4-4 答えはあるのか-3
「いいかい、『ユウ』君。キミが[極死の太陽]という特別なスキルを持っていることはSSLでは周知の事実だ。そしてその対策法もね。まず間違いなく、キミに対峙してくる相手は全て、[極死の太陽]を潰すことを最優先とし、その為の立ち回りをしてくるだろう」
「はい……はい、そうだと思います」
「だからこそ、読める。ある程度はね。相手の心を読む、なんてそうそう出来るモンじゃないが、キミに関しては一つ、絶対に読める心情がある。『[極死の太陽]を撃たせてはならないから、対策しよう』……当たり前の事だけど、それだけでもキミは有利な立場にいるんだ。キミが実際に[極死の太陽]を使うか使わないかは関係無く、ね」
「はい。『[極死の太陽]を封じる為の動きをしてくる』というのが分かっていれば、事前にそれに合わせて戦法を考えることができる。例え[極死の太陽]を使わなくとも、それを持っている、という事実だけで相手の動き方をある程度制限できるから、その優位性を活用すれば、[極死の太陽]を使わずに勝つこともできるかも……」
「その通り!察しがいいね。勿論、[極死の太陽]は強力だから、ソレを使って勝つことも考えてもいいだろう。相手が近づいてくるのなら、他のスキルで対抗して、その後[極死の太陽]を使ってトドメ、でも良いだろう。――そうだな、スタン系の技は持っているかい?当たると怯んで隙ができるんだ。名前に「スタン」ってついてるスキルは無いかい?」
問われて、自分が持っているスキルを思い浮かべる。が、そんな便利なものは一個しかない。
「[スタンタックル]だけです……でもコレ、当てられたとしてもその時相手との距離はゼロになってるから……[極死の太陽]まで繋げられないですよ……」
それをやろうとして、「サエ」さんに負けたのだ。というか、今までの戦いでも[スタンタックル]から[極死の太陽]を当てようとして逆に反撃されて負ける、というのは多くあった。
タックルの後にどれだけ素早く距離を取ろうとしても、[風纏い]と言われるらしい移動速度上昇スキルを使われて、追いつかれたり背後に回られたりして、[極死の太陽]を封じてくるのだ。
「――[スタンタックル]を『ゴブリン』に30回命中させる」
「へ?」
「その条件を満たすと手に入る、[スタンボール]は知ってるかい?」
「え、え、え?」
「SSLでのスキル取得はレベルアップだけじゃない、特定のアイテムを使ったり、条件を満たすことでも手に入ることがある……基本だろう?」
「あ……」
「ははは、すっかり頭から消えていたみたいだねぇ。そうやって使えるスキルを増やす、っていうのも重要だよ?[スタンボール]は消費SPが20と多いけれど、スタン効果を持つ魔法の球を放つスキルだ。[ファイアーボール]がイメージに近いかな?」
「距離をとった状態で、相手をスタンさせられる……?」
「そうだよ。そしたら、そのまま[極死の太陽]に繋げられる。他にもスタン系の技は多くあるよ。調べてみなよ。その時はぜひ、ウチの『SSL研究所』を頼りにしてくれ。そうそう、キミが[極死の太陽]の対策に使われているであろう[風纏い]だって条件を満たせば誰でも手に入れられるスキルなんだよ。あれも中々汎用性が高くて便利なスキルだね。キミも持っておいた方が良いだろう」
「うぅ……」
そうか。スキルを増やして戦力を増強させる手段は、レベルアップだけじゃないんだ。最初にアリマに教わったじゃないか。勝てないことにムキになってすっかり忘れていた。恥ずかしい……
ちゃんと準備して戦いに臨む……考えてみれば、当たり前の事だ。
「自分の強みを理解して、どういう戦いをして、どう勝つのか、しっかり考えるんだ、『ユウ』君。そして、このゲームで重要なのは言うまでも無くスキルだ。目指す戦法を思い浮かべて、情報を収集してスキルを集めることだね」
「なんか恥ずかしくなって来ました……ずっと準備不足な状態で戦ってたんですね……」
「そりゃある程度仕方ないさ。失礼ながら、キミはまだ初心者だもの。失敗もするさ。これから取り返せば良いのさ。――保障しよう、『ユウ』君。キミの[極死の太陽]は超強力で、キミ自身も本気でこのゲームに取り組もうとしているんだ。しかるべき準備をすれば必ず勝てるようになる」
「『リクワ』さん……」
「そうだな、後は……と、ありゃ?」
急に「リクワ」さんが言葉を切った。
「どうかしました?」
「いやぁ、キミと話していて気がつかなかったよ。ねぇねぇ、『ユウ』君。後ろのおっかなさそうな男と美人さんはキミの知り合いかい?」
「え?」
そう言われて画面に注目すると……
「ユウ」の後ろに二人、プレイヤーが立っていた。
一人は一面に威圧的な文様が描かれた真っ黒いボロボロの道着を着て、非人間的な肌の色、鬼のような形相の顔、逆立つ白髪、真っ赤な目という恐ろしい容姿の男。
もう一人は真っ白なローブのような服に長く美しい黒髪が目を惹く美しい女性……
「『ゴウカ』さんに『サエ』さん!?い、いついらしたんですか!?」
通常のチャットに切り替えて問う。ビックリした……心臓に悪いって。
「いやぁ、ついさっきですよ、『ユウ』さん。メッセージ、見ましたよ。丁度『サエ』も一緒にいたんで、一緒に『ユウ』さんの相談に答えようと思ってね。『極みの闘技場』じゃ目立つから、ここに集合しましょう、って返信しようと思ってたんですけどねぇ。まさか先に来てるとは。……しかも『リクワ』と一緒だなんて、また変な縁もあったもんだ。『リクワ』、『グループボイスチャット』にして俺と『サエ』も入れてくれよ!」
「はいはい~」
そう「リクワ」さんが答えると、僕、「リクワ」さん、「ゴウカ」さん、「サエ」さんの4人でボイスチャットが出来る様に設定が変更された。
「よしよし。んじゃ、改めましてこんちは、『ユウ』さん。んで『リクワ』も久しぶりだなぁ!」
「こんにちは『ユウ』さん。先日はどうもありがとうございました。『リクワ』、久しぶりね」
どうやら二人とも「リクワ」さんとは知り合いらしい。口調から親しさも感じられる。
「いやいや、SSLトップランカーのお二人が並ぶと壮観ですねぇ。お二人も『ユウ』君の相談を受けたんですか?いやぁ、『ユウ』君、キミとんでもないパイプを持ってるじゃないか。初心者がこの二人に相談を受けてもらえるなんてそうそうないことだよ?全く、こんなアドバイザーに来られたんじゃあ僕はお役御免かな?」
「変におだてるのはやめろっての、『SSL研究所』の管理人さんよぉ」
「ははは、そうは言っても僕はPvPはそんなに得意じゃないですよ」
「……『リクワ』ってワリとタヌキ野郎よね」
「酷いなぁ、『サエ』さん」
「殆ど全てのスキルのデータがその頭に入ってる。PvPが弱いワケ無いでしょうに」
「いやいや、『グランドチャンピオンカップ』の優勝者様にそこまで言われるとは光栄の限りです、ははは」
やんややんやと親しげに会話に花を咲かせる三人。なんというか、有名人3人が並んでる姿に圧倒されてしまう……
「おっと、今日は『ユウ』さんの相談に答えにきたんだった。あんまり関係無い話で盛り上がるのは良くないな」
「……『ユウ』さん、『リクワ』からはどんなことを教わりましたか?」
「ふむ。『ユウ』君、復習がてらに、この二人にキミから説明してみたらどうかな?」
「わ、わかりました……」
なんかメッチャ緊張するんですが。
変にドキドキしながら今までの「リクワ」さんとの話をまとめながら「ゴウカ」さんと「サエ」さんに説明する。
「――なるほどねぇ」
「『リクワ』らしいわね。……うん、私もそう思います、『ユウ』さん。[極死の太陽]は間違いなく貴方の切り札です。それを活かした戦いをすることが、経験の差を埋める一番の方法だと思います」
「そだな。『ユウ』さん、そりゃ間違ってないですよ。……つーか『リクワ』、殆ど言っちゃってるじゃねぇか。コレ俺らが補足すること、あるかぁ?」
「ご冗談を。リアルではプロゲーマーの『ゴウカ』さんならまだアドバイスできることはあるでしょう?『サエ』さんも言わずもがな、『グランドチャンピオンカップ』の覇者ですし」
「んー、俺はともかく『サエ』はどーかねぇ……コイツ、才能の塊みたいなモンだし。多分平気で『相手の心を読め!』とか『心を鍛えろ!』とか言うんじゃね?」
「なっ!失礼な……!私だって常識的なアドバイスくらいできます!」
「ほっほーう。んじゃあ『ユウ』さんに『サエ』さんからありがたーいアドバイスをして差し上げろよ。ほれほれ」
「う……うぅ……!ゆ、『ユウ』さん、ちょっと待って下さい!絶対に凄い……えー……なんというかとっても凄いアドバイスをさせて頂きますから!もう連戦連勝!みたいな!」
「は、はぁ……ありがとうございます」
どうやら『サエ』さんはアドバイスとか苦手らしい……格闘家だったころに鍛えた経験と才能で戦ってきた故だろうか。
でもこうやって相談を受けてくれたことは嬉しい。SSLじゃ殆ど友好的な関係を築けたプレイヤーなんていなかったし……
それどころか、元々の友達との関係性が悪くなってしまったぐらいだもんなぁ……
――アリマ……なんでなんだよ。
そういえば、アリマと言えば。
「……『サエ』さん、あの動画……見ましたか?」
「あ、はい……私と『ユウ』さんの対戦してた動画ですよね……」
「すいません、止められなくて。あ……じゃなかった、『ジクト』にも思う所があったらしく……」
「やっぱり、私のせいです。あの時、『ジクト』さんに冷たい態度を取ってしまったから……」
「あー何?やっぱあの動画公開したのって『ユウ』さんでも『サエ』でも無いんだ?」
「ゴウカ」さんが話に入ってきた。「リクワ」さんも乗ってくる。
「『ジクト』って言うのは……『ユウ』君の友達かい?」
「はい……」
「まぁ、色々考えるところがあったんだろうね、としか言えないね」
「やっぱり、[極死の太陽]が関係してるんでしょうか……」
「かもね。このゲームに本気ならば、あのスキルに心を乱されない者はほぼいないだろうしね」
「い、いや……!そうじゃない……!私が『ジクト』さんに失礼な態度を取ってしまったんだ、私の責任だよ!」
「あー……そうかもなぁ、『サエ』。お前夢中になると、なんというか視野が狭くなるもんな」
「うぅ……」
「でもまぁ、別にお前が特別悪いって話じゃないだろ。結局悪いのは、非公開設定にしてた戦いの様子を動画で公開したその『ジクト』ってヤツだろ。嫉妬だか妬みだか嫉みだか知らねぇけど、マナーは守らなきゃな。……っと、『ユウ』さん、すみません、友達の事を悪く言うもんじゃなかったですね……」
「いえ……アイツが悪い、ってのはそうだと思いますし……『サエ』さんにも失礼な行動だと思います。そのことについては、謝りたかったです。すみませんでした」
「わ、私は良いですから……大丈夫です……」
……アリマの事は気になるけれど……ここでこの三人を巻き込んで話すことじゃない。……切り出したのは僕だけど。話題を強引に変える。
「そ、それより!すみません、『ゴウカ』さん、『サエ』さん、メッセージでも書いたとおり、何かPvPの秘訣があれば、話せる範囲で良いんで教えてください!」
「おっと、そうでしたね。『ユウ』さんは私にとっても、『サエ』にとっても有望株ってヤツです。出来る限りアドバイスさせて頂きますよ、貴方がこのままSSLから去ってしまう、なんてことになったら、悲しいんでね……」
「グランドチャンピオンカップ」ファイナリストの二人からのアドバイスが聞ける。こんな貴重な機会があるだろうか。
……絶対に聞き逃すまい。勝てるようになってやるんだ……




