!大地が、大地が揺れるぞぉ
ちょっと長め回
「ムッシュ。お待ち頂き感謝します」
「ケレン遅いよー」
「よく来てくれましたね。
では早速。準備をお願いします」
5人のクセ・ハイルを連れて、
オリガーと合流する。
後ろにオマケでシャラも居る。
ここは街の中でも、
要人をもてなす料理店。
木製の店は、軽くて柔らかい香りに包まれている。
そこに設置された椅子には、
ザルインの村に視察を行なった、
城の高官が2人いる。
それと向かい合う形で、
オリガーとザルインが座る。
「さて、じゃああの人たちの好みを言うね」
「お、おう」
シャラには、彼らの好みを調べてもらっていた。
「ちょっと淡白な味が良いみたい。
香り付けした吸い物も良いかも」
「どうだ?
お前の大葉捌きなら行けるんじゃないか?」
「俺のトマトも使えそうだな」
「決めた!僕の大葉愛を見せるよ!」
なんだその決めゼリフ?
「どんな料理を作るんだ?」
「後ろで見てよっか」
しばらくして、料理を作り始めた。
まずは出汁作りをはじめるようだ。
「トマトを湯むきして、
中のゼリーを取る。
すると出汁を準備できる」
「俺は鶏を捌いて、軽い焼肉を作る」
「米味噌があるから、これで味を付けよう」
「キャベツとレタスは千切りだな」
「すごい・・・良い大葉だなぁ。
一枚くらいもらっても・・・良いよね?」
時間がかかりそうだ。
高官を待たせてしまうな・・・。
「高官には、
何か飲み物を準備していようか・・・」
「ん?なんで私の方を向くの?」
「ウェイトレスでもしてくれないかなって」
「やだ」
そう言うと思ったが・・・。
現状サポートが必要だろう。
「あー。
このウェイトレスの服かわいいなぁ~。
どこかにかわいい女の子がいてくれたらぁ~、
今貸切にしてるお店も華やかになるのになぁ~」
「そんなこと言ったって、
・・・私やらないんだから!」
何だかんだで迷ってるじゃないか。
もう一押しか?
「この青いエプロンはぁ~、
金髪の子に合うだろうなぁ~。
これが似合う女の子にぃ~
紅茶を淹れて欲しいなぁ~」
「話の内容が恥ずかしすぎ!
もう!やれば良いんでしょ!やれば!」
勝った。
ちょろいなぁ~。
「軽い香りの紅茶と言えば・・・
お、苺がある」
「ほう。いちご?」
「これをすり潰して、ざるに通す。
ほらケレン。やって。苺すり潰して」
「はいよ」
苺を10粒すり潰す。
それをざるに通した。
「シャラー。終わったぞ~?」
あれ?
ティーポットにコジーがかけられてるけど、
シャラが居ないぞ。
「なあ、シャラ見てないか?」
「俺達は調理中だ。見てない」
クセ達は知らないようだ。
そう思ってると、厨房に人が入ってきた。
エプロンを着たシャラだ。
「おぉ。案外かわいいじゃん」
「案外?今案外って言った?」
怒らせてしまった。
だが、顔が整ってるし、
そこそこ長い金髪も手入れされてるし、
服が似合ってるのは事実だ。
17歳にしては子供っぽいけど。
「・・・言ってみるもんだな」
「うっさい。
ほら。このざるを通した苺に砂糖を混ぜ入れる。
で、もう一度ざるに通しながら紅茶と混ぜる」
「なんで?」
「このままじゃ、つぶつぶするから」
「へぇ~」
案外凝ってるな。
作業を終わらせたシャラは、
ティーセットを持って高官のところに向かう。
「料理まで少し時間がありますので、
こちらをお淹れ致しました。
『キーマンのストロベリーティー』です」
「見た目通り甘い香りだな」
「どこの家の子だい?」
あ、シャラの苦手なパターン入った。
でも接客スマイルで頑張っている。
頑張れシャラ!えらいぞシャラ!
ようやく高官に茶を出して、
こっちに戻ってきた。
「後で組手に付き合ってもらうね・・・」
耳打ちされた。
かなり機嫌が悪そうだ。
腕か足は、しばらく壊れるかもしれない。
「ゴメンナサイ」
「ふん!」
調子に乗りすぎたか?
「できた!
ケレンさん、シャラさん!味見してくれ!」
料理ができたようだ。
「どれどれ」
「・・・うん。良い感じ」
うまい。
トマトを出汁にして、米味噌を混ぜたようだ。
それに大葉で香りづけをしている。
淡白な素材で濃厚な味付けをしている意外性。
水分量を調節したのだろう。
このタレを鶏肉にかける。
鶏肉にキャベツとレタスの千切り。
鶏肉をベースにはしているが、
千切りした野菜にタレをかけても、
かなり良い味が出ている。
「どの野菜も際立ってるな」
「いいや!俺たちの勝負がまだだ!」
「俺のキャベツが一番だ!」
「だからレタスが一番だ!」
確かにキャベツとレタスだけ、
見分けをつけにくいな。
「とにかく食べてもらおう。
シャラ」
「はぁ・・・」
溜め息をつくシャラ。
渋々接客スマイルで料理を運ぶ。
「ほう。これは旨そうだ」
「このタレを味付けにして、
お召し上がりください」
「ほほう」
早速食べ始める高官たち。
評価は良い様だ。
「ケレンさん」
「うん?」
クセ達が話しかけてくる。
「俺達は皆で店を出すのが夢でした」
「でも、住民権が1つしか無くて、
どうすればいいのかわからなくなったんです」
「それで作法の名士であるオリガーさんに、
本を貸してもらったんです」
「態度がしっかりしてないと、
住民権もらえないって思ったから」
「結局、それでも店は出せないと気づきました」
顔が似てるから、
誰が言ってるかはわからないけど、
話の内容はわかる。
「そうか」
「あなたがたのおかげで、
俺達は店を構えることができます」
「絶対良い店にしますんで、
今度食いに来てください」
「ああ。ありがとう。
是非行かせてもらうよ」
話が上手く纏まって良かった。
『ガチャ』
ドアが開いた。
「お邪魔しまーす」
「カマイル?」
「あれ?」
カマイルが店に来てくれた。
手伝いに来てくれたのか?
「犬の世話が楽しくて、
ちょっと遅れちゃいましたけど・・・。
間に合いませんでした?」
「ザルインに言われたのか?」
気が利くけど、どうにかなった。
「あれ?私のエプロンは?」
「へ?」
「青いエプロンがあると思うんですけど」
まさか、あれはカマイルの趣味だったのか?
「あ、カマイルさん」
「シャラちゃん。わー、似合ってる!」
「ほんとー?これケレンの趣味だよー」
おい馬鹿やめろ!
まずいぞ!
「違う違う!」
「可愛い女の子に『違う』ってなんですか!」
「変態エロおやじ!」
結局、高官には良い借りを作れたらしく、
俺以外は皆良い結果に終わったとさ。
めでたしめでたし。
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「怪我の具合も殆ど治ったな」
「お疲れケレン」
シャラが着替え終わったあと、
何か話があるらしく、
店の外に待っていた。
「今回の依頼が終わったから、
評価の結果を言うね」
探偵を評価する場合、
すぐに言うのがしきたりだ。
「まず探偵として。
ケレンは不適格です」
結論から言ってくる。
「『依頼主より調査対象に深入りした』
そう見える活動結果でした。
これは依頼主をないがしろにしています」
探偵らしく振舞うシャラは、
口調がかなり固くなる。
そのせいもあって、
言葉の一つ一つが重く感じる。
「そうか」
「次に、調査対象に見つかった場合。
強引な操作方法に切り替える行動。
危険です」
「家の上で張るのは、
かなり強引だったな」
調査の初めは、特に顕著だった。
「次は調査方法。かなり強引です。
その証拠ですが、
ケレンがニュージェーの村に行ってる間、
私は役場に行ってきました」
「それって、クセの人間性を知るためか?」
「そう」
そもそも、
依頼が来た時の相談内容が、
『何故怒ったのかも知りたい』
『本を確実に取り戻したい』
だったとも言える。
「で、『クセはかなり焦っていた』
との証言を確保。
ケレンは役場に行ってないでしょ?
推測だけに任せないで、
しっかり聞きに行くべきだったんじゃない?」
「確かに・・・」
鋭い指摘だ。
「まあでも・・・」
「ん?」
まだ怒られるのだろうか?
少し身構えてしまう。
「誰もがするような調査方法だったら、
『本は帰ってきますよ。
彼は住民権を持ってない人ですよ』
って報告で終わっちゃうもんね」
「そうだな」
オリガーから頼まれたことだけを調査すれば、
その答え以外には出ないだろう。
「・・・」
「ど、どうした?」
顔をじっと見られる。
どうしたんだ?
「ま!お父さんはこう言ってたよ?
『不適格であるほど探偵としては、
心強い場合がある!』
ってさ」
「そんなことを」
大胆な言葉だな。
一概にそうとも言えないだろうに。
「依頼主の文言通りに調査するんじゃなくて、
調査対象にまで甘すぎる!
でも最終的に丸く収める。
ケレンのそう言うやり方、
私嫌いじゃないよ!」
「・・・ありが、と?」
あれ?褒められてる?
俺自身色々と反省するような、
危ない案件だったが。
「さてと!じゃあ今回の事件、
一つ違和感あるでしょ?」
「あぁ。
『一度だけ偽物が紛れてた』
だろ?」
「お、そっちはわかってたみたいで安心。
変装の得意な『観察のアシュリー』さん。
調査対象のヒントを用意してくれてたの」
成程。
一目見ただけで人の本質を見抜き
成り代わりの達人。
称号持ちの探偵だ。
彼の・・・彼女の・・・?
まあ変装してたのは、
最初にクセ・ハイルと会った時だ。
歩く後ろ姿を見て、
キャベツの印象が強い人間だと感じた。
「最初に会ったクセ・ハイルは偽物だろ?
本物が歩く後ろ姿は、踵が目立つ。
肩にキャベツを乗せて歩くには、
バランスが崩れてしまう!
話し方も少し違う!」
「ふぅん」
「そして何より、
本物は肩にプランターを乗せていない!
この3つの特徴に違和感があった!」
俺も気づくのが遅くなってしまった。
「やれば出来るじゃん!」
『ガチャ』
「ケレンさん、シャラさん。
帰る準備出来ました」
「・・・おい。
その肩に乗ったプランターなんだ?」
「へ?キャベツです」
あれ?
「そ、そうか・・・。
すぐ行く」
「ふぅん・・・」
・・・。
「2つの特徴に違和感があった」
「ソウダネー。
まあ、観察力は30点?」
「デスヨネー」
こんな茶番は早く終わらせて、
オリガーに報告をしよう!
「ええい!気を取り直して!
オリガーに調査報告だ!」
「あ、それもうやっといたよ」
「そ、そうか」
シャラにはまた面倒をかけてしまった。
「昨日の朝にね!」
「え?」
「役場行った後だから、
クセの家で野菜捜索する前!」
「そ、そうか」
俺より行動が1日早い。
まあ、
俺の全盛期は過ぎたってことかもしれないな。
「じゃあせめて報告書を・・・」
「それも昨日・・・あれ?」
『ガタガタガタ』
「ん?地震か?」
急に地面が揺れ始める。
とても強い揺れだ。
震度6・・・より大きいか?
『ゴゴゴゴゴ』
「揺れがすごいよ!」
クセ達がいる家からも、悲鳴が聞こえる。
だが、地震と少し違う点がある。
「これは・・・?
地面が動いてるのか!!」
地面が動いている?
いや、広がっている。
『ガシャアアアア』
店が真ん中から崩れ落ちる音だ。
地面が広がって、建物が裂けた!?
これは何だ!
「なにこれ!!」
シャラも慌てている。
無理もない。
揺れが収まったのは、
それから5分ほどしてからだった。
次の話は、火曜辺りに投稿できそうかな?
てか時の王、次回は偽物大発生?
新土管大王神マーク2は出ますかね?




