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3-1 《?今回はマジ?》-2

 ……あの「サエ」からダイレクトメッセージが来た、とカギノから言われた時は、コレだ、と思った。どうせ「ユウ」の[極死の太陽]に興味があるって話だろうな、と思った。

 あの「グランドチャンピオンカップ」決勝を見てから三ヶ月と少し……必死で鍛えてきた。毎日のように「極みの闘技場」でPvPの技術を磨いてきた。その成果を、「サエ」相手に試せる絶好の機会がやってきたのだ。

 

 半ば強引に、対戦を申し込んで、俺は「サエ」と向かい合った。


 試合内容は、あのチャンピオン、「サエ」を相手にしたにしては、案外悪く無かったんじゃないか、と思う。途中まで完全に俺の優勢だったしな。結局最後にボコられたとはいえ……あれは途中まで勝ってたから、思わず油断しちまっただけで……

 確かに、油断を誘うように動けるその度量……サエは強すぎる。だけど……


 (そこまでしねーと俺には勝てなかったってワケだ……)


 そうも感じていた。「サエ」は決して、届かない場所にいるワケじゃない。もっと経験を積んで、もっと適格に行動できるようになれば、十分勝負になる。俺の戦法は間違っていない……

 それが分かって、満足した。これからも今までと同じように技術を磨いていけばいい。


 

 その後の「ユウ」と「サエ」の戦いはほぼ一方的だった。[極死の太陽]があればワンチャン、と思ったが、そう上手くはいかなかったな。

 [極死の太陽]すら攻略する「サエ」の姿に、やっぱこのゲームは持ってるスキルよりプレイヤー自身の技術の方が大事だよな、と納得した。

 

 だから、俺の方が「サエ」とは良い勝負が出来た筈、だった。


 なのに。なのになのになのに……


 「ん、あぁ……あの『鞭』面白いですよね。ハイ、楽しかったです」


 「サエ」は俺にはそれだけしか言ってくれなかった。「ユウ」にばかり夢中になって話しかけて……


 ――なんでだよ。お前どんだけ俺の戦法でHP削られたと思ってやがる。

 もうちょっとで危険域だったぞ? 

 そんな俺より、その何も出来なかった「ユウ」の方がお前にとって興味深いのかよ。

 

 「ユウ」は何もできなかった。

 「ジクト」は「サエ」と戦いになっていた。なんだったら最初はこっちの方が優勢だった。


 「『ユウ』さん、『ユウ』さん、本当に楽しかったですよ、ええ。何も出来なかった?いえ、あの一瞬の意地、闘志には思わずブルっと来てしまいました。ええ、ええ……やはり貴方は、素晴らしい」


 意地?闘志?んなもん画面越しにわかるもんかよ、何言ってんだコイツ。――結局アレだろ?「サエ」、お前も[極死の太陽]の噂を聞いて見てみたかったミーハー……そうなんだろ?


 「あ、『ユウ』さん!もしよろしければ、今度()()で会いませんか、リアルで!」


 ふざけんな。いい加減にしろよ。あからさまにハブにしてきたよ、コイツ。

 


 「サエ」、お前までそうなのかよ。

 [極死の太陽]がそんなに気になるのかよ。

 リアル、オフ会とはまた大きく出たじゃねえか、ええ?


 

 俺だって……俺だって、お前に追いつきたくて、必死で鍛えてきたのに……

 そんな俺よりも、ちょっと珍しいスキル手に入れただけの「ユウ」との戦いの方が良かったっていうのか?

 それこそ……リアルで会いたくなるくらいに。



 ……どうして、こうなっちまったんだろうな。

 やっぱ、アレか。


 [極死の太陽]、か……


 色々言ってて、結局ソレなんだろ、「サエ」?もし俺の方が[極死の太陽]を持っていたら、俺の方にあんな風に語ってくれたんだろ?……ただのミーハーじゃねえか。

 

 あーあ、ゲンメツだわ。「サエ」も結局そういう感じなんだ。へー。

 いやー憧れてたんだけどなー。そんなヤツだったんだ。じゃあいいよ、もう。




 ――ガァン!!


 また気づいたら自販機を蹴りつけていた。

 

 おいおい、「じゃあいいよ、もう」なんだろ、俺。何をそんなイラついてんだ。

 まぁ、いいじゃねえか、ミーハー気質ぐらいよ。凄いもんな、[極死の太陽]。消費SP500。今まで無かった大技。そんなの持ってるヤツいたらそりゃ気になるよ……それこそ、俺なんかより。だから……


 「ん、あぁ……あの『鞭』面白いですよね。ハイ、楽しかったです」


 ――だから、俺なんかにはそんなテキトーな言葉だけ、ってのが妥当、ってやつだろ?


 「う、うううぅぅ……」


 あの「グランドチャンピオンカップ」決勝戦の記憶。

 憧れて、本気になって、必死になってSSLに取り組んだ三ヶ月と少しの記憶。

 「サエ」や「ゴウカ」程の技術を手に入れること……それを諦めきれなくて、必死にSSLに向かい合った。

 ゲームにこんなに本気になったのは初めてだった。俺は来る日も来る日も戦って、その技術を磨いてきた。 


 その成果が……くそっ。

 

 いやいや、俺だって大人だ。……まだ三ヶ月と少しじゃねえか。そんなんじゃまだまだだろ?もっと頑張ってみろよ、だとか。

 [極死の太陽]は規格外レベルのスキルなんだからさ、そりゃチャンピオンでも気になるだろうよ、だとか。


 俺は必死になって、嫉妬……そう、嫉妬だ。「ユウ」への嫉妬を拭い去るために、頭の中で言葉を転がした。

 

 だけど……


 「ん、あぁ……あの『鞭』面白いですよね。ハイ、楽しかったです」

 「『ユウ』さん、『ユウ』さん、本当に楽しかったですよ、ええ。何も出来なかった?いえ、あの一瞬の意地、闘志には思わずブルっと来てしまいました。ええ、ええ……やはり貴方は、素晴らしい」


 ――駄目だ。我慢しろよ。耐えろよ。みっともねえだろ。クソッタレが。

 SSLでの記憶が、俺の頭の中でぐちゃぐちゃになっていくような感覚。

 酒を飲み過ぎたワケでもねえのに、何だか吐きそうだ。

 


 ――ガァン!!!


 一際大きく音を立てて自販機に蹴りを入れて……そうやってモノに当たってみても全然すっきりしなくて……


 俺は途方に暮れて、住んでいるアパートへの帰り道を、誰かの同情を誘うようにトボトボと歩いて行った。


 ――なんでこうなっちまったんだろうな。なんで俺は……ここまで、ここまで……

 大人の癖に自分の感情を抑えきれずに、無様でクソッタレな気持ちになってるんだ――?



 なぁ、たかがゲームの話だろ、おい、アリマ・サイよぉ……


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