。(「これでエンドマークだぁ」ってやつ)
以上が今回の事件報告書だ。
俺にとっては、少し危険がある程度の事件だったが、
案外スケールはでかい事件だったな。
俺はポケットに入れている日記を取り出す。
銀次さんやデリューが、初めて妻と会ったことを、
唐突に思い出したくなったのだ。
日記のページをめくると、10年以上前の俺が、
文字の中で生きているように感じる。
------------------------------------------------------
俺は7年前まで、日華で道場の副師範をやっていた。
妻はその道場一の剣豪だった。
侍家系に生まれたあいつは、
俺と寺子屋が同じ幼馴染で、
気も合ったためか所帯を設けた。
とある日、俺たちの住む村に事件が起こった。
辻斬りだ。
犯人は、道場で3番手の男だった。
妻の腕前に嫉妬したせいで、
辻斬りをして腕を上げたかったそうだ。
俺も妻も、21歳になったばかりの時だな。
その事件は、
当時旅探偵をしていたシャラの父親であるデリューと、
彼の相棒である銀次さんによって解決された。
探偵二人が辻斬りに挑み、難なく犯人を取り押さえた。
俺の妻は、刀で戦う銀次さんの手腕を見てこう言った。
「あなた、刀の振りがなってないわ!」
と。
ここ3年で、ようやく一般に認知された探偵だが、
当時はまだまだ無名だった。
とはいえ、異国の探偵にケチをつけたのである。
そのケチを止めに入ろうとした俺は、妻に蹴っ飛ばされたなぁ。
「ほう。若造の割にしっかりした奴だ。
なれば、それがしと斬りおうてもらおう」
そう答えた銀次さんだったが、妻は凄腕の侍で、
男なら出世間違いなしの腕前だ。
実際、俺も道場の剣術では目録の腕前だったが、
妻に勝てたことは一度もない。
時速60キロ以上で振るわれる刀のぶつかり合い。
睨み合ってから、一瞬の攻防を繰り返す。
ボクサーの拳速が、平均およそ40キロと言えば、
その凄さが伝わるだろう。
結果、妻は銀次さんにも勝ったのだった。
剣の背や刃、腹まで使う戦いだった。
その後デリューにスカウトされた俺たちは、
探偵事務所の剣術顧問になった。
同時に俺たちも、探偵としての技術や心構えも学んで、
依頼もこなしていた。
2年前のある日、俺と妻がとある村を訪れて、依頼を完遂した。
とある女から受けた、浮気調査だった。
依頼自体は、調査対象が俺の妻にまで手を出そうとしたため、
簡単に証拠を掴んだ。
しかし、悲しみと嫉妬が入り混じった女は、
俺の妻を殺してしまった。
あいつは殺されるとき、一切の抵抗をしなかったそうだ。
あいつの死後、俺は生きる気力まで失った。
妻が死んで何もやる気が起きなかったのだ。
だが、俺は『探偵を辞める気力』すらなく、
事務仕事だけだが探偵を続けていた。
俺が探偵を続けていた理由は「なんとなく」
だったかもしれないし「責任感」
だったかもしれない。
自分にもよくわからないのだ。
そんな無気力の俺にデリューから、
娘であるシャラを世話するようにと頼まれた。
彼女は明るく、無気力だった俺にとっては
とても暖かい存在だった。
デリューが何故、俺にシャラの世話係をさせたのかはわからないが、
もしかすると、探偵になるよう彼女を誘った結末に後悔・・・
いや、後悔しないでほしいという願いを込めて、
シャラに俺を励ますよう言ったのかもしれないな。
本人には絶対聞けないが。
でもなんだろう、歳を重ねてきたのかな?
シャラの助手を勤めてから1年と半年か・・・
今の俺なら、探偵を続ける他の理由が見つかるかもしれない。
------------------------------------------------------
そう思いながら日記を閉じる。
・・・トレーニングはすでに終わっており、
探偵事務所の前に立ち、シャラを待つ。
懐かしい出来事を思い出してしまったなぁ。
「ごめーん!待ったぁ?」
シャラが走ってこちらに近づいてくる。
「かなり待ったぞ。
次の村は危険かもしれないとのことで、銃を預かった」
「えぇー!銃って五月蝿いし臭いからいらないー。
それにこれM1848じゃん!弾込めるの大変なのにー」
まったく・・・探偵事務所の射撃テストでは、
上位3名に入る凄腕だというのに・・・。
ともかく、今回の依頼は無事達成したことだし、
仕事道具と一緒に俺からのプレゼントもくれてやろう。
「そう言うなって。
ほら、黒色火薬と雷管とお前専用の耳あてだ」
「あ、これって・・・」
「前々から注文してた耳あてだ。
俺は詳しく知らないが、有名な店で今度出る新作らしい」
「私が欲しかった耳あてー!やったー!」
単純なやつめ。
だが、機嫌を直してくれたようで何よりだ。
銃も受け取ってくれた。
この銃、弾を一発込めるのに30秒程かかる、
なかなか面倒な銃なのだ。
アンヌリカの開拓地だと、
弾薬という画期的なシステムを使う銃があるが、
弾が高い。
結局はこういう銃を使わざる得ないのだ・・・
「さて、じゃあ馬を借りに行くぞ」
「はーい」
こうして準備を終えた俺たちは、ジャムムル村へと向かうのだった。
「・・・あ、でも今夏だよね?この耳あてって、販売が半年後からだよ?」
「・・・」
リンゴがあるんだから当たり前じゃん。
ちょっと用事があって、
誤字脱字修正は明日にします。
申し訳ない!
第一話は、事件の前編です。
後編はまたそのうち投稿致します。




