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5-8 《!闘争の極み!》-2

 開始の合図と共に「ユウ」と「サエ」は同時に動き出す。お互いに向かって[風纏い]を併用して一直線に高速接近していく。

 二人の距離が詰まる、詰まる、詰まる……

 ――先手を取ったのは、「ユウ」だった。

 距離が詰まっていくギリギリの間合いから、[ロングスピアジャブ]を打ち込んだのだ。

 しかし、このスキルは発生が早くリーチもは長いがダメージは低い。

 「サエ」は全く揺るがず、[極みの拳]で右ストレートを放つ。これは[ロングスピアジャブ]を当てて即座に後ろに[ステップ]した「ユウ」に躱される。


 「やるねぇ!」


 思わずサエは嬉しそうな声を上げていた。

 先ほどの[ロングスピアジャブ]は本当にその間合いのギリギリで放たれていた。研ぎ澄まされた一撃であった。

 そして攻撃を当てたにも関わらず直後の冷静な回避。

 ユウヒの調子は万全だ――そうサエに思わせるのは十分な動きだった。

 「サエ」は野性的、とも言えるような豪快な攻勢をかけた。

 [極みの拳]を絡めた怒涛の攻撃をしかけていく。

 しかし、そのことごとくを紙一重で「ユウ」は躱していく。

 そして、少しでも隙を見せれば[ロングスピアジャブ]が飛んでくる。


 「いい!いいよ、『ユウ』!!本当に上手くなった……!!ぶっ潰しがいがあるってものよ!!」


 元々ユウヒは[極死の太陽]を軸にした戦法を編み出してから、ずっと丁度今のように相手の攻撃を躱し続ける展開を経験し続けていた。

 最後の最後に、隙をついて[極死の太陽]で決める――それは裏を返せば、その隙が出来るまでは耐えることを意味する。

 そんな戦いをしてきたユウヒの回避の技量は自然と高いレベルになっていた。

 さらに、準決勝で「ゴウカ」の怒涛の波状攻撃を経験し、ユウヒは精神的にも技術的にも回避のエキスパート、とも言えるプレイヤーになっていた。

 「サエ」の猛攻は続く。[極みの拳]による左フック、抉るような前蹴り、光を纏った高速タックル、足払い、最後に[極みの拳]による左ストレート……この連続攻撃でさえ、「ユウ」は避け切って見せた。しかもきっちり[ロングスピアジャブ]を攻撃の終わりに打ち込みながら。


 「そんなカススキルばっか当ててどうすんだよ!」

 「逃げんなー!戦えや『ユウ』!!」

 「やる気あんのかぁ!?」


 ひたすら攻撃を回避し続ける「ユウ」に観客からのブーイングが飛ぶ。

 その声を聞いて、「サエ」は思わずため息をつきたくなった。


 (見る目の無い奴らだわ……)


 回避の技量だけに限って言えば、「ユウ」は最早トップランカーの中でもトップクラスになっていることを対峙しているサエは感じ取っていた。

 しかもその合間合間に差し込まれる[ロングスピアジャブ]の精度は大したものだ。まるでこの威力の低いスキルだけで「サエ」の500のHPを削ろうとしているかのような、そんな気迫すら感じる。


 (実際本当にそのつもりかもね……本当に面白いわ)


 この崩れなさ……まぎれもなくノハナ・サエにとってカギノ・ユウヒはこれまでで一番の試練であった。


 

 傍目から見ていると、軽やかに「サエ」の攻撃を回避し続けているかのように見える「ユウ」。しかし、それを操るユウヒは必死の形相で画面を睨みつけていた。

 [極みの拳]を絡めた「サエ」の連続攻撃は超強力だ。捕まれば一気に逆転される。

 [ロングスピアジャブ]を当て続けて、サエを焦らそうとしているのだが……


 「……っ!」


 またも[極みの拳]が飛んでくる。間一髪、回避する。

 サエの攻撃の激しさはまったく収まらない。その攻撃の一つ一つが、冷酷に獲物を狩る野生の獣のような獰猛さと鋭さを持っていて、一向に衰えることがない。ただ苛烈なだけではない。焦りによる雑さも無い。強烈なプレッシャーを与えてくる猛攻だ。


 「くそっ……少しぐらい雑になってくれないもんかね……!」


 それどころか、その鋭さは時間が経つにつれて増していっているにすら感じた。

 ギリギリまで相手を疲弊させるつもりでいたが、その思惑は通用しないのではないか、とも思えてくる。


 (……いや、駄目だ)


 即座に弱気な考えを打ち消す。


 「最後に勝つのは僕だ……!!」


 

 「ユウ」はひたすら回避と[ロングスピアジャブ]だけで立ち回る。――サエには、ユウヒの思惑がわかりはじめていた。


 (と言うより……あからさまね。隠す気も無い……)


 SSLでスキルを繰り出すために必要なSPは、時間経過で自動回復していく。それもかなりのスピードで。低消費のスキルばかり使っているのなら、ほとんど満タンを維持できる。


 ([スタンマイン]すら使っていない……SPを温存しているのね)


 SPを温存している……それは、すなわち。

 ユウヒにはサエを倒すための、とっておきの大仕掛けがあることを意味している。

 「ユウ」には消費SP500の大技、[極死の太陽]がある。それを決める為の秘策があるのだろう。

 その機会になるまで、こうやってひたすら回避し続けて、こっちを疲弊させるつもりなのだ。

 さらに言えば……


 (策の存在をこうやって私に知らせることで……こっちにプレッシャーをかけている……)


 隙を見せれば、一気に叩き潰してやる――そんな気迫をユウヒから感じる。


 (どうする……それに備えてこっちも攻撃の手を緩めるべきか?)


 一瞬、サエに迷いが生じるが……


 (……いや、無いな。それこそ「ユウ」の思うつぼだ。何より、私が面白く無いじゃないか……)


 ニヤリ、と笑って迷いを断ち切る。

 「サエ」の動きはさらに狂暴なものになっていく。

 

 「その策ごとぶち壊してやる!!」


 

 画面の前でサエは吠える。

 「サエ」のさらに勢いを増した猛攻が「ユウ」を襲う……!


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