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1-1 2038年にもなって-2

 「はぁ……」

 

 駄目だった。結局断り切れなかった。

 アリマのマシンガントークに耐え切れなくなった僕は、彼の勧める「スキルシーカーズリンク」というゲームをやることになってしまった。


 「あぁ、あぁ、わかった、わかったって!やる、やるからもう!」

 「おっしゃ!んじゃカギノ、家に帰ったら即ダウンロード&インストールだ!始めたら連絡くれよ!手取り足取りおしえてやっから!」


 ……いつものパターンである。

 まぁ、一応アリマは嫌なヤツでは無い。今回も、この「スキルシーカーズリンク」というゲームについてつきっきりで教えてくれる。……世話焼きなヤツだ。どうして他人のためにそこまでできるんだか。僕にはとてもじゃないが無理だ。


 「その『ホログラム・フォン』さえありゃできるからよ!」


 カギノはそう言っていた。

 ……「ホログラム・フォン」について説明は必要だろうか?

 正直、2038年に生きる僕らにとっては当たり前のもの過ぎて逆に説明が難しいが……

 

 「ホログラム・フォン」略して「ホロフォ」の見た目はただの腕輪だ。

 その腕輪についた電源スイッチを押すと――


 「ようこそ、カギノ・ユウヒ」


 という画面が目の前に現れる。立体映像だ。ホログラム・ディスプレイと呼ばれている。

 腕輪から照射されているものだ。

 この「ホロフォ」、昔で言えば「パーソナルコンピューター」とか「スマートフォン」に近い。しかし、その性能は段違いだ。その登場は2030年。

 旧世代、通信機器として使用されていた「スマートフォン」と入れ替わるように世間に台頭してきた「ホロフォ」は、それまで物理ディスプレイを使っていた旧世代の情報処理機器と比べ、立体映像を照射してそれをディスプレイにする、という画期的な技術を使用していた。

 しかも軽量で、なおかつ、その当時の「スーパーコンピューター」……普及価格帯の計算機の性能では実行不可能な超大規模な計算処理が目的としていたそれと同レベルか、それ以上の情報処理能力を有していた「ホロフォ」はまさに、「2030年のテクノロジーの大革命」と言われるとんでもない代物だ。

 「ホロフォ」の登場で今まで使われていた「パーソナルコンピューター」や「スマートフォン」は無用になり、時代から姿を消すことになる。

 その「ホロフォ」の技術を応用した旧世代よりさらに飛躍的に性能が向上した「スーパーコンピューター・ネクスト」と呼ばれるものもあるらしいが、大体の情報処理は「ホロフォ」で十分過ぎるので、ほとんど製造されていない。

 今や、情報処理と言ったら「ホロフォ」。仕事もエンターテイメントもこれ一つ。

 

 何故そんな技術が実現できたのか?そんな事を説明してたら日が暮れる。というか僕にもわからない。

 まぁその登場から8年経った今でも偉大な技術である、ということは間違いない。

 VR技術が進歩して、2030年以降のゲームソフトの殆どがVR技術、なんて大層なものを駆使できるようになったのは、ひとえにこの「ホロフォ」のお陰、という面もある。


 まぁ、「ホロフォ」についてはもういいだろう。とりあえず、とんでもないテクノロジーの結晶体とでも考えてもらえれば結構だ。

 「ホロフォ」から照射された立体映像、ホログラム・ディスプレイに手を触れ、操作していく。

 

 ネットに接続。「スキルシーカーズリンク」を検索。その公式ホームページに移動し、ダウンロードを開始する。

 今の時代のネット回線は「ホロフォ」登場前と比べて、速さが段違いだ。どんなサイズのファイルだろうと、ネットから何かをダウンロードする際に、10分以上待つことは無い。

 ダウンロード中の僅かな時間を利用して、ゲーム用の準備をしていく。「ホロフォ」本体、腕輪のボタンをもう一度押して、立体映像、ホログラム・ディスプレイを二つにする。それを操作して「キー・ボード」を選択すると、ホログラム・ディスプレイの形が変化して、丁度旧世代の「パーソナルコンピューター」で使われていたようなボタンがずらりと並んだ板状のものになった。

 ゲームをする時はこういうボタンが多く並んだものがあった方がやりやすいので、いつもこうしている。

 ボタン数も配置も、実物では無いがゆえに、自由に設定できるところが売りだ。


 さらに、「ホロフォ」本体のボタンをもう一度押して、ホログラムディスプレイをもう一つ増やす。

 それも操作して、「ボイスチャット」を選択し、登録されている連絡先、「アリマ・サイ」を選択する。

 すると、アリマの声が聞こえてきた。ボイスチャット開始だ。

 

 「よお!やってるか、カギノォ!」

 「アリマ。……まぁ仕方なく、ね。今ダウンロード……は今終わった。……うん、よし、インストールしてるよ」

 「そーかそーか!もうすぐだなぁカギノォ、オイ!」

 「……はぁ……」


 インストールも瞬く間に終了し、「スキルシーカーズリンク」を選択、起動する。


 「スキルシーカーズリンク」のジャンルを正確に言えば「MMOアクション」だ。MMOとは、大規模多人数型オンライン…Massively Multiplayer Onlineの略で、ネットを通じて大人数でプレイするコンテンツだ。

 「スキルシーカーズリンク」はその中でも、アクションゲーム、というカテゴリの中に入っている。

 ……まぁ、単純にネットを通じて色んな人と遊べるよ、という認識でいいだろう。要はオンラインゲーム、というこれ自体は昔からあるゲームの形だ。

 

 「――今起動した。まず何をすればいいんだ?」

 「キャラクリだな!このゲームキャラクリも結構力入ってるぜ!さぁカギノよ、自分の思い通りに、妄想のままに、自分の分身、アバターを作れっ!」

 「はいはい……」


 キャラクリ。キャラクタークリエイション。これからゲームで自分が操作する、ゲーム上での自分の分身、「アバター」の容姿の設定だ。

 性別、体格、髪型、服装、顔の各パーツ……とかなり詳細に設定できるみたいだ。本気で作ったらかなり時間がかかりそうだな……


 「俺に構わず丹精込めて作ってやれよぉ!待ってるからな!」

 「……心配しなくてもそう時間はかけないよ。大体本気でやり始めるかどうかわかんないっていうか、多分やらんし」

 「そーいうこと言うなよなぁ!」



 はぁ。疲れるなぁ。確かにクリエイションの機能は充実してるから、ゲームが好きだった頃に出会えればハマってたかも知れないが……



 まぁ良い。適当に作るか……

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