戦っても怪我がなければそれで良し
まだ夕方だが、教会の中には殆ど光が入ってこない。
悪趣味な薄暗さがある。
そんな教会に入った俺は、おぞましい歌を聞いた。
歌詞がグロい・・・
こんな歌だ
『神に捧げる血肉の用意~
まずは鉈で頭皮を剥ぎ取り~
次に斧で耳をそぎ~
次はスプーンで目をとって~
棒で頭も割りましょう~
包丁があれば鼻も取り~
鎌で首を切り取って~
体は全部捧げます~
フォークとナイフで切り分けて~
彼を育てた神に感謝し
頭も全て捧げます~』
その歌を何度も何度も歌う。
気が狂っていると言わざるを得ない。
もし、奴らに捕まれば・・・。
そんな嫌な考えをしながら俺は地下に降りるルートを探す。
歌が4回終わる頃に、地下へと続く階段を見つけた。
今までより暗い。
気分を明るくしようと、心の中で歌を歌う。
歌いながらその場に止まって、周りの音を確認する。
誰もいないと思う。
少し目を慣らしてから、俺は地下に降りた。
この時、俺の歌以外何も聞こえない事を不可解に感じながら・・・
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暗い地下を探索する。
月夜のない夜よりはまだ明るいが、
建物自体が不気味なため、恐怖心を駆り立てられる。
まるで下水道に居るドブネズミの気分だ。
ジメジメした空気が充満していて、
自分がドブネズミになったような想像をしてしまった。
5分ほど歩き回ってようやく、ゴミ捨て場を見つけた。
地下の一番奥にある部屋がゴミ捨て場のようだ。
ゴミ捨て場のドアを開き、俺は死体を探す。
すると、おそらく男と思われる人間の頭が見つかった。
そして、頭の横に紙が置いてある・・・
シャラからか。
『この教会嫌い!』
まず最初の一文がこれだ。
同意見。
下に文章が続いている。
『この頭はギャレスで間違いないよ。顎の傷が目印』
そうか、この頭がギャレスか。
確かに、あの歌と同じような殺され方をしたのだろう。
耳や目など、顔のパーツは殆ど取られている。
だが、所々に焦げ跡があるな。
長く見ていると気分が悪くなる・・・。
俺は改めて手紙を見ると、裏に何か書かれていることに気づく。
・・・!?これは
『お前が供物になれるか?』
血文字で書いてある・・・。
後ろを振り向くと
「助祭様の判決だ」
「供物になるかは、神に血を捧げ、血の涙を流すか否かで判断します」
助祭と呼ばれた男の姿があった。
隣には神の像を持っている信徒がいる。
全員、殺気立った目で俺を見ている。
もはや邪教徒だ。
後ろには大勢の信徒が、剣や槍を持っている。
その中の一人が、血の入った樽を傾け、神の像に血をかけた。
ゆっくりとした動作が、気味悪くさせてくれる。
正直付き合っていられない・・・。
俺は槍を組み立てながらその様子を見る。
「見よ!神が涙を流しておる!こやつを供物にせよ!」
血涙流すのが前提だろ!
と心の中で文句を言う。
涙を流さなかったらどんな対応するんだろう?
大量の信徒が俺に襲い掛かる。
しかし、大半はドアより内側に入っていない。
「せい!」
鎌槍を思いっきり突き出した。
「ぎゃ!」
打たれた者は1t強の衝撃を感じる突きが当たり、信徒の一人が吹き飛んだ。
倒れながら、槍が当たった肩を押さえつけている。
「だっせい!」
助祭も槍で突く。
腹筋に命中し、吹き飛んだ。
これなら死ぬことはないだろう。
壁にぶつかって倒れた助祭。
いいことを思いついた。
俺は銃を取り出して、ハンマーを下ろす。
「動くな」
倒れている助祭に銃を突きつけて人質にとった。
「ここから出してもらおう。
全員、隣の部屋に入れ。さもなくば助祭を殺す」
「死ね!」
助祭を人質にとっても、信徒はこちらに向かってくる。
失敗か。
攻撃を避けながら尋ねる。
「助祭が死んでも構わないのか?」
「助祭様が神になるだけだ」
面倒な。
こうなったら仕方がない。
助祭の頭に向かって発砲した。
『パァォン!』
「グェ!」
とは言っても掠らせただけだ。
ここで殺してもメリットがないからな。
助祭が頭から血を流している光景が見える。
このあとはどうするか・・・
そうだ!ゴミ捨て場ってことは、
外からゴミを落とす通路もあるはず。
そう思って上を見ると・・・見つけた。
かすかに光が漏れている。
俺は2発信徒に向けて発砲してから、
槍で体を支えて壁を走る。
棒高跳びのように、槍を石突で立てるのだ。
「おりゃあああ!」
っと掛け声を出しながら、天井の隙間に入り込んだ。
隙間に入ると、天井部分に足をかけて、落ないように体を固定した。
槍を、マロホシの鎖で回収して、隙間をすこし登る。
登るために長い槍を分解ししながら、
先程までいたゴミ置き場を少し見わたす。
信徒の数は30人と少しって感じか。
それ以外にめぼしい情報は無いな。
そう考えて、再び外に向かった。
30秒ほど登って外に出た。
しかし、不思議なほど追撃がない。
何故だ?
このまま走り続ける。
よし、馬小屋の前に出た。
すると、例の司祭。
キリーグが待ち構えていた。
「あなたの使う武器は罰当たりです。即刻捨てなさい」
「嫉妬か?」
そう言って、鎌槍を組み立てようとする。
しかし
「させません」
十字架が先に付いた棒を出した。
つまり、鎌槍と全く同じ形だ。
だが奴の十字棒より、俺の鎌槍が長い。
「いいや、させてもらう」
そう言って、変身妨害された特撮主人公のように、
避けながら槍を組み立てる。
太ももを突いてくる一撃を左に少しずれて、
脛で上から押さえつける。
すると、棒を巻かれた。
俺も棒と一緒に回ってしまい、バランスを崩して左に2歩戻る。
かなり強いな。
彼らは日華の僧兵と似ているようだ。
強い司教は、なかなか手ごわい。
キリーグは棒の扱いが得意だ。
素早い攻撃と、一瞬の判断。
実戦経験が豊富なのだろう。
だが、槍の組み立てはほぼ完了しており、
最後のマロホシも今取り付けた。
わざわざ槍を組み立てることは、危険があったが成功した。
相手の武器はリーチが長く、
武器の性質上相手を間合い以上に詰めさせないようにする。
だがキリーグの持つ十字架型の棒は、
至近距離で殴る武器にしても優秀だ。
肩を軸に縦回転させると、棒の反対にある先端で俺を突けるからだ。
銃で撃つ事もできるが、
銃口を塞ぐ様に構えられれば、当てる事はできなくなる。
つまり、鎌槍以外の手持ち武器は、すべて相性が悪いのだ。
俺は槍を中段に構えて、少し近づく。
キリーグは俺に棒を向けているが、槍と同じ高さに合わせてきた。
狙い通りだ。
相手の棒先付近に、槍の鎌を乗せる。
「何のつもりですかな?」
「悪いね。
でもこう構えれば、殆どの攻撃を防げる」
鎌槍を使う流派では、
相手が使う槍の穂先から10cm程度奥に鎌を乗せて
稽古をする。
こうするだけで、どんな攻撃にも対応可能なのだ。
まあ、実戦では相手の槍に鎌を載せる暇は無い。
1体1の戦いだからできる戦法だ。
「死になさい」
キリーグが棒を突いてきた。
・・・逃げずに俺の間合いで戦うか。
先程素手である俺に棒を使っていたから、
負い目でもあるのだろう。
棒の扱いはかなり早いため、基本的に武人なのだとわかる。
ま、腐っても司祭ってことだ。
顔を狙った突きが来た。
棒の先が、目と同程度の高さまで上がった瞬間に、両手を引く。
次に、棒の先が地面近くまで落ちた瞬間、
鎌部分で相手の棒を地面に押さえつけた。
所謂『引き落とし』に似た技だ。
「ふん!」
「ぬ!?」
槍をキリーグの胸に突き出す。
しかし、それを片手で掴まれた。
見れば、棒は既に捨てられている。
十字架を捨てるとは・・・思い切った司祭だ。
「離せ!」
手を離させようと槍を引くが、離してはくれない。
すると、キリーグは棒を捨てて銃を取り出した。
銃身が縦に二つある。
銃身回転式の銃か。
『ボォウン!』
近くでないとわからない、2種類の発砲音が、俺の耳を痛める。
しゃがみながら後ろに一歩下がる。
弾はギリギリ頭上を通り過ぎた。
こういう銃の弾は、俺も使っていたようにもはや球だ。
大きく避けなければ、確実に躱せない。
2発目を撃たれる前に、
槍を捨ててキリーグに詰め寄った俺は、銃を殴り飛ばす。
キリーグも槍を離した。
互いとの距離が1mと少し程に縮まっているからだ。
次に俺は、相手と自分の体格を比べる。
先程までは俺も相手も腰を落としていたため、
正確な体格差を測りきれなかったのだ。
・・・俺の顔がキリーグの胸あたりの位置か、仕方ない。
「フッ!!」
キリーグの右肩と左の脇腹を一瞬で2発殴る。
左ジャブと右フックだ。
槍や刀を使う時と、足運びは異なるため、
3発目以降は止める。
2発決めた俺は、すぐ後ろ向きに半歩下がった。
キリーグのパンチが来る。
と思ったら、そこまで大したことはなかった。
キリーグは格闘が苦手なのだろう。
大振りに拳を振るう。
拳を引く癖があるため、とても分かりやすい。
頭もぶれているな。
まあ、素人は引いて打つパンチをしないと拳や手首を怪我する。
ある意味正しいパンチだ。
故にボクサーは、何千何万回と練習することで、
ようやく一種類のパンチを完成させるのだ。
その後もしばらくキリーグのパンチを避けていたが、
キリーグが鈍重すぎるため、
パンチを避けず普通に歩いて背中に回れる。
演技である可能性も考えられたが、
棒を使った時と足捌きが同じで、
体がついてきていない。
演技ではないだろう。
しばらくそうやっていると、
キリーグは汗を出しながら息を継ぎ始めた。
今だ。
俺はキリーグと一気に距離を詰め、顎を右拳でフックする。
「ゥシュ!!」
『バチン!』
と小気味のいい音を立てる。
すぐにしゃがむと、
やはり頭上をキリーグの両手が通過した。
ここまで消耗すると、攻撃的な人間は掴みにかかるのだ。
俺は左膝に力を込めて、全力の左アッパーをキリーグの顎に放つ。
体で左拳を打ち上げるのだ。
が、肩を押さえつけられる。
『パアァン!』
威力が半減された俺のパンチは、
止めの一撃とはならない。
すかさず踵を返したキリーグは、
フラフラしながら教会に逃げて行った。
「逃がしたか・・・」
教会の中にはまだまだ人がいる。
それ以上追えば自殺行為のため、
俺はキリーグを見逃した。
俺も武器を回収して、今後の方針を考えよう。
今日の時王も良かった・・・。
本人の技と違うって演出も良いですねぇ。
永遠の夢は終わって欲しくないっす!!
あ、本編で主人公が槍を回収するとき、
分解する描写を忘れたので修正致しました~。
次回は携帯狼と宇宙学生か・・・。
スマホで狼も良いけど、携帯で狼も捨てがたい・・・。




