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2-4 太陽に引き寄せられて-3

 3人で受け付けカウンターに向かう。まずは「ジクト」対「サエ」だ。この闘技場での戦いは、制限をかけなければ、他の誰でも観戦できるようになっているのだが、「サエ」さんが超有名プレイヤー、ということも考慮して、あまり騒ぎにならないように、僕……「ユウ」以外には戦いを観戦できないように設定を変えて制限した。


 なんせ今も、


 「『サエ』戦うのか?」

 「見てえ」

 「見れるようにしてくれよ~」


 などとチャットで好き勝手に騒ぐプレイヤーが大勢いるし。まぁ「サエ」さんはそんなの慣れっこだとは思うが、出来るだけ集中できる環境で戦いたい、とのことだったので、観戦には制限をかけることになった。


 ごめんよ、皆。気持ちはわかるけど……



 PvPが行われる専用フィールドは、あの「グランドチャンピオンカップ」の動画で見たようなステージのような場所だ。周りの観客席が無いのが大きな違いではあるが。


 そこに「ジクト」と「サエ」が向かい合わせで立つ。


 

 「んじゃあ行きますよ、『サエ』さん!」

 「……はい。よろしくお願いします、『ジクト』さん」


 


 ガァン、というゴングのような音が開始の合図だ。それと同時に二人が動き出す。

 

 先に攻撃を仕掛けたのは、「ジクト」だった。


 「これが俺だけのスキル![毒手:蛇の鞭]だっ!」


 そう叫びながら、「ジクト」は手から紫色の光る糸状の物を出現させて、鞭のように振るった。

 バシン、と床を鞭が叩く音がする。「ジクト」の初撃はあっさり躱された。


 「これだけじゃないんだよっ!」


 もう一度同じように紫色の光る糸を出して振るう。


 「……っ!?」


 「サエ」さんの微かに驚いたような声が聞こえた。


 鞭の動きが一度目と全く違ったのだ。同じように回避しようとしていた「サエ」さんは、その2回目の鞭に当たってしまった。

 先制したのはなんと「ジクト」だった。


 「よっしゃ先制!どんどん行くぜっ!」


 バシン、バシンとその度に軌道を変えながら鞭が繰り出される。

 なんだろう、あのスキルは。同じスキルの筈なのに、毎回鞭の動き方が違う。


 急いでホロフォを操作して新しい画面を出し、「SSL研究所」にアクセスし、[毒手:蛇の鞭]について調べてみた。

 それによると、このスキルは設定されたボタンを押してから、離すまでの時間の差によって、その動きを変えることができるらしい。ちなみに、ボタンを押し続けて「溜める」ことによって、その時間に応じた強力な攻撃を繰り出すこともできるのだとか……


 「うらうらっ!このスキルだけじゃないぜ、俺は!」


 雷の矢。氷の竜巻。風の刃。炎の弾丸……

 そんな風に表現できそうな魔法を次から次へと放つ「ジクト」。

 どうやら、「ジクト」の戦法は、接近戦よりも「鞭」の届く中距離戦に重きを置いているらしい。

 

 次々に繰り出されるスキルを巧みに躱している「サエ」さんだが、このままでは追い込まれる。実際に――


 「よっしゃ、また当たった!」


 変幻自在の「鞭」が、少しずつ「サエ」さんに当たるようになっている。画面上部に表示されている二人のHP……その片方の「サエ」さんの方だけが、少しずつ減っている。しかも、[毒手:蛇の鞭]には当たった相手に「毒Lv5(Lvが高ければ高い程効果が高い。Lv5となれば最高級の効果)」という状態異常を付与する特性を持っていて、その毒によっても「サエ」さんのHPはどんどん減っていく。

 

 これはもしかして、もしかすると……


 さっきから一方的にスキルを連発している「ジクト」に対し、「サエ」さんは攻撃をかわし続けているだけで精一杯に見える。HPもそろそろ危険域直前だ。

 「ジクト」は魔法と「鞭」を織り交ぜた、相手を寄せ付けないスタイルを崩さない。魔法で追い込んで――


 「ここだっ!」


 ――「鞭」で打つ。そのスタイルは功を奏し、確実に「サエ」さんを追い込んでいる……様に見えた。


 「そこっ!」


 またも「鞭」が飛んでくる。しかし……今度は躱した。

 

 「今回はダメだったか……もう一回だ!」


 またも魔法を打ち込んでいく「ジクト」。

 ――その「隙」は、僕が第三者だったから気付いたものだったのか。

 

 「鞭」で打とうとする。躱される。魔法で追い込んで、また鞭で攻撃する。躱される。


 「ああ……?」


 躱される頻度が多くなって、異変に気付く「ジクト」。その頃には、僕にははっきりとわかった。

 

 「サエ」さん……彼女は敢えて「ジクト」に好きに攻めさせて、それなりに攻撃を食らって()()()、「上手くいっている」と「ジクト」に錯覚させたのだ。

 結果、「ジクト」の攻撃は「魔法で追い込んで、『鞭』で攻撃」というだけの、ワンパターンな攻めになってしまっている。追い込み方も、『鞭』での攻撃の仕方も、読みやすい、荒いものになってしまっている。

 

 ……そう口で言うのは簡単だが、「上手くいっている」と錯覚させるまでに攻撃させ、負けない程度に攻撃を食らい、追い詰められているように見せかけるその度量は間近に見て凄まじい。

 

 そして、遂に反撃の時が来た。


 何度目かの「鞭」を完全に見切った「サエ」さんは、回避と同時に「ジクト」への距離を一気に詰めた。

 

 「う、うおお!?」


 慌てて「ジクト」が「鞭」を振るうが、最初当たっていたのが嘘のように躱される。……恐らく、数を打たせることで、「サエ」さんにとっても未知のスキルだった「鞭」を見切ったのだろう。

 しかも……


 「あっ……!SP足りねぇ!」


 そう、さっきまでの攻めで、「ジクト」はSPを大量に消耗しているが、「サエ」さんは最低限の回避に徹して、SPを温存している。SPはかなりのスピードで自然回復するが、スキルを凄まじい勢いで連続使用する接近戦では……


 「くそ、やられた!ジリ貧だぜこいつは!」


 「サエ」さんが炎を纏ったタックルを繰り出す。それに直撃してよろめく「ジクト」。そこへの追撃の光を纏ったストレートは回避したものの……


 「やべえ、ここで一気にカタを付ける気か!」


 温存していたSPを存分に使い、キャンセルによるフェイントを駆使しながら「ジクト」を追い詰める「サエ」さん。「ジクト」はなんとかその怒涛の攻撃から逃れようとするが、対抗しようにもSPが足りない。もう完全に流れは「サエ」さんだった。……最早逃れようがない。


 「……駄目だ。チクショウ……」


 完璧に捉えた飛び膝蹴りから、スーパーマンパンチ、そして雷撃を纏った踵落しが決まり……


 

 ガンガンガン、とゴングを鳴らすような音が響き――



 「勝者:サエ」



 ……という通知が画面に表示された。


 「チクショウ、やっぱ強すぎる……」


 計算され尽くしたような逆転劇。ぐったりとするアリマ。そして……「サエ」さんが僕に語りかけてきた。


 「じゃあ……次は『ユウ』さんです。……よろしくお願いします」


 

 鍛えてきた、と言っていたアリマですら勝てなかった。

 始めたばかりの初心者の僕に、何が出来るって言うんだろう……


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