闘士の休憩
キリーグはここで倒したかった。
次はさらに手ごわくなるだろう。
「とにかく移動しないとな」
今は、教会の横にある、空き地か。
ここからどうする・・・?
この村に残るべきか考える。
ニュージェー街に向かうか、この街で隠れる場所を探すか・・・。
そんな俺に、近づく人間がいた。
砂を踏む足音だ。
「誰だ!」
「ケレンさん。行くとこないなら家に来んかい?」
そこにいたのは、魔女コーレルと、リアちゃんだった。
「どうするか・・・」
俺は、2歩横にずれながら考える。
あきらかに怪しい。
だいたい、このタイミングでこの場所にいるということが不気味だ。
なぜ、俺が一人になるまで待っていたのか・・・?
「教会の人たち嫌いだから、うちに来てもいいよ?」
リアちゃんがこう言っている。
しかし、俺はシャラと合流する必要もあるから悩む。
「あんたの相棒が心配かい?あの子はうちに来るよ。賢い子なんだろ?」
コーレルがこう言う。
確かに、シャラならばコーレルの家を尋ねるだろう。
俺がそこにいなければ、村の外に出ていると考えるから。
「・・・分かった。あんたについていこう」
俺はこの時、別のことも考えていた。
やはり、目が見えないはずのコーレルの顔が、
俺のいる位置を正確に捉えていたことについて・・・。
横にずれても俺の顔を見られるのは不気味でしかなかった。
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魔女と呼ばれる、コーレルの家に招かれた俺は
コーレル達と、コーレルの住む家に向かった。
家に上がるとやはり、とてつもない異臭を感じる。
この家に入る瞬間を教会の信徒達に見られているが、
誰も攻め入らない。
改めて、この魔女に畏怖の感情を抱く。
俺は、魔女や幽霊などのオカルト話は信じない。
だが、この魔女には何かがある。
今回の事件、俺の価値観は必要ないのだ。
「ほれ、腹減っとるだろ?あたしが森で育てた野菜じゃ」
俺の前に出されたのは温野菜だ。
かぼちゃ、栗、にんじん、さつまいも、カブ。
カブは主に冬だが、全て秋に採れる野菜で作られている。
「あそこの飯はたたられとる言うて、この村の人間は近づかん」
これらの野菜畑に人が近づかない理由か・・・。
「それは何故ですか?」
「あたしの呪いがかかるんだとさ。
昔、あたしの野菜を勝手に盗む奴が村におってね、
脅すためにしびれ薬を塗ったのさ」
「それを、盗人が食べて呪われたと言われたのですね」
「でも本当にすごいのはそのあとよ」
リアちゃんが話に入る。
「何がすごいんだ?」
「とある果物を食べた人だけ、おばあちゃんの魔法で爆発させたの」
「爆発!?」
爆発させるってことは火薬を使ったのだろう。
果物に火薬でも仕込んだのか?
黒色火薬は一度吸うとまた吸いたくなると聞くが・・・。
「どれだけすごい爆発だったんだ?」
「大した爆発じゃないよ。ま、そいつは死んだけどね。
そんなことはいいから、さっさと飯を食べな」
「あぁ・・・頂きます」
温野菜は、適度な塩味でホクホクした食感がたまらなくうまい。
「それと麦がゆもある。
ここにな、鶏がらのスープをかけて、温野菜を入れてみな」
「はい」
「お塩お塩」
「リアは最初からこれだねぇ」
リアちゃんが塩を足してくれた。
塩は体にむくみが出やすくなるらしいが、
最近摂ってなかったからありがたい。
一口食べる。
これはなかなかうまい。
「かなりうまいですね。冬に食べたい」
「そうかい、そりゃよかった。
レシピはさっき言ったので全部だから、自分で作るのもええじゃろうて」
しばらく麦雑炊を食べていると、ドアを叩く音がする。
「あんたの相棒じゃろうな。迎えに行ってやりな。部屋は空いとるけん」
「わかりました。ありがとうございます」
ドアまで向かって、小さな声を出す。
普通の人間では聞き取れない声量だ。
「シャラ?」
「あれ?ケレン?ソウダヨー」
「声でかい」
ドアを開けると、シャラが立っていた。
「ってうわ!くさいけど美味しそう!でもくさいの無理!」
「我慢しろ」
ヤダヤダーと騒ぐシャラを家に入れる。
外ではやはり信徒が数人いるが、襲ってくる気配はない。
「この家に近づくと全然追われないんだよね。不思議。臭い」
「今ちょうど飯食わしてもらってるんだ。お前も食べたいか?」
「食べたぃ・・・ゲテモノ?」
「麦がゆの雑炊だ」
コーレルとリアに挨拶をするシャラは、
早速ご飯が食べたいと言いだした。
緊張感のないやつだ。
食事を終えた俺とシャラは、
調査結果の相互報告をしようとしたが、デザートが出された。
「ほら、ぶどうとマスカット、柿にいちごだよ」
「わーい!ありがとうございます!」
「あのな?ちょっとは警戒するべきだと思う・・・」
そう言うと、シャラはフルーツの香りを嗅いだ。
「うん。大丈夫!
フルーツの香りって、何か邪魔があると色が変わるからね!」
これもシャラの特技だ。
花の香りやフルーツ、紅茶の香りを
『色』で判断することができる。
俺にはよくわからんが、
感覚が特に鋭い人間にだからこそできる特技なのだ。
「匂いを色で判断するのかい?
変わった子だねぇ・・・リアはできるかい?」
「で、できるよそれくらい!
私だって、よーく匂いを嗅げば・・・これ!紫!」
シャラがにこやかな表情でリアちゃんを見る。
「そうだねー。リアちゃんはぶどうの匂いを嗅いだんだねー」
「ふふん!私だってこのくらいできるもん!」
シャラとリアちゃんが早速仲良くなっている。
誰が相手でも警戒されない。
それもシャラの特技かもしれないな・・・
だが、俺はそんな和やかな空気を他所に、
シャラに小さい声で尋ねる。
フルーツの香りが何色か知りたい。
「で、何色だった?」
「土みたいな茶色だったよ。混じりっけなし」
シャラが土色と言う事は、毒はないってことだな。
「なら食べるか」
「うん。そうしよう!」
そう言って俺達は、果物も平らげた。
かなりジューシーな果物だからといって、
おかわりを要求するシャラは少し遠慮すべきだと思う。
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食後しばらくしてから、トレーニングをする。
食べたものをすぐにパワーへ変換するような気持ちだ。
まあ、効果はほとんどないかもしれないが、
気休めにはなる。
階段で懸垂げできるため、コーレルの許可を取って、懸垂を行う。
まずは両手で20回。
次に上体起こしだが、足も伸ばして仰向けになる。
そして体と足を同時に上げて、手と膝を付ける。
最後にゆっくりと仰向けに戻る行為を300回。
上記を5セット行い、1セット毎クールダウン2分。
5セットで100分程度のトレーニングだ。
5セット完了後は、片手懸垂を右腕3回、左腕2回。
トレーニングに2時間近く費やした。
セットに分けると、効果が出にくくなるが、精神を鍛えられる。
それに結局一定以上の効果は出るため、
このトレーニングは2日に1度は行っている。
トレーニングを終えると、そろそろ寝る時間になっていた。
するとリアちゃんと風呂に入っていたシャラが
部屋に向かっているのが見えた。
シャラに声をかけた俺は、少し風呂に入ってから、
お互いの調査結果を報告することにした。
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少しだけ汗を流して、シャラの部屋に入る。
部屋に入るとシャラの持っている銃が、
自前のコルトM1847、
通称『ウォーカー』になっていることに気づく。
俺達に支給された、通称『ドラグーン』と呼ばれる
M1848の前年モデルだ。
使用する火薬量が多いウォーカーは、
シリンダーに破損が起こる場合が多い。
それを改良して、火薬料を少なくした銃がドラグーンだ。
「なんでM1847なんだよ・・・」
「そんな名前言われても知らない。
こっちが使い慣れてるもん。
でもちょっと調子悪いの。
不発が時々起こっちゃう。だから・・・直して!」
「お前なぁ・・・」
「お願いケレン。ちゃんと話聞くからぁ」
わざとらしいお願いだな!
まあ、銃が無いと困るかもしれないから、
分解しながら話しをしよう。
次回は日曜に予約投稿しますが・・・
時王観れるかなぁ?
・・・用事がぁ!




