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2-4 太陽に引き寄せられて-1

 「ふああ……」

 「カギノ、眠そうだなオイ!SSLにそんなハマったか?」

 「まーね……昨日はお前に電話した頃から日付が変わるまでぶっ続け。気づいたら日が変わるとこだったよ。んで、風呂だけ入って、即寝たんだけど……駄目だ、睡眠時間8時間切ってると僕駄目なんだよなぁ……眠い……」

 

 昨日、SSL内で、「果て無き海の砂浜」に辿りついた時には、既に日付が変わる直前になっていた。

 本当に、あれだけ夢中になってゲームをしたのはいつ以来か……


 「もうホント駄目だ、アリマ。僕は今日の授業中は眠ることにする。ノート頼んだ」

 「現実のことおろそかにするなって言ったのはどこのどいつだ、オイ。まぁ楽しんでるんならいいけどよ」

 「そういやアマノさんとはどーなった?昨日のデート、上手くいった?」

 「……おぉ!完璧完璧。ばっちし仲直りしてやったぜ!」


 その言葉に一安心した。良かったなぁ。 


 「そりゃ良かった。なぁ、アリマ、今日は空いてる?大学終わったらSSLやろうよ」

 「マジにハマってるなぁ……何かあったのか?」

 「うーんと……多分、『リクワ』さんに会ったことが一つかなぁ……」

 「……『リクワ』!?『SSL研究所』の!?」

 「うん。[極死の太陽]の検証ついでに色々語ってくれてさ。やっぱアリマも知ってるの、『リクワ』さん」

 「当ったり前だろーよ!『SSL研究所』っつたらSSLプレイヤーにとっちゃ必須攻略サイトの一つだぜ。……最近チェックしてねーけどよ……まぁあの人なら新スキルが出りゃあその持ち主にすぐコンタクト取ろうとするだろうが、随分早かったんだな」

 「うん。もう「太陽」を手に入れた次の日にはダイレクトメッセージ届いてて、それでそのまま検証してもらった。まぁ、あの人が持ってる[スカウター]ってスキルじゃ「太陽」は検証できなかったんだけどさ。その時に、色々話したんだ。なんというか、SSLはゲームだけど、「たかが」って言われるようなゲームじゃないって……」

 「……そりゃどーいう意味だ?」

 「うーん……」


 寝ぼけた頭には、あの時の「リクワ」さんの言葉を上手く伝えられる気がしなかった。


 「ごめん、いま頭がボーっとしてて、上手く話せない」

 「おい」

 「まぁまた別の機会に」

 「気になるんだが……」

 「……あと、動画を見たんだ。去年の『グランドチャンピオンカップ」の決勝戦の動画」

 「お、ソレを見たのかカギノ!オレ、それリアルタイムで見てたぜ。凄かったよなぁ!」

 「アリマも見てたんだね。……いやぁ、あれ見てホント、感動したよ。凄かったね、あの二人」

 「あぁ、アレはアツかった!目まぐるしい攻防、『ゴウカ』の一瞬の隙をついたコンボ、んでもって『サエ』の崖っぷちからの逆転劇!思わず『うおーっ!!』っつって大声だしちまったから、隣の部屋の奴から壁ドンされたわな……懐かしいぜ」

 

 ちなみに、アリマも僕と同じく一人暮らしだ。大学入学と同時に故郷の田舎から出てきたんだとか。

 最近のアパートの防音機能はそうとうな物、らしいんだが、それでも隣人からうるさがられるくらいの大声を出してしまった、ということか。興奮し過ぎだろ、と思うが、アリマらしいとも言える。


 「俺もあの戦いを見た頃から本気でSSLに取り組むようになったもんだ。そうそう、『リクワ』とも会ったことあるぜ、俺は」

 「アリマも?」

 「おう。俺もSSL内で俺しか持っていないスキルってヤツを持ってるからな、一応」

 「……そうだったんだ……」

 「へ、自分だけとか思ってたんじゃねーの?俺だってやりこんでんだぜ。……まぁお前の[極死の太陽]程じゃねーけどよ。[毒手:蛇の鞭]ってスキルを持ってんだよ、俺も。そん時に、『リクワ』からダイレクトメール来てな。そんで、会って、検証してもらったなー」

 「あの人新しいスキルが見つかったら即飛んでいくんだね……」

 「すげえ情熱だよなぁ」


 あの人は本当にSSLが好きだな……そんな人の言葉は確かに僕の胸に響いた、と思う。

 それと、あの「グランドチャンピオンカップ」の壮絶な戦い……主にその二つが今、僕にSSLに入れ込ませているんだろう。


 「まぁ、そういうことがあって、僕もSSLちょっと本気でやってみようかなーって」

 「お、いいねぇ、今までとは全然違うノリじゃねーか!」

 「それで、結局アリマ、今日空いてるの?」 

 「……ああ!やろうぜ、大学終わって帰ったら即ログインだ、つーかお前んち行っていいか?」

 「構わないよ。じゃあ今日は僕の部屋でSSLだ」

 「……よっしゃ!決まりだな!」


 


 そうして、大学が終わった後、僕とアリマは、僕の部屋で各々ホロフォからSSLを起動、ログインすることになった。

 

 「いやー、こういうのもいいなオイ。ボイスチャットいらねーし」

 「まぁ、こうやって顔突き合わせてプレイするのも新鮮だよねぇ」


 今日は、大学から帰る途中のコンビニで買ってきた菓子等をつまみながら、二人でSSLに興じる予定だ。

 

 「それじゃ今日は何するよ、『ユウ』?」

 「早速プレイヤーネーム呼びかよ。面と向かってされるとなんだか恥ずかしいな……ちょっと待って、ダイレクトメッセージの処理するから」

 「まぁだ何か届いてんの?」

 「うん。『[極死の太陽]の情報出せ』ってことを、飛び切り乱暴な口調で書かれたメッセージが何件か」

 「そりゃ災難だなー……あんま酷いやつがあったら運営に報告するなりしろよ?」

 「うん。……うあーこれも酷い。『どうなっても知らねーぞ』って何だよ……『リアルの個人情報特定されてもいいのか』……これマジ?」

 「うーん……昨今のセキュリティーは高度だからなぁ。そんな簡単にリアル特定とかできねー時代だよ、今は。昔はどうだったか知らねえが。ただの脅しじゃね……?」

 「そっか……じゃあこれも無視……って、あぁ!?」

 「うおっ!?なんだいきなり大声出して!?」

 

 ……とんでもない人物からダイレクトメッセージが来ていた。


 「――『サエ』……」

 「は?」

 「『サエ』さんからダイレクトメッセージ来てる……」

 「それって、あの?」

 「『グラントチャンピオンカップ』の優勝者の……」

 「その、『サエ』か?マジかよ、なんて?」

 「『会って話がしたい』だって……」

 「マジかよ!?オイ、行こうぜ!……ってどこに行けばいいんだ?」

 「『極みの闘技場』で待ち合わせしよう、って……」

 「返信しろよ!こんなチャンス滅多にねぇ、『会いましょう』って返信だ返信!つーか俺も会いたい!てか一回戦ってみてぇ!」

 「え、えぇ!?『サエ』さんと!?」


 何を言い出すのか、コイツは。


 「俺だってあの決勝戦見てから鍛えてきたんだよ!どこまで通用すんのか、試してみてえ……よし。俺もお前の付き添いでついていく。んで、『サエ』に頼みこんでやるぜ、『俺と勝負してください』ってな!」

 「……そんだけ戦いたかったんなら、それこそ『サエ』さんに君からダイレクトメッセージ送ればよかったんじゃ……」

 「ば、馬鹿野郎、こーいうのは勢いってか流れだ!なんつーか、直接勝負の申し込みするのは気が引けるが、こういう感じでなんかのついで感覚なら言い出し安いっつーかなんつーかなぁ……!」

 「……まぁ、何かきっかけがないと言い出しづらい、ってのはちょっとわかるけど」

 「……きっと『サエ』もお前の[極死の太陽]に興味があるんだろうよ……『サエ』自身も[一筋の黄金]とか[極みの拳]とかってSSL内でアイツしか持ってないスキルの持ち主だからよ……何か感じる所があるんだろうぜ」

 

 [極みの拳]。消費SP80という、僕の[極死の太陽]に次ぐ規模のスキル……

 僕もそれは、ちょっと見ときたいかも。


 「[極みの拳]も、見たいな、僕は」

 「おう、見せてもらえや!あのスキルはな、あの決勝戦に勝利することが条件で手に入る、っつーレア中のレアスキルらしいぜ。[極死の太陽]程じゃねーにしても、すげぇスキルのハズだ……よし」


 そこで言葉を切って、アリマが決意したように言い出す。


 「『ユウ』とこの俺、『ジクト』で……『サエ』に会おうぜ!んでもって、二人で決闘を申し込んでやろうじゃねーか!」

 「――……え、僕も戦うの!?」

 「おうよ![極死の太陽]VS[極みの拳]とかよくね!?俺、見たいなー!」

 「僕にはまだ早いよ……っていうか、『サエ』さんがどんな用事で呼び出してるのかもわかんないし……」

 「その用事が終わったら無理やりにでも決闘を申し込もうぜ!」

 「……その強引なくらいの勢い、見習うべきなのかな……」


 ――なんだか大変なことになってしまった。とりあえず、「サエ」さんのメッセージに了解の意志のメッセージを返信した。

 あのチャンピオンが、僕に何の用だろうか。……あと本当にアリマは「サエ」さんに決闘を挑むのだろうか。そしてそれに僕も巻き込まれるんだろうか。



 この騒ぎの中心にはやはり、僕の「太陽」が関係しているんだろう。

 ――つくづく、とんでもないものを手に入れてしまった。そう思わされてばかりの毎日だ。やれやれ。


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