天才の続き。
それまでの僕にとって、世の中は、
「大勢が馬鹿としか思えない仕事を真剣にやっている全く理解不能なところ」
だった。彼らはそういう演技をしているのかもと、そんなことまで考えていた。
それが十五年ほど前、勤めていた会社が本社から切り離されることになったときのこと。
契約社員の何人かが正社員になれるということで、彼らの足の引っ張り合い、蹴落とし合いが、色々なところで見られるようになった。
それを何ヶ月もの間、間近に見ていると、その時は理由までは分からなかったけど、彼らが本気だということが理解出来た、というか腑に落ちた。
そして腑に落ちた次の瞬間、
“ひょっとして彼らは普通で、自分が天才だと評価されるような知能の持ち主だから、相対的に世の中が馬鹿みたいに思えていたのかも……”
そう思った。
そして又、次の瞬間、
“だったら世の中というのは一体どういう形をしているのか?”
と、それまでの人生の中で、初めて興味を持てるようになった。
つまり、色々な分野の勉強を始めたのだ。
なんか書いていてアホみたいだ。
だが全てが真実デスラー総統。
──続く。
僕の父は精神的視野が狭いから、相手の話をなかなか理解することが出来ない。その相手が僕であった場合に限れば、大体、永遠に平行線を辿ることになる。
かなり前だけど、近所の人から、
「何かを決めないといけないとき、あんたのお父さんがいると、そこにいる全員が困り果ててしまう。あんたのお父さんには理解力がない」
と、言われたことがある。
確かに、その通りだと思う。
僕が世の中を理解出来なかったのも、原因の多くは父のそんなところにあったんだと思う。そして残念なことに、僕は未だに理解出来ているとは言えない。
その家の男子の父親がこんな感じでは、本当に困ったことになってしまう。
誰からも理解してもらえないけれども。