多人数との戦い
俺は目を覚ましたが、体中に痛みが走る。
しばらく眠っていたのか・・・。
現状を確認する。
探偵用のコートは焦げて使い物にならず、
革製の防具も殆ど焦げている。
銃の火薬が爆発していたようだ。
槍は、少し離れた場所に落ちている。
拾って確認するが、どこも傷はついていない。
次に、俺の怪我を確認する。
そこそこ膨らんでいる大胸筋や、
6つに割れた腹筋は擦り傷だらけだった。
主に上半身が被害を受けている。
だが幸いにも、歩行に問題はない。
それに、大きな怪我も無い。
少し動きにくいだけだ。
次にリュックを確認する。
M1847を確認した。
・・・おかしい、こちらの火薬は爆発していない。
6発全部撃てる状態だ。
俺は、リュックに入ったカッターシャツを出して着る。
シワだらけになっているが、先程までの上裸よりはましだろう。
それから、薄いグローブを取り出して手にはめた。
すると、村から何か聞こえる。
「さっきの爆発はなんだ!?」
「文矢だ!デリスさんからの文矢だ!あの探偵どもにバレたぞ!」
「司祭様が、本日神になる準備をされた!皆の者、教会に入れ!」
まずいな。
住民たちが忙しなく動いている。
このまま動けば存在を気取られてしまう。
ひとまず身を隠そう。
そう考えて、物陰まで移動しようと動いたとき、
俺の眼前からコーレルさんがやってきた。
「あんた、しぶといねぇ」
「俺のことより、リアちゃんはどうした!?」
「あの子は私の武器さね。
とはいえ、あの子を教会で爆発させる計画も台無しになったねぇ。
あの男と言い、使えない奴らだこと」
あの男?
まさかギャレスか?
なんとなくそう思って、一応聞いてみる。
「その男って、ギャレスのことか?」
「・・・そうだよ。
あの探偵が私の調査報告で司祭と話をするときに、
教会ごと吹き飛んでもらうつもりだったんだよ。
でも、無くすと困る物を盗まれてねぇ。
せめて口封じにと消したのさ。遅かったけど」
つまり、ギャレスを殺したのはコーレルだったということか。
「そういうわけで、お前さんには教会に特攻してほしいのさ」
「あんた・・・何言ってんだ?
たった一人の人間に、100人以上の信徒がいる教会に攻め入ろと?」
「そう言ってんだけどね?もし嫌なら、あんたの体も爆発させるよ?」
リアちゃんを、俺に脅しをかけるためだけの駒にもするのか?
なんて糞ババアだ・・・。
コーレルの足元に、リアちゃんの腕を見つけた。
体は?吹き飛んだというのか?
辺りには見当たらない。
俺は、怒りを我慢して、コーレルに話す。
「あんたが、ニュージェーの街を決起させようとしたのか」
「そうさ。でも私だけじゃない。
イグリス国のニュージェー街とこのジャムムル村、
それに国の南端にあるスレイン街が同時に決起して、独立戦争を起こすのさ。
私と同じ魔女が動いてね。予定では明日だった。
だけど、本当に・・・。
探偵のせいで予定が崩れに崩れたのさ」
「巫山戯るな・・・お前はここで止める!」
コーレルがまた笛を吹いた。
俺の槍が熱を帯び始めた。
俺の槍は『真鍮』に『ウルツァイト窒化ホウ素』を混ぜて作られている。
詳しい製法は知らないが、所謂オリハルコンだ。
元が銅なので、熱が伝わってしまうのだろう。
グローブ越しにも熱い・・・。
槍を持ちきれないため分解して、刀を取り出す。
グローブが槍の熱で焦げた。
もはや使い物にならないため、リュックに入れる。
そのリュックも邪魔になるため、地面に置いた。
それを見たコーレルが、少し強めに笛を吹いた。
今度は頭が痛くなって、地面に倒てしまう。
それに何故か、体が熱い・・・燃えそうだ・・・。
銃が1発暴発する。
弾が民家に当たって、壁に小さな穴を開ける。
俺はそれを、朦朧とする意識の中で見ていた。
だが、不意に意識が戻ってきた。
「ほんとうに、しぶ、といね、おまえさん」
コーレルの息が上がっている。
笛を吹くこともままならないようだ。
相手の攻撃手段が未知数だ・・・今は逃げるしかない!
俺はそう判断した。
武器を拾って逃げようとする。
槍は既に冷えていた。
しかし、今度は信徒に見つかる。
「探偵だ!殺せぇ!」
武器を組み立てながら逃げる。
必死になって、大きな建物に入る。
辿り着いたのが教会の中だということに、俺は入ってから気づいた。
「これは、死ぬ覚悟をするべきだろうな」
ドアに背中を預けながら、少しだけ考える。
『このまま、軍が来るまで逃げ隠れるべきか?』
そんな甘い考えが浮かぶ。
・・・弱気になっている。
俺は深呼吸して、
かつての道場で門下生に行っていたことを思い出す。
「人間が生き抜くために必要なのは心技体だ。
しかし、この3つを支えているのは気力だ。
『やる気だけじゃどうにもならない』
とはその通りだが、やる気がないと何もできないのだ。
気力を出して、心技体を磨け!」
そう。
俺がやるべきは、足止め。
ここで、信徒たちや魔女を足止めしなければ、
明日この国で独立戦争が起こる。
目の前に無数の信徒が現れる。
聖堂からどんどん出ているのだ。
逃げたり行動方針を考える暇が無いことを悟った。
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一番生き残る可能性が高いのは、まず外に出ること。
教会の入口では、壁などが狭く、槍を存分に振るえない。
それにコーレルは
『教会に特攻しろ』
と言った。
あの魔女は、俺と信徒の戦いを、遠くから観戦するだろう。
俺はドアを蹴る。
ドアを開けようとしていた信徒が転がる。
飛んだ信徒が立ち直る前に、教会の前まで移動した俺は槍を下段に構えた。
一番体力の消耗が少ない構えだ。
ドアから出てきた信徒が俺を囲もうとする。
その前に一人を突く。
足を狙った突きは、うまく脛に直撃した。
悶絶した男は、足を抱えたまま蹲った。
槍を含めた殆どの武術はボクシングと同じように、
打ってすぐ戻すことが基本だ。
俺は一瞬で槍を、ドアに向かって下段に構える。
左から俺を囲もうとする信徒の、顔目掛けて突きを放つ。
そいつは横に少しずれて、穂先を避けられた。
反応の早い男だが、この槍には鎌が付いている。
俺は槍を付きながら、右足を下げる。
すると槍の先も横にずれて、
男の喉に鎌部分が当たり、地面に倒れて咳き込んだ。
次に、元々外にいた男が、後ろから俺を暗殺しようとしている。
だがあまり経験がないのだろう。
息を消せていない。
右手を引いて、左手を下に落とす事で、石突を顎に当てる。
すぐさま、槍を中段に構える。
そのまま肘を引くと、また顎に当たり、後ろの男は倒れた。
一歩も動かずかなり早く4人も倒したが、このままだと囲まれる。
「えい!」
俺は左回りで後ろを振り向いて、また一人の足を突いた。
おっと、武道場で出してた掛け声が出てしまった。
さっきの爆発ダメージで、体力が少なくなったのかもしれないな。
だが、そんな泣き言を言ってる暇はない。
おまけで更に一人倒した。
この間1分程度。
仮に相手が100人だとして、残り95人・・・
1分で5人も倒せた達成感と、疲労を同時に味わう。
槍の先から火を出したり、風を出せればどんなに楽だろうか・・・。
また、少し弱気になってしまう。
そんな魔法は必要ない。
折角鍛えた槍術が無駄になる。
とはいえ、先は長い・・・。
今度は、以前俺を襲った槍使いが出てきた。
「ハハ・・・」
笑える・・・なぜなら俺と全く同じ構えだったからだ。
そういえば以前は無駄に槍を振り回してたな。
人の真似をするのが能の男か。
そもそも人の真似をするのは、自分より強い人間になりたいからだ。
しかし、人の真似をするだけでは、余計に弱くなる。
人の真似をすることは、真似される人間の気持ちを考えない、
思いやりのない行為だ。
本当に強くなりたいなら、
その人に教えを請うか、自分らしくその人を『再現』する事だ。
そうしないと、表面を真似するだけの薄い人間になってしまう。
槍男の構える素槍が、鎌槍の先部分に乗せられた。
「くらええぇい!」
槍を俺の頭に向けて突いてきた。
障害物がないため、俺の頭に直接来る攻撃だ。
・・・掛け声まで俺に似せてるのか?
さっき出てしまった、俺の掛け声にちょっと近い。
気迫だけは、まだマシになったな。
俺が相手からして真横に向いて、顔は正面である相手側を向いているから、
左側頭部に来る突きだ。
俺は右手を、左に180度回転させながら、
頭の少し上辺りに動かした。
左手は槍の動きに合わせて、穂先を俺の目と同じ高さにする。
兜の弱点である、側頭部を守る構えであり、所謂『冠受』という技だ。
そこから、右手を思いっきり右回転させながら、元の中断構えに戻す。
今度は『巻落とし』と呼ばれる技であり、相手の穂先を地べたに落とす。
俺が今回注意すべきは『穂先を地面に落とさない事』と考えたが、
それは槍を使う全員が共通すべき弱点だ。
槍で地面ごとひっくり返す技もある。
有名な技は『畳返し』や『砂掛け』だ。
しかし、地面に刺さった武器を引っ張っても、
そう簡単に抜けないと言う事は想像するに難くないと思う。
石突あたりを持つ構えは、特に抜き辛い。
地面に刺されば、持ち上げるのは一苦労なのだ。
今の彼みたいに。
「お前も出直せ」
「いッ・・・ガアアアアアァァ!?」
それだけ言って、この男の手首も思いっきり突く。
1秒たっても、槍が一切持ち上がっていないからだ。
平均よりは鍛えているだろうが、敵であるからには情けをかけない。
槍を扱う同士が増えたとしても敵である以上倒す。
できなければ俺が死ぬ。
それが武道を行く者であり、俺が目指す探偵だ。
手首の骨が折れたのだろう。
彼は地面にのたうち回る。
「それじゃあな!」
俺は踵を返して後ろ向きに逃げようとした。
すると、頭痛や体が燃えるような感覚が俺の足を止める。
後ろを見ると、ドアから少しずつ溢れ出ていた男たちが頭を抱えだした。
「あのばあさん・・・」
そこには笛を吹くコーレルがいた。
俺を見て『さっさと戦いな』と考えているような視線を向けてくる。
冗談じゃない。リアちゃんを爆殺した奴に、誰が従うか。
俺は『年下は全て守るべき存在』だと思っている。
前回の事件で、騎士を怪我させず返り討ちしたのも、
年下を大事に思うからこそだ。
コーレルを無視してでも一時退却しようとするが、
教会から聞こえる轟音によって再び足を止めた。
『ボオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォゥン!!!』
教会を見ると、ドアが吹き飛んば音だ・・・。
それにしては派手すぎる。
まるで爆発音だ。
信徒があちこちに逃げ出した。
立ち込める煙の中から、
人間とは思えないほど巨大な男が歩いてくる。
彼は恐らくキリーグ。
この教会の司祭だ。
今日の時王も良かった・・・。首が折れる音がならなくて良かった・・・。
流星って隕石じゃなくて、地下の塾だったかぁ!そっちかぁ!
いやあ、宇宙学生が王を巡る話だったとは驚きですねぇ・・・(6.5話)。
あれ?大して間違ってない気がする・・・。
あと「ブリーチって銃身のケツのことでしょっ」て言ったら友達に怒られたことあるんですよね。
理由はアニメかぁ・・・そっかぁ・・・。
次回は指輪の魔法使い(野獣考古学者マヨネーズ盛り)が出るのかぁ・・・楽しみだなぁ。




