4-4 答えはあるのか-2
今日は大学の授業がある日だ。
通学時の電車の中でホロフォを起動、ネットに接続し、SSL関連の攻略サイトを探してみたりする。
大学についてからも、頭の中はSSLのことで一杯だ。
……と書くとSSLに夢中で仕方ない、みたいに見えるかも知れないが、現在SSLのPvPでは負け続けで、最近は良い印象が無い。むしろ辞めてしまいたいぐらいなのだ。今も、昨日の敗北のシーンが勝手に頭の中で再生されるようで、嫌な気分になる。
どうやったら勝てるのか。そもそも勝ち目なんて最初からあるのか……ネガティブな気持ちが心をかき混ぜていく。講義内容はほとんど頭に入らない。講義はいつも真面目に受けていたので、こんなことは初めてだったが、今はその事実にもほとんど関心を払えない。
休み時間も昼食の時間も帰りの電車の中でもSSLのことばかり考えて悶々としていた。……しかし、だからといって、自分の部屋に帰りついたら即SSLにログイン……という気持ちにはなれなかった。
このままログインして「極みの闘技場」に行って、PvPをしても今日も負け続けるだけだろう。
やっても意味が無い……そう思ってしまう。
今日はSSLの攻略サイトを見て回ることにする。
なにか……PvPの専門サイトとか、無いだろうか?
ベットに寝転がりながら、SSLの攻略サイトを見て回る。
すると、一つのサイトが目に入る。
「絶対勝てる!SSLPvP徹底攻略!秘伝伝授!」
そんなタイトルのホームページが見つかる。なんか胡散臭い。
が、もう藁にもすがりたい気持ちで一応覗いてみることにする。
のだが。
「・・・・・・・・・・・・」
そこに書いてあることは殆どが精神論的なモノだった。
「心で負けるな!」
「心を鍛えよ!」
「心を律せよ!」
みたいな。心はわかったっつーの。
とにかく、何の具体性も無い言葉の羅列であった。
「やっぱハズレか……」
そう思いながらそのサイトをダラダラと見ていた。
「攻め時を感じ取れ!野生の勘だ!」
そんなモンがあったら苦労しない。
「自分を信じろ!鍛えてきた日々を思い出せ!」
えー……
「相手の心を読め!」
出来るか、馬鹿野郎。
「行き詰ったら……人に相談してみろ!」
はいは……うん?
その一文に目を惹きつけられる。
「人に相談……」
案外それは有効かも知れないぞ。何で今まで思いつかなかったんだろう。
[極死の太陽]を手に入れたことで騒がれたせいで、僕にはSSL内で相談できるような知り合いはほとんどいない、しかし、全くゼロという訳じゃない。
「SSL研究所」の管理人、「リクワ」さん。
プロゲーマーでもある「ゴウカ」さん。
それにグランドチャンピオンカップの覇者、「サエ」さん……
僕がSSLで知り合った人達……よくよく考えれば凄いメンバーじゃないか。
その人達に相談してみれば良いんだ。
「どうすれば上手くなれますか?」
みたいな。
そうと決まれば話は早い。早速SSLにログインした。
3人にダイレクトメッセージを送ることにした。
「突然申し訳ありません、ユウです。SSLに本気で取り組むことにしたのですが、PvPでほとんど勝てません。何か秘訣でもあれば教えていただけないでしょうか……」
そんな文面を作り、送信する。すると一人から、丁度ログインしていたのか、すぐに返信が返ってきた。
「リクワ」さんだ。
「本気で取り組むことにしたんだね。嬉しいよ。直接会って話したい。また『天国酒場』で待ち合わせようじゃないか」
おお、やっぱ良い人だ、「リクワ」さん。早速了解の返事をして、「天国酒場」に向かう。
「やぁ、『ユウ』君!」
「どうも、『リクワ』さん」
文字でのチャットで挨拶を交わした後、会話しやすいようにボイスチャットに切り替える。
「いやぁ、嬉しいなぁ、僕は!君がSSLに本気で取り組んでくれるって知らせてくれた時はホント、人ごとながら小躍りしたくなったよ。これからが楽しみだなぁ……」
「うー……期待してくれるのはありがたいんですが……」
「あぁ、あぁ、そうだったね。調子が悪いんだったね。まぁ、詳しい話を聞かせてもらおうかな?」
それから、今までの僕のPvPでの出来事を詳しく話した。
「ふぅむ……そこまで勝てないのか。それでもこうやって踏ん張ってるのは立派だよ」
「……正直、そろそろ限界です……」
思わず弱音を吐いてしまう。
「うん、大分参ってるみたいだねぇ。ゲームとはいえ、負ける、というのはストレスになるものさ。積み重なっていけば冷静になれなくなってくるだろう。……でも君はそこで、諦めるんじゃなくてこうやって相談することを決断した。――今のキミは間違ってないよ。そうだな、僕はPvPが特別得意ってワケじゃないが、アドバイスできることはありそうだよ」
おお。ありがたいなぁ。一人で悩むと思考の泥沼に落ちてしまいがちだ。こうやって相談できる相手がいて本当に助かった。
「初心者のキミが、周りの経験が長いプレイヤー達と互角に戦うには、やはりアレが鍵になるだろう」
「アレって、やっぱり……」
「そう、[極死の太陽]だ」
「だけど……[極死の太陽]は完璧に対応されてるんですよ?……もう通用しない」
そう、アリマが「サエ」さんとの戦いの動画を公開したことで、[極死の太陽]の対処方法は知れ渡ってしまっているのだ。死んでいるようなものだ。
「なら、まずはそこから考えようか。その対処方法っていうのは、何だい?」
「えっと、[極死の太陽]を撃つ前に、背後に回るか、攻撃して潰すことです」
「そうだね。なら、相手が君に対して、その対処方法で[極死の太陽]を潰す為には、どういう状況でなくてはならないのかな?」
なくてはならない、という表現に引っかかりながらも、少し考える。
「えー……その対処方法を行う為には、ある程度近い距離にいる必要があります。[極死の太陽]を撃つ時に、離れすぎていると背後に回るのも、攻撃で潰すのも間に合いません」
「その通り。では、相手はキミに対してどのように立ち回るのがいいのかな?……今までの戦いを思い出してごらん」
言われた通り、今までの負けた戦いを思い出してみる……
「……常に、接近しながら戦う。[極死の太陽]に対処できる距離を常に保ちながら、立ち回る」
「そうだ、その通りなんだ。よくわかってるじゃないか」
「そうやって、接近戦に持ち込まれて、[極死の太陽]を封じられて、負け続けてきたんです……」
「そうだね、[極死の太陽]が封じられたキミは、ただの初めて2ヶ月の初心者プレイヤーだ。……一見、ね」
「え?」
「復習だ。[極死の太陽]は決まりさえすれば一発で勝負が決まるとんでもない化け物スキルだ。だから、相手は絶対にソレを封じないといけないんだよ。キミは[極死の太陽]が封じられた、という事実を受け止めたところで思考を止めてしまって、折角の切り札の強みを生かせていないんだ」
「ええと……どういうことですか?」
「『相手に[極死の太陽]を封じられた』より一歩、ポジティブに思考を進めるのさ。『相手は[極死の太陽]を封じることを強制させられている』とね」
「あ……」
強制させられている……それは、まるでこっちが有利に思えるような言い方だった。目から鱗、とはこのことか。
「もう少し踏み込んで言ってみようか?[極死の太陽]を相手は絶対に封じなくてはならない。封じるためには、キミに常に接近し、近い距離を保つ必要がある。……言い方を変えよう。『キミに対峙した時、相手はこちらに接近してくるであろうことが予測される』――[極死の太陽]が無ければキミは、経験で勝る上に距離も好きに調節してくるような自由な相手と戦うことになる。だけど、キミは[極死の太陽]を持っている、という事実のお陰で、相手の自由を奪い、相手の行動の大まかな方針を予測した上で戦いに望めるんだ。……どうだい?ちょっとは希望が湧いてきたかな?」
対策されている、ということは対策を強いているのと同じ……そう考えると、今までの敗戦に対して少し考えが変わる思いがした。
僕の……僕だけが持つ「太陽」は死んでいない。その事実に、心臓がドクン、と跳ねた。




