「お前ら偽兵士が!俺から金を奪い取りやがって!俺の知り合いなんて、お前らに金を取られたせいでこの街を出て行ったんだ!」
「そうだそうだ!」
顔の赤い老人がAの腹を蹴り出すと、同じようにAを蹴る住民が出てきた。
下手すると暴動に発展するな
マロホシをBの首に押し付ける
「グゥ・・・」
震えがひどくなったが、こいつには一仕事してもらわないと。
「さっさと帰って親玉に伝えろ。この探偵ケレンが、お前たちの悪事を暴くとな。
後この手紙を、イタールアの探偵事務所に届けろ。街に着いたって報告書だ」
大声でこうでも言っておけば、暴動も起こらないだろう。
探偵は自国の軍に守られる決まりがある。
つまり、探偵の報告書は兵士が届けることになるのだ。
「クソ・・・」
と呟きながら、Bは手紙を受け取り、Aを担いで駐在所に向かった。
「探偵なのにそんな目立ったことを言っていいんですかい?奴らに八つ裂きにされませぬかい?」
顔の赤い老人が話しかけてきた。
「構いません。
兵士は、私が探偵業をしているとわかれば、
攻撃できない決まりになっているのです。
それと、この街に来ることは私の所属している探偵事務所も把握済みです。
私がもし奴らに殺されでもして、10日間連絡が無い場合、
探偵が居た国の首都から強制捜査が入ります。兵士が本物でも偽物でも危険な状態になるわけです」
「なるほど。それなら安心ですな」
探偵という職業は、この世界だとエリート職だ。
軍お抱えの組織であり、
謂わば軍が一般人向けの相談窓口と言った組織だ。
それに、この世界は5つの島国から成り立っているが、
互いに戦争等は起こさない。
国内で街同士での戦争があるが、それすらも珍しい。
既にこの世界での領土争いは終わっているのだ。
そのため、海を越えた国同士は友好関係を築いている。
海を越えた国を侵略するのは、
結局マイナスになるだけと皆わかっている。
だからこそ、各国の探偵は、それぞれの軍に守られているのだ。
「では私は、明日の準備がありますので宿に戻りますね」
「明日何かあるのですかな?」
「それは秘密です。こちらの調査に支障が出るといけませんから」
「そうですな。失礼いたした」
そう話して宿に向かう。
色々わかったことがあった。
こっちの調査は順調だな。
本日は記念日ということで、もう一話投稿致します。