料より量。重いと強いね。
目を覚ました次の日。
未だ体の傷は治らない。
だけど少しマシになったかもしれない。
痛みが減っているのだ。
「早くトレーニングしないと鈍るかもな・・・」
だが今は休息だ。
『コンコン』
そう考えていると、部屋のドアがノックされた。
こういう時はドアを4回鳴らすのが普通だが、
誰が来たんだろう。
例の鎧人間か?
「どうぞ」
ドアが開かれた。
そこに立っていたのは、予想通り鎧人間だ。
「・・・」
しばらく沈黙が続く。
こんな大男が無言で居ると、とても緊張する。
一体何の用だ?こちらから聞くべきか?
「あの・・・」
少し驚く。
まるで子供のような声だ。
「・・・はい?」
「・・・」
また沈黙。
こんなに威圧感のある相手は初めてだ。
冷や汗が出そうになるが、呼吸を整えて対処する。
「・・・話そうと思います」
「へ?」
え、何この人怖い。
「うん。ありがとう」
「は?」
対応に困る。
すると彼は、おもむろに鎧を脱ぎ始めた。
「な!?」
俺は驚いた。
鎧兜の中は空洞だ。
では誰が鎧を動かしてるんだ!?
鎧の中から出てきたのは、
見覚えのある少年だった。
「あの、僕のこと覚えてますか?」
「君って・・・6年前に俺が助けた子だよね?」
「・・・はい」
本当に驚いた。
キリーグなんて化物を倒した鎧人間は、
俺が新人の頃対応した案件に関わっていた子供だなんて・・・。
「君は、孤児院にいるんじゃ?」
俺は、彼の事をしっかりと覚えている。
当然だ。
初案件で救ったのが、人を食べる少年だったのだから。
あくまで普通の人間として扱い、
孤児院に任せていた。
しかし、沈黙が続く。
どうやら、孤児院は抜け出したみたいなだ。
「おーい、ケレン。お客様がお見えだぞー」
下の階から銀次さんの声がする。
「俺まだ怪我してますよー?」
「だがご指名だ。話だけでもしてきてくれー」
俺を指名しているのか・・・どんな人だろう。
「僕の名前はヨウエイです。
あの、僕も探偵になりたいんです!」
俺の都合は関係なしに話を進める。
教育環境が良くなったのだろう。
「それは・・・大人になってからだな。
今の・・・ヨウエイ君は11歳か。
探偵は特例がない限り18歳以上からだ」
年齢についてはうろ覚えだから、
少し間が空いた。
まだ探偵って職業が出来てから10年程度。
そんな不安定で危険な職業に、
子供を巻き込むのはどうだろう?
「じゃあ、あの、・・・僕はこれで!」
彼が鎧を着る。
先程鎧を脱いだ時は顔が赤に近く、
ゆっくりと動いていた。
でも今は動きが早く、顔色も呼吸も安定してる。
この子は鎧に依存してる。
教育環境が悪く、鎧に依存している子供。
彼に探偵は向いていない。
俺はそう結論づけた。
「だが」
「え?」
少し迷ったが、彼に説教する必要がありそうだ。
咄嗟に声を出した。
「今の君じゃ無理だ」
少し厳しいかもしれない。
できるだけ柔らかく言おう。
「その鎧は特別みたいだが、
依存しているんじゃないか?
そんな子供に、探偵は無理だ」
言葉の内容は厳しいが、
ゆっくりと穏やかに言う。
だが彼は、無言で部屋を出てしまった。
夢を壊してしまったかもしれない。
だけど探偵だけを目指すなら、絶対に探偵になれない。
この世界での探偵とはそういうものだ。
いくつもの価値観を持たなければならないのだから。
ひとまず依頼主と話をしよう。
指名客を待たせるわけにも行かない。
「よっと」
痛む体に鞭を打って立ち上がる。
「依頼主は?」
「面会室だ。さっさと行ってこい」
「人使い荒すぎです」
銀次さんに聞くと、
下の階にある面会室で依頼主が待っているらしい。
1階の面会室に向かう。
『コンコンコンコン』
4回ドアを叩くと、中から「どうぞ」と声が聞こえる。
「あなたがケレンさんですか?」
面会室に入った瞬間、依頼主が席を立つ。
「ええ。探偵のケレンです。お掛けください」
依頼主は、背が高い男の人だ。
服が赤色で統一されている。
立ち居振る舞いに無駄な力が入っておらず、
音も殆ど立てない。
とても上品な人だ。
しかし、俺は彼に見覚えはない。
何故指名されたのだろう?
「本日は私に依頼を希望していると伺いました。
なぜ私なのでしょうか?」
正直、元称号持ちとは言え、今は探偵補佐だ。
その俺に依頼とは、どういう理由か気になる。
少なくとも、この人とは初対面だ。
「私は城にて、礼儀作法の講師を務めております、
オリガー・ルージェと申します。
先程城に帰ってきた男が、
ニュージェーの街には、
城の剣術講師より腕が立つ探偵が居たと騒いでいたのです。
名前は『ケレン』と。
そして噂を聞いた私は、
あなたに依頼をしようと思ったのです」
「成程」
深い意味はないらしい。
多分マルカスと一緒に俺を襲った、
兵士Aが広めた噂だろうだろう。
それで、俺に依頼をしたいと思ったのか。
「して、どんな依頼なのでしょうか?」
「私はとある男に、礼儀作法について纏めた本を貸したのです。
しかし、本を返して欲しいと彼の家を訪ねると、
そんな本は借りていないと言われたのです」
自分で書いた本を盗まれたということか?
「その後城に戻ると、その男が現れて、
『さらに複雑な作法を書いた本はないか』
と訪ねてきたんです」
「先程の話と矛盾しますね」
「ええ。先程男の家を訪ねたと言ったら、
急に怒り出して、家へと帰ったのです。
双子かとも思ったのですが、なんだか気味が悪いんです」
成程。
「あの本は、私の人生を文字にしたような物ですから、
なんとか取り戻したい。
だから、その男について、身元調査をしていただけませんか?」
「解りました。
その依頼、お受け致します」
「ありがとうございます」
体の傷はまだあるが、まあなんとかなるだろう。
時王に出てきた預言者さんの本、医者ゲーマーの小説版やん・・・。
「私は最強の力を手に入れた」
とか本に書いたら最強になれるね!
まあ多分限界あるんだろうけど。




