自国で起こった事
『今までは下準備』
とある人物が囁いた。
実の話、この人物は人ではない。
彼の正体は別の物語で暴かれる。
しかし彼の見ている先には、
とある人物達が写っている。
彼が待っていたのは今この瞬間。
世界、タイミング、人数、兵力。
待っていたのだ。
『しっかりと準備は整えました』
彼の話し方は、
妙に緩やかで、
聞く者の耳に残るだろう。
『時は来ました。前世代様』
彼は機械。アンドロイド。
前世代とは、人で言う先代。
だが、彼の価値観を理解できるものは居ない。
少なくとも今はまだ。
なぜなら彼の後ろにいる、
他の機械たちも、
理解していないのだから。
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「煙だぁ!」
その声を聞いて、
街の端にいたものは全員西門を見る。
南西の、
更に西寄り方向から煙が立っているのだ。
「西南西に異常があるな。
あの方角には砂の多い地域もあったはず・・・、
だけど、それを踏まえてもあれだけの煙・・・。
何かが来ているのか」
「でっかい鯨でも来てるのかな?」
シャラが冗談を言う。
一瞬見ただけでは、
巨大生物が来たとも納得できる。
だがよく見ると煙は横に広い。
横に広がった煙も、
場所によって濃さが違う。
「煙が横に広がってるから、
巨大な生物ではないな。
しかも一直線にこちらへ来ている。
目的はこの街だ」
「・・・いちいち間に受けなくていいから」
軽口を叩き合う。
誰もが胸騒ぎを感じる状況だからだ。
俺達はこのように緊張感を和らげるが、
和らぐ方法を知らない人はパニックに陥る。
「なんだよあれ!」
「何だ何だ!?」
現に視界に入る人々は、
状況を理解するよりも、
興奮しているようだ。
大きな地震で地面が広がってから、
大きな煙が街の近くで立っている。
そしてよく見れば、それが近づいている。
むしろ、状況を把握できないのが普通だろう。
「どどど!どうしたら良いんですかい!」
クセ・ハイルが慌てる。
野菜を育てている兄弟だ。
彼は多分、レタスマンか?
先程の揺れが収まったとは言え、
異常事態だ。
「さっきの地震。それに地面が広がった現実。
この国・・・いや大陸が広がったと考えるべきだ」
「遠くの山も広がったもんね。
それは確かにそうかも」
陸が広がった。
俺は、そうシャラと結論づけた。
通常では考えられない現象だが、
取るべき行動派決まっている。
「とにかく、城の方向に逃げてください。
避難活動が行われているはず」
「わひゃ・・・わかりましたぁ」
「ケレンさん。あなたはどうされるので?」
クセやカマイルが動き出す。
ザルインも冷静で、
ひとまず安心だ。
しかし、俺が取るべき行動は、
他の人と違う。
「俺はあの煙について調べたい。
でも勝手には動けないので、
軍と連携を図ります」
「お気を付けて」
「ケレンさん。シャラさん。
ご武運を」
オリガーも落ち着いている。
パニックや興奮状態にならない人は、
この状況では重要だ。
ここで危険なのは、
落ち着いていない人に、
『落ち着け』と発言してしまう事だ。
自分が落ち着いていない理由を探せば、
その者は更なる混乱に陥るからだ。
落ち着けない場合は、
その人の情報処理能力に任せるしかないのだ。
そう自分に注意しながら、
クセ・ハイルやオリガー達を避難させる。
すると、馬に乗ったデガルズが向かってきた。
行動が早くて助かる。
街一番の武力部隊である、
バイキング隊の隊長だ。
陸に上がってからの海賊は、
家畜の首を斬った斧で稽古をする、
恐るべき者達だ。
さすがにタフで、
地面が揺れてもしっかりと落ち着いている。
「探しましたぜ旦那」
「どうした?」
「依頼ですぁ」
この状況で探偵の仕事と言えば一つだ。
むしろ、その仕事が本職とも言える。
「敵戦力の探偵だな?」
「ええ。緊急性が高いので、
俺の愛馬『カトラ』をお使い下せぇ」
デガルズが馬から降りて、
手綱を俺に渡す。
「わかった」
つまり俺の探偵した内容が、
国の公式な情報になるのだ。
緊張感を覚える。
「シャラはダッシュできるか?
なに。ただのランニングだ」
「馬に負ける私じゃないよ」
では早速、敵戦力の把握に向かおう。
「接敵の必要性はありそうだな。
Rコースで行くぞ」
「はーい」
馬を駆ける。
現在は街中だから、まず街から出よう。
しかし街中をしっかり見ると、
パニックになりながらも避難する人々が見える。
家は内側へなだれ込むように崩れ、
柵も引っ張られたように割れている。
緊迫感を感じるだけでなく、
最速の偵察を思案する。
「本当に、一体何が起こったんだ?」
そのヒントが、
これから探る敵にあるかもしれない。
その後、無言で馬を走らせ続けて15分。
街から12kmの距離に出る。
渓谷の上だ。
「ここは高い位置だ。
状況を見渡せる」
以前はここまで3km程の距離だったはずだが、
地面が広がったことで、距離が4倍になったのか。
丸い岩が置かれており、
谷の下を通る敵に一方的な攻撃ができる場所だ。
この岩には、フリントロック式の銃と火薬2種、
(弾を飛ばす黒色火薬と、
黒色火薬を点火する口薬)
それと非常食、ナイフに、筒状の小さな棒。
そして馬用の耳栓が置いてある。
谷の下を覗く。
煙の出ていた場所と、
地面の広がり具合を計算して、
現実を見比べる。
風向きは追い風。
風速も緩やか。
・・・計算を繰り返しても変化なし。
「よし。
あれが地面を進む生き物であれば、
ここを通るだろう。
計算通りだったな。
そっちは?」
シャラは、遠くの敵を観察する。
俺が状況把握で、シャラが戦力把握だ。
「うーん。人が沢山歩いてくるんだけど、
武器を持ってるようには見えないね。
距離はここから3km程度。
ここまで30分って感じかな」
移動手段は徒歩か。
つまり、街まで2時間程度。
部隊編成をするには充分な時間だ。
「でも、着てる服に見覚えはないなぁ」
変な服を着た人が、
こっちに歩いて来るってことか?
「変な服?」
「うっすい服。
体に張り付いてる。
色は全員同じで白っぽい肌色」
布の服だろうか。
奇抜すぎる。
「他には?」
「全員顔が一緒。
男か女かわかんないけど」
「・・・」
気味が悪い。
これでは『敵』と断定できない。
とにかく武器だ。
できる限り近づいて、
銃弾と叩き込もう。
そう考えながら筒状の棒と、
馬用の耳栓を持ち出した。
次は木曜日!




