めちゃくちゃ大きい人
「やあ、下世界の者よ」
「おや、司祭さん。
まるで神のような大きさだ。大躍進だねぇ。
あたしの薬を使っちまったかい・・・この盗人が」
そこに立っていたのは、
身長が3m程ありそうなキリーグだ。
全身の筋肉が凄まじく発達している。
手にある棒がまるで、ドスのような大きさだ。
以前は服の下を鍛えているかはわからなかったが、
今はどんな服を着ていても鍛えていることがわかるだろう。
そもそもコイツに合った服など無いだろう。
まるでボディービルダーだ。
一体どんな薬を使えば、短時間であそこまで成長するんだ・・・?
「薬ってなんの話だ?」
「若返りの薬さね。
ステロイドやらテストステロンやらクレンブテロールやら、
体を強化できそうな物を全て使った薬さ。
魔術で薬の危険性を1000分の一にして、
効能を3倍にしたけどね。
それでも普通は耐えられないんだが・・・」
「うむ。かなりの苦しみであった。
しかし、体が燃えたぎるようなこの感覚。
正しく神になった表れよ」
「なんだそのドーピング祭り」
この状況で、俺は一つの仮説を思いつく。
「その薬を盗んだのがギャレスだったのか?」
「そうだ。私はギャレスに魔女の秘薬を探すよう言った。
魔女の秘薬を手に入れたギャレスは、
私にその秘薬を見せて『コーレルの正体は学者』だと嘘を言った。
だから奴を殺して、薬を奪い取ったことにしたのだ」
つまりギャレスは、魔女と司祭の両方から狙われたのか。
「だが我々が殺す前に、ギャレスの喉が爆発した。
あれは魔女であるお前の仕業か?」
「そうだったのかい。
そうさ。でも、もうちょっと笛を吹くのが早ければ、
お前さんに薬をやらずに済んだものを・・・。
あの薬はまだ臨床実験してなくてねぇ、できればどう飲んだのか聞きたいねぇ」
「ギャレスの血と共に飲み干した」
「血は材料に入れてなかったねぇ」
つまり、今回の事件で探偵は、
この二人の争いに巻き込まれたってことだ・・・。
そのことを理解した俺だが、
今度はリアちゃんを爆発させた理由が一番気になった。
「改めて聞く。なぜリアちゃんを殺した?」
「あの子かい?リアはねぇ、薬と毒をすり替えて、
この面倒な司祭サマに薬を渡さないよう言ってたのさ。
でも失敗したろ?だから、どこかで殺すつもりだったよ」
「そんな程度で?あの小さな子供を殺したってのか?」
コーレルは、俺が何を言っているのかわからないのか、
笑いながらこう言った。
「何言ってんだい?
あの子を育てたのはあたしだよ。
だったらいつ育てるのをやめるのか、
決めるのもあたしだろ?
それに、あの子が猪用の罠に引っかかってたのを助けたのはあたしさね。
今まで育てた人生も与えてやった。
それを殺したとしても、文句言われる筋合いはないね」
目が見えていないはずなのに、ニヤリと笑いながら俺の方を向く。
なんて自分勝手な・・・。
「下のものよ、その懺悔聞いたぞ」
キリーグが喋り出す。
「だが、お前たちは生まれたことが間違いだ。
年齢など関係ない。
だが私が、全てを断罪しよう。
断罪で消えれば、全てが済むのだろう」
「あたしゃ懺悔なんてしてないよ。
あんたらは命に変えてもここで殺すさ」
「・・・いい加減にしやがれ」
俺の感情が抑えられなくなる・・・。
子供を殺すのは自由だとか、
断罪で全てを消すだとか、
理解できない。
「お前らは人間失格だ・・・!今ここで潰す!」
「私は魔女だからねぇ。
お前も使えないようだし、神気取りの司祭諸共燃やしてやるよ」
「神に失格などない。
下のものは理解できぬようだが安心せよ。
主となった私が断罪する」
俺はまず、キリーグに向かって、歩み足で進む。
中段に槍を構えても、
穂先の高さはキリーグにとって太もも辺りだ。
上段に構えて、腹を突く。
「せぇい!」
本気の突きだ。
しかしキリーグは全く動かない。
「いぃ・・・!ってえ!」
右手に激痛が走る。
まるで、高速でこちらに向かう船を突いたかのような感覚だ。
手の皮が破けて、親指の付け根にある骨に痛みが走る。
「ふん」
「おやまぁ。
やっぱりこの探偵も使い物にならんか」
キリーグの大きな手が俺のうなじを掴む。
ゴリラのような握力だ。
先ほどコーレルが何か言ってたか、忘れてしまう程の痛み。
「!!!?」
声を上げる余裕もなく、民家の上を越えて吹き飛ぶ。
どうやら投げられたらしい。
そのまま村周りにある木の頭に突っ込んだ。
枝や葉っぱに体を切られながら、地面に落下する。
背中から落ちているため、
地面に手から着けるよう、腕を回す。
首も前に曲げて、頭を打たないようにする。
『ドスン』
息ができない。
肩が痛い。
肩こりのような鈍い痛みを感じる。
背中から落下したことで、
まるで地面が、俺を残して浮いている感覚を味わう。
教会前の様子が見える、
コーレルは隠れながらも笛を吹いているようだ。
しかし、キリーグにダメージはないようだ。
意に介さず、コーレルの方に向かって、攻撃をしている。
しかし全く違う方向に向かうキリーグ。
魔女らしく、なにか仕掛けをしているのだろう。
「ググ・・・」
ようやく息ができるようになった。
俺は何とか立ち上がる。
民家が燃え出すのが見える。
コーレルが発火させたようだ。
おかげで視界は確保できる。
俺は、どうやってキリーグに攻撃するか考えた。
槍は?
もはや効かない。
というか、俺の体重は50kgだ。
威力が足りない。
銃は?
落としてしまったようだ。
持ってないが、ギャレスの死体を物色すれば手には入るかもしれない。
もしあれば、目なども狙える。
刀は?
効いたとしても、牽制程度のダメージが関の山。
掌底をぶつけて振動を起こし、体内部を攻撃?
外が硬いし動かない。振動を起こせない・・・?
振動?
俺は昨年の夏、シャラに聞いた言葉を思い出した。
「夜に狼が遠吠えしたら、ヘアピンが割れちゃったの!
新しいの買って!」
「狼にでも言えよ」
あれは振動で割れたと言っていたな。
そして犬笛は、その振動・・・周波数だっけ?
周波数を増やすことができるらしい。
周波数が増えると、熱が起こって火薬が爆発する場合があると、
兵器開発をしているピューさんが言ってたな。
それから、コウモリは音波を使って地形を把握するとも聞いた。
『とある果物を食べた人だけ、おばあちゃんの魔法で爆発させたの』
とある果物とは、マスカットやブドウのことだろう。
水分が多ければ、分子を振動させて爆発が可能だったはずだ。
それに、レーダーとしても併用が可能ということだ。
笛を吹くだけで、レーダーが起動するのだ。
『はいはい。ケレンさんだね。今お一人かい。こんにちは』
俺が初めて会ったとき、『今お一人』とコーレルが言った。
シャラがいることを知っていたのも、レーダーの効果だろう。
そのことを考えて二人が戦ってる様子を見る。
やはり、コーレルは軽く笛を吹いて2秒すると移動しているな。
笛から出す音波で、障害物や敵の位置を把握するのだろう。
笛を鳴らすと、建物が燃えたり、
キリーグの周辺にあるものが壊れ出す。
今燃えているのは食料庫だ・・・
アルコールの入った酒で燃えるのだろうか?
俺はひとまずギャレスの死体を物色するため走り出した。
死体の場所に着いた俺はポケットや服の中を調べる。
すると脇の下にあるホルスターを見つけた。
よし!SAAと、予備弾薬が6発。
中の弾倉にも6発入っている。
元々ライフルと一体化されていたレンコン型の弾倉だが、
拳銃と一体化させることで携帯性を高めた。
素晴らしい技術だ。
そしてSAA。
ダブルアクション銃は威力が控えめであり、
竹などで攻撃を防がれたらしい。
だが、シングルアクションの銃があれば、
竹を貫通することもできる。
威力と貫通性がどちらも抜群なのだ。
俺は持っている銃の頼もしさを再確認しながら、教会の前へと向かった。
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教会の壁に背中を預けるコーレルが見えた。
笛の吹きすぎで、また息が上がっているのだろう。
燃えている民家の数も、いくつか増えているようだ。
村が、都会の夜とは比べ物にならないほど明るい。
キリーグは相変わらず傷一つない。
燃えている家をパンチ一発で吹き飛ばす。
もはや怪物だ。
信徒を集めて、火を消すように指示を出している。
俺はキリーグに向けて叫ぶ。
「まだ魔女を倒せていない神の出来損ない!
今始末してやる」
「・・・誰かと思えば、先ほど私に一瞬で投げられた下のものか。
また叩きのめしてくれる」
「その程度で負けるような鍛え方はしていない!」
そう言って俺は突っ込む。
信徒はまた、散り散りに逃げ出した。
1分で5人も倒されたのだ、
俺に向かっても被害が増えるだけだと解っているようだ。
「おりゃあ!」
また槍を突くが、今度は敢えて膝を狙った。
先ほどより固い部分を突いているため、右手が痛い。
『ガゴォォン!』
まるで鋼鉄を突いた様な音が鳴る。
だが膝は、骨が剥き出しになっているため、
骨折させやすい箇所でもある。
「効かぬな」
効果はない。
体力も全く減らないのか、息が少しも上がらない。
本当に、なんて化物だ。
それに加えて、俺の身長が160cm程度で、こいつは3m強だ。
改めて間近にいると、圧倒される・・・。
キリーグが俺に、棒を振り下ろす。
冠受けの要領で、槍を頭の上に置き、攻撃を防ぐ。
槍と棒がぶつかった瞬間、掌底や手首に痛みが走る。
次いで、肘が勝手に曲がる。
体制が崩れた俺は、その場に崩れ落ちた。
槍と棒が壊れて、破片が腕に突き刺さる。
俺の手には折れてしまった槍が握られていたが、
マロホシが付いた槍の先は遠くまで吹き飛んだ。
キリーグの両手が、俺の両肩を掴む。
そのまま奴の眼前まで持ち上げられた。
「お前ももう終わりだ。
私の力があれば、国と戦争だってできる。
全世界に、神となった私の姿を見せるのだ」
今回は、なんちゃって科学も使っています。
本来、音波と電磁波の発熱原理は違います。
コーレルが使っている笛は、
音波を電磁波に変換する装置の設定です。
魔道具なら可能かなぁ、どうかなぁ?
ともかく、コーレルの喉には音波を発生させる笛が仕組まれており、
その反発した波動を察知して、人の位置なんかが分かるって設定です。
つまり、ケレンの解釈は間違いってことです。
ケレンが最初に調べた家には今、馬の死体が置かれている設定です。
食料庫だったので、馬肉を食べるつもりなんでしょうね。
笛を使って建物が燃えたのは、
馬の死体にあるメタンガスが爆発したことによる火事です。
まあ、科学に精通した探偵なんて、
フィリップ(KRのW)くらいでしょ。
そして今日の時王に出てきた野獣魔法使い!
福井のばあちゃん見送る時と動き変わってなくて草。
しかも同時間にやってる別番組でも、
魔法使いが指輪関連の話しててMAX大草原。
話の内容は草枯れたけど。




