2-4 太陽に引き寄せられて-2
僕らがログイン直後に降り立つ城下町、その中心に――「極みの闘技場」がある。
今までこのゲームでプレイヤー対プレイヤー……PvPについて触れてきたけれど、実際ソレができるのはここしかない。別にいつでもどこでもできるワケではないのだ。
「極みの闘技場」に入り、受付で戦う相手や形式を設定して、双方の準備完了が確認できれば、専用フィールドに移動し、勝負が出来るようになる。
「極みの闘技場」は大勢のプレイヤーで賑わっていた。
「人多いな……」
「まぁな。PvPはこのゲームの人気コンテンツだしな。日々猛者共が腕を競い合ってるワケよ。俺も入り浸ってるぜ」
アリマは慣れているようだ。
「それで?『サエ』から連絡はあれから来たのか?」
「いや、まだだよ。まだ着いてないんだとおもうけど……」
「サエ」さんからのダイレクトメッセージに返信した後、すぐにその返事が返ってきた。
「サエ」さんも丁度今ログインしていたらしく、すぐに合おう、ということになった。
その待ち合わせ場所がここ、「極みの闘技場」である。
「……でも、なんでこんな混むところを待ち合わせの場所にしたんだろう……」
「さぁなぁ?でも俺にはなんとなくわかるぜ?」
ニヤニヤと笑うアリマ。何か思い当たるところがあるのだろうか。
すると、唐突に通知が来た。
「『サエ』からボイスチャットの申請をされています。了承しますか?」
「っ!来た!」
了承して、「サエ」さんとのボイスチャットを開始する。
「こ、こんにちは」
緊張しながら挨拶する。
「……こんにちは。すみません、こんな混んでいるところを待ち合わせ場所にして。今、どこにいらっしゃいますか?」
凄く綺麗な声だった。まぁボイスチャットの設定を変更すれば声なんていくらでも変えれるから、リアルでもこんな声かどうかはわからないけれど。自分も変えてるしね、声。
「えっと……受付カウンターのすぐ横です。名前出てるだろうからわかると思いますけど、そこにいる身長がすごく大きい女戦士が自分……『ユウ』です」
「あ、見えました……ふふ、すごく強そうなキャラですね。今行きます。……隣にいらっしゃるのは?」
「あ、そいつは友達の『ジクト』です。貴方に会いたがってたので……強引に着いてきちゃいました。よろしければ、彼も合わせて『グループボイスチャット』をお願いできますか?」
「……わかりました。こちらから『ジクト』さんに申請します」
少しして、アリマもボイスチャットに参加した。ボイスチャットの設定を変更することで、他人数でボイスチャットが出来るようになるのだ。
「うお、来た来た!こんちはっす、『サエ』さん!『ジクト』って言います、ヨロシクです!」
「……『サエ』です。『ジクト』さん、宜しくお願いします」
そんな会話をしていると、向こうから僕ら二人のキャラクターに向かって走ってくるキャラクターが見えた。
白いローブのような格好に、長く美しい黒髪。あの「グランドチャンピオンカップ」の動画そのままの姿の「サエ」さんの姿が見えた。
「うおお、本物!本物の『サエ』さんだ!感動だぜ!」
「ちょっとあ……『ジクト』、失礼にならないようにしてくれよ!」
「……構いませんよ。今更な話です」
……確かに、チャットログに、
「あれ『サエ』じゃね?」
「うわ、本物!?」
「すげー!」
等と、好き勝手に騒いでいるようなコメントが表示されている。
「自慢というわけではありませんが、それなりに有名になってしまったので……」
「それなり、なんてもんじゃありませんよ!」
アリマが声を張り上げる。
「去年とおととしの『グランドチャンピオンカップ』の優勝者!史上初の連覇達成!んでもって貴方にしか使えないスキル、[極みの拳]!貴方はこの世界で絶対一番有名なプレイヤーですよ!」
「あぁもう、いい加減にしなよ『ジクト』!……えーと、それで、話っていうのは……」
「……はい。実は……」
そこで少し躊躇したように言葉を切る。
「……どうしました?」
「い、いえ……実は、その……『ユウ』さん。貴方と……戦ってみたいな、と思いまして……」
「……え?」
「……これは来たぁっ![極死の太陽]の『ユウ』VS[極みの拳]の『サエ』!」
「『ジクト』うっさい!……え、えっと……なんでですか?自分、実はまだまだ初心者で……絶対、まともに相手できませんよ……?」
さっきアリマが言っていた展開に本当になってしまってかなり焦ってしまう。
「え、えーと……確かに初心者の方、という噂は聞いてはいたのですけれど……その、[極死の太陽]……そんな特別なスキルを持った人ってどんな人だろう、って思うとですね、もう我慢が出来なくなってしまい……こんなお願いを……す、すみません!」
チャンピオン、という割に凄く腰の低い態度だった。
「初心者、ということはわかっています。……あの、誤解されているかも知れませんが、私は別に『ユウ』さんが気に食わなくてこんなことをお願いしているんじゃありません……ただ、本当に、気になっただけなのです。なんでしたら、[極死の太陽]をお使いにならなくても結構です。一度、貴方と戦ってみたい。……変に思われるかも知れませんが、私、プレイヤーの事は戦いで知るのが一番だと思っていて……す、すいません!」
「いやいや、わかります、わかりますよ『サエ』さん!」
アリマが会話に割り込んでくる。
「対戦ってのはすげぇコミュニケーションの手段なんですよね!あぁ、この人はこの状況でこんなことしてくるんだ、こう仕掛けたらこう返してくるんだ、なんてね!もう相手の情報と自分の情報がすげえ勢いで交換され合うわけですわ!もうそれで性格もなんとなくわかっちゃたり!ね、そうでしょ!?」
「え、ええ……そんな感じ、です……」
ホントかよ……アリマの勢いに「サエ」さんはタジタジになっているようだ。
「で、ですねぇ、「サエ」さん!あなたのお願いを聞く前に、俺のお願いも聞いてほしいんですけど!」
「は、はい……なんでしょう……」
「この俺、『ジクト』とも戦って頂けないでしょうか!?」
「……はい?」
……凄い勢いだ。もう勢いだけで自分の要求を通そうとしてやがる。
「俺もですねぇ、あの『グランドチャンピオンカップ』見てシビレまして!あれから鍛えてきたつもりなんですよ!それがどれだけ通用するか、試してみたいんです!」
「は、はぁ……」
「俺と戦ってくれたら、『ユウ』とも戦わせてあげますよ!」
……なんで僕が戦うかどうかの権利がアリマにあるように喋ってんだろうか。
「え、えっと……『ユウ』さんはそれでいいんですか……?」
「えーと。ご期待に添えられるかどうかはわかりませんけど、戦うのは構いませんよ……というか、『サエ』さんはこれでいいんですか?」
「……はい。構いません。……では、『ジクト』さんからお相手します」
「よっしゃ来た!」
……この強引さは見習うべきだろうか。なんだか複雑だ。
――そうしてここに、「サエ」さん対「ジクト」、それとこの僕、「ユウ」の戦いが始まることになった。
……なんでこんなことになっちゃったかなぁ……




