1-1 2038年にもなって-3
「ぶっははははは!!っげほっげほっ!おいカギノお前何考えてんだ!?まったく、いつも冷めてやがるなぁーって感じだけどたまにこういうのブッコむよなお前!何そのキャラ!だっはははは!!」
自分のキャラを作り終わり、ログイン……ゲームを開始して、「スキルシーカーズリンク」の世界に僕の作ったキャラは降り立った。
ゲームが開始される初期地点でアリマのキャラと待ち合わせた。その時の、アリマが初めて僕の作ったキャラを見た感想がコレだ。
ちなみに、このゲームの世界観は中世ファンタジーみたいな感じで、今いるのはまさに「城下町」という趣な場所だ。遠くにバカデカい城が見える。どうやら、ここがこのゲームに初めてログインした時、降り立つ場所みたいだ。
「いや、深い意味なんてないよ。ただ……普通に作るのもあまりにも味気ないだろ?」
「いや、だからってよぉ……突き抜けたなぁ、オイ!」
――僕は、自分のキャラクターが作れるタイプのゲームなら、必ず女性を選ぶ。そういうことを出来るのも、ゲームならではだと思うからだ。自分が男だから男キャラで、っていうのはつまらない、と思うタイプなんだ。
最初、デフォルト設定から少しいじっただけの、「普通に美人」というだけの女キャラクターを作った時、「なんだかつまんねーな」と思ってしまった。このゲームは本当にキャラクリが充実している。色々試せる。まだ本気でやるとは決めていないし、どうせ長続きしないんだろうけど、それでももう少し、もう少し……と個性が出るように設定を変えていった。
まず、身長を最大の設定にした。さらに、「筋肉量」という項目があったので、それも最大設定に。
――この時点で大分ヤバい感じになった。
顔も中性的、と言うにはキリっとし過ぎな、鋭い印象の設定にしてみた。身体や顔に傷を沢山つけて、肌の色も浅黒くして、なんというか……「アマゾネス」ってやつだろうか……「強すぎる女性」みたいな感じになった。まぁギリギリ美人、あたりを目指しはしたけど。
胸のサイズも最大にしてみたが、このキャラだと、エロい、というより威圧的に見える。
服装も、何というか血の色のように真っ赤な、ビキニアーマーってやつだろうか、そういう感じの露出度の高い鎧のものを選んだが、強そうな猛獣の牙の様な装飾のお陰でやっぱりエロくない。むしろ怖い。
バカでかい。超マッチョ。クソ怖い。そんなキャラが、僕の「スキルシーカーズリンク」での姿だ。
……正直、ここまでやれば中々気に入るもんだ。こんな突き抜けたキャラクターを作るヤツはそう多くいるまい。作ってる最中は正直結構楽しかったなぁ。ちょっと愛着が湧く。
こんな、現実ではありえないようなキャラを自分の分身と出来るのも、こういうゲームの魅力だろう。
「いやーありえねー!怖えー!どういう発想だよそりゃあ!現実のカギノとは似ても似つかんな!」
「何でさ。いいじゃんこういうのも。自分とかけ離れているから楽しいんだよ……そういうアリマのキャラは、リアルとあんまり変わらないなぁ……」
「こーする方が自己投影?ってヤツが出来るんだよ!」
「でも多少……いや大分イケメンになってるみたいだけど。それで自己投影できるの?」
「うっせー!いいじゃねぇか!」
そういうアリマのキャラは、髪を短く刈上げ、明るそうな顔をした男キャラだ。真っ黒い道着のような服を着ている。まさに拳で戦う格闘家、っという姿だ。
「まぁキャラはこの通り、無事作れたし、ゲームを始められた。……で、アリマ。これからどうすればいい?」
先ほどからつなげっぱなしのボイスチャットで問いかける。
「おお、とりあえず……」
アリマのレクチャーを受ける。
まず、メニュー画面を開いて、「ステータス」の画面を出し、「ステータスポイント」を割り振る。
「まぁ最初はテキトーでいいぜ。あとからいくらでもやり直せるからな!」
ステータスの項目はシンプルだった。3つしかない。
まずは「HP」。体力。増えれば増えるほど、攻撃を多く食らっても倒れにくくなる。無くなったらゲームオーバー。まぁゲームでよくある数値の一つだ。
次に「SP」。
「後で詳しく教えるけどよ、このゲームでは戦うために『スキル』を使っていくワケよ。それをどんだけ使えるかってことだな!」
とはアリマの談。「スキル」を使って減少しても、時間と共に結構なスピードで自然に回復するらしいが、このゲームでは「スキル」が最重要とも言える要素で、連続でガンガン使っていく状況がほとんどらしく、上昇させて損の無いステータスだそうだ。
最後に、魔力。
「このゲームでの俺達はな、『魔法拳闘士』って設定なんだ。『スキル』を使って敵を攻撃するんだが、『スキル』の攻撃力が上がるんだ」
要は攻撃力か。他のゲームでは「攻撃力、筋力」と「魔力」は別物になっているのが多いが、このゲームでは一緒の扱いのようだ。
しかし、ステータスの項目が3つだけ、というのは随分少ない気がする。
「洗練されている、と言え!大体他のゲームやってても思わなかったか?『防御力』とか上げるくらいならHP上げればいいじゃん、同じことじゃん、とかよ!」
「……そーいうもんかねぇ……」
「まぁ、こういうわかりやすさもこのゲームの魅力なんだよ!アホみたいな量の数字とにらめっこするより全然気楽だろ?」
……それは、確かに。作りこまれ過ぎて沢山の数値を意識しながらプレイしなくてはいけないゲームもあったが、正直面倒だった。まぁ、そういうのもわかってきたら面白いのかも知れないけれど。
その点、このシンプルさは僕にはありがたかった。イメージしやすいし。
初期のステータスは、HP、SP、魔力の数値は全て500、と表示されていた。そして……
「『ステータスポイント』は1500ある。これを消費して、各項目に自由に割り振っていくワケだな!さっきも言ったけどテキトーでいいぜ最初は!さっきも言ったけどいくらでもやり直せるしな!やっていく内にしっくりくる設定ができてくると思うぜ!」
テキトーで良い、と言われたので、HP,SP、魔力の三項目に、1500のポイントを均等に割り振る。
つまり、全能力が1000になった。
「できたよ、アリマ」
「おっし、次はスキルの設定だ!これもすぐ終わるからな!それが終わればいよいよ戦闘だぜ!」
今のところは簡単だ。どうやら初心者にも優しいゲームらしい。今までアリマに勧められたゲームの中には、一ヶ月くらいしてやっと基本がわかってくる、みたいな難しいのもあったので不安だったが、その心配は無さそうだ……