その呪い害はなし?
あちらこちらふらふらと。
…なんか、長くなりました。
「「「聖女さまーーー!!」」」
「「「勇者さまーーーー!!」」」
それは、異世界から来た聖女と勇者が無事魔王を倒した事を祝うパレード。
世界に平和が訪れた事を喜ぶパレード。
白馬に乗った聖女と黒馬に乗った勇者は仲良く並んで通りを進み、救世主を一目見ようと集まった国民に手を振り、時折隣を歩む者と目を合わせてはお互いに言葉を交わし微笑む。
「うーむ。初々しくていい眺めだ」
そして、それを後ろから眺めニマニマするのが私だ。馬に一人で乗ることが出来ないので相乗りしてもらっている。
「賢者どの。聖女様と勇者ばかり見ていないでもう少し周りに手を振って下さい」
そんな私を注意するのが、この国の第一王子。私と相乗りしてくれる優しいヤツ!
「ん?そんな固いこと言わないで下さいよ。あれを見てニマニマしないなんて、あり得ません」
「はぁ。…ならばもう少し周囲に愛想を振りまいてください」
「…もう。仕方ないですねぇ」
少し不満に思いながらも、笑顔を作って笑いかける。
「…ねぇ、殿下。私が笑っても誰もみていない気がするのは気のせいでしょうか?」
「………」
「殿下が、笑えって言うから笑ったのに!ひどい!!」
なんて、話をしながら進む。
因みに私も異世界から来たうちの一人で”黒の賢者”と呼ばれている。聖女と勇者との違いはただ一つ。聖女と勇者は望まれて来たのに対して私は巻き添えをくらって来た。そう、巻き込まれて来ただけの望まれない存在。それでも、私に優しく接してくれる人もいた。同じ世界から来た聖女と勇者はその筆頭だし、第一王子もそうだ。
だから、私の得た力を使って世界平和に貢献しましたとも!異世界から来た者はみな魔法が使え、それとは別にそれぞれ何らかの力を得る。聖女は癒しの力を、勇者は武に長ける力を、私は知識に長ける力を得た。
取り敢えず私は、この国の書物を読みまくった。この国の歴史から始まり、兵法、この世界にある他国の言葉、果ては童謡の本まで種類問わず読み漁った。
もちろん、知識があってもそれを使えないと意味がない。だから、聖女と勇者の元にも教えを請いに行きましたとも。聖女には魔法の使い方を、勇者には闘い方を教わりました。
結果、黒の賢者と呼ばれるまでになりました!頑張った!密かに自分チートだと思ったりもした。
そして、聖女と勇者が魔王討伐の旅に出る時に頼み込んで私もメンバーに入れてもらった。
初期のメンバーは聖女、勇者、姫、第四王子、騎士、魔導士、私。
因みに騎士と魔導士は勇者と聖女の師だ。姫と四王(名前知らないので略)は何でメンバー入りしたのかは謎。
そして、旅は始まったーーが、姫と四王は早々に根をあげた。二人だけ送り返すのは無理な話なので、騎士と魔導士がそれの護衛役として抜ける事になった。
結構早い段階で、メンバーは三人になった。
騎士と魔導士が抜けた始めの頃は大変だったがそれにもなれ私と聖女と勇者で旅は上手く進んでいった。
その時の私の楽しみと言ったら決まっている。旅の中でどんどん距離を縮めていく聖女と勇者の観察だ。
基本的には一人静観し、ある時にはその背を押し、またある時は叱り、またまたある時は恋バナを繰り広げてみた。勿論、聖女と勇者、二人とだ。お陰様で、聖女とは無二の親友に、勇者とは戦友のようにとても仲良くなりました!
もちろん、本来の目的もきちんと果たしましたよ。ある時は村を魔物から守り、またある時は非道な領主から民を救い、またまたある時は魔族の幹部の倒した。辛い目にも多々あったけど二人はお互いを私は二人のイチャイチャを心の支えにして遂に魔王の元へ辿り着き、色々あって今に至る。
「…どの。賢者殿!」
「…おぉ、殿下。どうかされましたか?」
「どうかしたじゃ無いですよ。お二人を見なくなったと思ったら、一人で考え込みはじめて」
「あー。ごめん?」
「ごめんじゃないですよ。…ほら、そろそろこの式も終盤ですよ」
「ほんとだ」
パレードの最後には舞台が用意されている。通りを歩き終わったらそこに勇者と聖女が行き二人が平和を宣言する事になっている。平和になっても王が最悪だしなこの国に。
少しづつ近づく舞台を見ながら私は言う。
「殿下」
「何ですか」
「殿下って良い人ですよね」
「は?」
「王子なのにこうして相乗りしてくれるし」
「…はあ」
聖女と勇者が馬から降り舞台に上がっていく。
「貴方のお父上があんな人なのに対して、殿下はそんなカケラ微塵も無いですし」
「ちょ、賢者どの」
「貴方の義弟君である第二王子がお父上寄りだし妹君と四王がアレなのは残念ですけど、
「しおう…」
「え?一王って呼ばれたいですか?」
「遠慮します」
「…まぁ、唯一まともな第三王子は貴方の事を慕っていますから大丈夫です。」
「……」
「申し訳ないんですけど、私には聖女と勇者が優先なんですよねー。……だからーー」
二人が舞台に上がりきり、国民に世界に宣言する。殿下に私の声が聞こえないのを承知で話す。
「え?なんて言って…」
聞き直そうとした、殿下に微笑み聖女と勇者を見て、話す気はないのを態度で示す。
「はぁ。後でまた聞きますからね」
それを聞こえないふりをして、聖女を見る。
「王国の皆さん!時期、荒れた世界は元に戻ります。ですから、ですから!わたしから、私達異界の者からお願いがあるのです」
「魔王がこの世界を攻撃する事はないだろう。だが、魔族はまだ居る」
それを聞いた、国民たちはどよめき叫びます
「なんだって。なら、魔族どもも消さないと!」「そうだ!魔族はいない方がいい!」
それを、止めたのは聖女でした。
「違います!」
彼女は泣きそうになりながら言葉を紡ぎます。勇者は静かに聖女に寄り添います。
「もう一度言います。私達からお願いがあるのです。どうか、魔族たちの国へ攻撃をしないでください。彼らも心があるのです!無理を言っているのは充分わかっています。…でもこれ以上、同じことを繰り返さないでください」
叫んでいた国民は静かになり、予定とは違う台詞に慌てた王の遣いによりパレードは終わった。殿下が聞き直す機会はないまま。
***
パレード終了後、王に呼ばれ三人揃って怒鳴り散らされた。聖女はそれでも話をしようしとたが聞いてもらえず、勇者も口添えをしてみたがその甲斐なく部屋に待機と命令された。そう”命令”だ。…え?私は静観を決め込みましたよ。それが、”約束”だもの。
部屋に戻った後はもちろん、大人しくするはずなく抜け出してある場所に向かう。
たどり着いたそこにはもう既に二人が居た。
「遅い」
「もう!何かあったのかと心配した」
「あれ?私が最後?」
不機嫌そうに一言いったのが勇者。若干涙を浮かべながら言ったのが聖女。
そんな聖女に笑顔を向け抱きしめ勇者に自慢げに笑いかけると、「のわっ」気が付けば聖女は勇者の腕の中。
勇者に非難の視線を向けながら、小声で罵る。「心せっま!ありえんわー」
そんなやり取りをして三人で目を合わせふっと笑い合う。
「久しぶりだね、勇者、聖女」
「あぁ」
「うん。久しぶり」
そこで、言葉が切れ静寂が訪れる。
「ねぇ。もう、名前で呼んでくれないの?」
「……」
聖女が尋ね、勇者は目で訴えてくる。
「…うん、ごめんね」
「そっか.じゃあ!やっぱり、一緒に行こう?」
「それは、約束と違うでしょ?」
「…そんなに、俺達と行くのが嫌か」
「それは、違うよ?もともと、王を止められなかったらのこの国から出るって案は私が出したでしょ」
「…なんで?なんで、なんで!」
聖女の叫びに勇者が側による。
「ごめんね。…でも、約束は約束。守ってくれるでしょ?それに、こうするのが一番いいってわかってるでしょ?」
「…っ。ふっ…」
「泣かないでよ。大丈夫だから、何てったって黒の賢者だよ?ね?……勇者。聖女のことよろしくね」
「あぁ。…お前も気を付けろよ」
「うん」
また、静寂が訪れる。
「…じゃぁ、またね」
その言葉に聖女は顔をあげる。
「あぁ、またな」
勇者が返事をし、聖女も泣きながら笑顔を見せ言う。
「…っ。ぅん。また、またね!絶対だよ!」
そうして、聖女と勇者はこの国から姿を消した。
***
次の日。
聖女と勇者がいなくなり、城は騒然としている中、呼ばれた私は王の間に行く。
そこには王族全員が揃っていた。
民のことを少しも考えることのなく、重税を課す王。父王に似て身分を嵩にきて人を人と思わない二王。王族唯一の女性、甘やかされて育ち自分本位な姫。王にも母にも構ってもらえず、自分に笑いかけてくれた聖女に執着をみせる四王。
まともなのは、殿下と三王だけ。
心配げにこちらを見る殿下と目を合わせ何も言わないでと訴える。頷いたのを確認して王を見た。
「黒の、なぜ呼ばれたかわかっておるのだろうな」
「もちろんです、陛下」
私は笑顔を崩さないよう注意して言う。
「聖女と勇者は、どこに行った」
「さぁ?陛下の命で私は彼女たちに近づけませんでしたから」
「ふざけないで!」
「ふざけるな!」
と、会話に乱入してくるものが。の姫と、四王だ。王はちらりと見ただけで何も言わない。つまり、許すとゆうことだろう。
「ふざけるなとは、どうゆう事でしょうか?」
「そのままの意味よ!勇者様が私を置いて行くはずないわ!どうせ聖女(あの女)に無理やり連れていかれたのよ!あんたもそのことを知ってたはずよ!」
「ちがう!聖女様は僕の女神!彼女こそ勇者に、あいつに無理やり連れていかれたんだ!」
「はぁあ?ふざけないでよ!」
「ふざけているのはお前だろ!」
と、二人の言い合いが始まった。
見苦しいなーと思いながらそれを黙ってみる。流石に、話が進まないと思ったのか王が「黙れ」と言いその一言で静寂が訪れた。
「黒の、本当にアレらがどこに行ったのか知らないのか」
「えぇ、知りません」
「ならば、理由は」
「陛下はそれを聞くのですね。…ならば此方からも聞きたいことがあるのです」
「何だ」
「陛下は本当にご存じないのですか?彼女らが姿を消すに至った理由を」
「……知らぬ」
「…そうですか。それは、残念です。……ならお話ししましょう」
**
それは、この国に着いてから暫く経っておきました聖女と勇者の、命が狙わらた事はご存知ですよね?え、知らない?まだ、そんな事言うんですか。…まぁ、いいです。
先に攻撃されたのは勇者。もちろん、勇者ですからそんな簡単に命を奪える訳がないく、らりくらりと躱していたんだと思いますよ。
その次に攻撃され始めたのは、聖女。聖女はほらあれですから。基本的に敵意に鈍感ですからねぇ。彼女自身はあまり気づいてなかったと思いますそれに恐らく勇者がこっそり助けていたでしょうし。害がないと判断したから犯人無事だったんでしょうね。
ん?どちらも予測だろうって?そんな筈ないに決まってるじゃないですか。だって、私ちゃんと調べ上げてこれの主犯知ってますもん。
…て、話が逸れましたね。犯人の話は取り敢えず置いといて。彼女たちがこの国を出ると決めたきっかけですよね。
簡単な話です。のらりくらりと躱す勇者に痺れを切らした犯人が、勇者が不得意とする物で攻めただけですよ。ほら、一部じゃ有名でしょ?勇者は体内に入った、毒に弱いって。正直、勇者としてどうかと思いますけど彼らしくて良いと思いますよ私は。
勇者は珍しくつまみ食いしてみたそうです、城内の物だからと、適当につまんじゃったらしんですよね。それに、毒が入っていて見事に倒れたんですよ。いやーバカですよね。
それに、遭遇したのは私と聖女。これはヤバイと秘密裏に勇者を部屋に返してどうにか解毒しようと右往左往ですよ。私も解毒は得意じゃないですし、聖女がそれをすると彼女も倒れかねないですからね。だから、解毒に関する本を漁るために少し目を離したんですよね。これが悲劇を呼びまして、途中様子見で部屋に行ったらちょうど聖女が倒れる瞬間でしてね。いやー、血の気が引くって久々の体験でした。床に衝突する前に支えたはいいけど、その後に問題が浮上したんですよね。
えぇ、そうです。聖女が倒れたのは勇者の解毒に力を使ったからです。あの子も解毒不得意なのに。初めに危惧した通り勇者にあった毒はより強い毒になって聖女の体に入り込んだ訳です。
そこに、勇者が目を覚ましたからさぁ大変。勇者、聖女が関わると常識何処かにいっちゃいますから。目が合った瞬間、殺気ばんばんですよ。即座に、勇者の説得にかかり、どうにか時間を貰って死ぬ気で本を読んで解毒に至ったんですよ。
今思い出しても怖かった。
まぁ、それまで黙っていた勇者もようやく動き始めたわけですよ。聖女が毒を受けたのが響いたんだと思います。
それで、調べていくうちに色々と知らない事が出てきましてね。色々とね。
**
と、まぁそんなことがありまして。見に覚えのある方いますよね?」
「「………」」
誰も答えない。
「勇者を狙ったのが第四王子。聖女を狙ったのが姫。…でしょう?」
「わたくしはわたくしは!ただ聖女を狙って…勇者様に食べさせる気なんて!」
「えぇ、知ってます。勇者がつまんだ物はもともと聖女が食べるはずだった物。でも、毒が入っている事を王子は知っていた。だから、勇者が食べるように仕向けた」
「僕は!僕は彼女を毒から守ったたけだ!それを偶然、勇者が食べただけだろう!…なのに、聖女が僕のせいで毒を…そんな事知るわけないだろう!」
「えぇ、貴方達からすればそうでしょうね。でも貴方達に入れ知恵をした人の狙い通りではあったと思います。そうでしょ?第二王子。…貴方が何故そんな事したのかは未だにわからないんですけど。まぁ、王の思惑とは違いますよね…で、ここからが私にとっては大事なんですけど」
賢者の顔から笑顔が消え、陛下に視線を向ける。
「私にとって、勇者も聖女も無二の存在。そんな人に手を出されて黙ってみてるなんて私には無理な話。…王よ。貴方はこいつらがやっていた事を知っていただろう?」
「………知らぬ」
「なぜならもともと、旅から帰ってきたら勇者は姫と、聖女は王子と結婚でもさせる予定だったんだろ?それが、旅から帰って来たら勇者と聖女が思い合っていた。貴方はさぞかし驚いただろう。何故ならこの国の人々は、どうしてか勇者と聖女は王族と結ばれると心の底から思っていた。彼等が想い合うなんてかけらも想像してなかった。
それなのに彼等はまだ言う。落ち着いたらこの国を出ると。だから、苦肉の策で片方だけでも取り込もうとした。どちらかがいなくなれば、丸く収まる。そう思ったんだ。そうだろ?」
賢者から放たれる殺気に、少しずつ顔色が悪くなる王。
「なんとか、言えよ」
「…なの、…そんなの!彼女たちが悪いのよ!」突然叫んだ姫に視線を向ける。を
「今までの、勇者も聖女もこの国の姫か王子と結ばれてきたわ!それなのに、今回だけ違うなんてあり得ない!」
「それは、当たり前の結果だ」
「…え?」
この言葉には姫以外の者も皆反応を示した。
「歴史の中に、勇者と聖女が共に居たことは一度もない。いつもどちらか片方だけだ。…つまりは、そういうことだろう?」
「なんだと?」陛下が言う。
「ならば、貴様はこの結果は私の責任だとでも言うのか!」
「まぁ端的にいえばそうですね」殺気はそのまま微笑む。
「…な!黙って聞いておれば!……もうよい。お前がそのつもりなら容赦はしない。もともと、お前は要らない存在。国への反逆罪で地下牢に送る。それも、この国にある最も暗く光の届かない牢へだ」
私の話に驚いていた殿下が正気を取り戻し何か言おうとしたのを笑い声で遮り話す。
「ふふっ」
「何がおかしい」
「いえ、つまり私に闇の中での暮らしを罰として与えるそういうことですね?」
「…そうだ」
「そうですか。…あー、長かった。私はその言葉が聞きたかったんです」
「何?」
「私は貴方達のことが嫌いなんです。だから、私も貴方達に呪いをかけようと思いまして。折角なんで私の罰に似た呪いを。こう見えて呪い得意なんです」
「な!何をふざけたことを!そのような事できるはずない!…衛兵!!今すぐこいつを、地下牢に連れて行け!今すぐにだ!最奥に閉じ込めろ!!」
恐怖にかられた王が叫ぶ。
「安心してください、死ぬ訳ではないですから。ある条件を満たせば消えますし、民は国外に行けば巻き込まれることはありません。貴方達は国の外に出ても逃れる事はできないですけど」
賢者は、抵抗することなく出口に向かいながら、喋る。
「だから、せいぜい足掻いてください」
そうして、賢者は牢に入れられた。光一つ届かない真っ暗な牢へ。
そしてその夜、それは静かにやってきた。
形のないそれは、誰にも気付かれることなく静かに国を覆っていった。
翌朝、靄のような物が国を覆っていた。それを見た王はすぐさま賢者の元に人を向かわせたが誰一人として賢者の入れられた牢まで辿り着けず断念。
懸念を抱きながらも、害は無いと放置してみたがそれは消える気配がなく国民の不安は募る一方だった。それは、太陽の陽を遮り国中から光を隠していた。
いくら待っても晴れる事ない靄に、さすがに不安になり勇者と聖女に助けを求め押し掛けてきた民には、賢者の企みによって姿を消された。そう説明して恨みが賢者に向くよう仕向けた。
呪いという言葉に恐れをなした、姫と第四王子は国外に出てみたがその靄は体に纏い取れる事なく表に出るのを嫌がるようになり。王はそれまで以上に民に税を課すようになり国民の不興をさらに買い。第二王子は大人しくなったが何処か虚ろな目をするようになり賢者が入れられた牢の入り口を見る事が多くなった。
そんな中、第一王子は第三王子と協力して父王の暴虐を抑えようと国中を駆け回った。
暫くして、殿下はある事に気付く。
王の狙いも虚しく民のほとんどが姿を消した三人に恨みを抱いていない事に。国を覆った靄は民を傷つける事なく逆に病に倒れている者を癒す事がある事に。靄の濃いものほど何らかの悪事を働いている事に。貴族は恐れを抱く靄に国民は感謝を示している事に。
靄が国を覆い、そろそろ数年経つが未だ晴れる気配は無い。
のちに、この国を他国はこう呼んだ、センティスペイザ≪聖なる者を裏切った国≫と。
***
「♪〜♪♪〜♪〜〜」
一人、暗闇の中歌う。滅多に人の訪れることのないこの場所で暇な私は歌う。声の出し方を忘れないよう歌う。
(いやー。夜目が聞いて良かった。暗いけど何も見えないわけじゃない。住めば都ってこれのことかな)
いつか靄が晴れることを祈り。
(私がかけた呪いなのに、祈るのはおかしいか?)
「〜〜♪♪〜♪」
(でもなー。あの呪い誰かに害をなしたりしないはずだけどなー。太陽の光が見えない程度なんだけど。…あ、農家の人は困るか?)
なんて一人考える。
(あー、でも。太陽の光を見ないのって結構辛いよな。…青い空も見えないのか。まぁ、民に関しては国外にいけば見れるか。一体どれくらいの民がまだこの国にいるんだろう)
国の様子はわからない、でもうまくいっていると良いなと思う。
(殿下元気にしてるかなー。殿下には悪い事したなー。聖女と勇者のイチャラブ懐かしいなー。……いつかまた見れたら良いなー)
抜け出したくなるのを堪え、いつか陽の光を堂々ともう一度見ることを願いながら彼女は一人そこに居る。
一人の寂しさを持て余しながらも、自分がかけた呪いの解けるその時を待っている。
『だから、私は貴方の敵になるけど。殿下どうか貴方は自分を見失うことなく良い王になってくださいね。…因みに私は貴方の事が好きなんです。ほんと、好きなんですよ?聖女と勇者の二人と貴方どちらを選ぶか三日三晩悩むくらいには。どうか幸せになってくださいね』
…たぶん。続き書きます。




