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2-3 探求者は今日もゆく-4

 「――よし、次だ……」


 僕のキャラクター「ユウ」は草原を駆け回っている。「初心の草原」を北に抜けると、画面が切り替わり、「光り輝く草原」に入った。今日はひたすら北に進んでみることにした。さっきの動画を見た興奮がまだ残っている。とにかくSSLがやりたい、もっとSSLのことを知りたい――そんな思いで、フィールドの探索をしている。


 「沢山の数のフィールドをただただ踏破していくだけでも楽しいよ」


 そう「リクワ」さんも言っていたことだし。まずはフィールドを踏破しまくって、経験を積もう。

 出会ったモンスターと戦いまくろう。

 そんなことを考えていたら、おあつらえ向きに一匹のモンスターが目に入った。


 ソイツの真上には「スライム」と名前が表示されていた。RPGでよくいる感じの不定形のねばっとした液状の体を持つモンスターだ。


 「よし、やるか……!」


 「スライム」の目の前に「ユウ」を移動させる。戦闘開始だ。


 「――アリマも来られれば良かったんだけどな……」


 ふと、さっきの出来事が頭をよぎった――




 「すまん!カギノ!今日も無理なんだ!悪い!」

 「えぇ?なんかあったのか?」

 

 あの動画を見てすぐに、興奮に後押しされるように勢いよく悪友のアリマに連絡をとって、一緒にSSLで遊ぼうと誘ったら、昨日に続いてまたも断られた。


 「なんかあった?」

 「いや急にな、ミナリが『最近構ってくれない!』とか言い出してよぉ……急遽デートの予定が入っちまった」

 

 ミナリ。フルネームはアマノ・ミナリと言う。アリマの恋人だ。

 アマノさんは何を思ったのか、大学2年目の最後あたりにアリマにアプローチをかけまくっていた。そうやって好かれるのはアリマにとっても満更でも無かったらしく、晴れて二人は恋人同士となった。

 

 「アリマ……お前まさかゲームばっかしててアマノさんほったらかしにしてたの?」

 「い、いやぁ……ははは。いやだってよ、SSL面白いじゃん?お前もハマったらしいじゃん、さっきの口ぶりだと」

 「……はぁ。確かに面白いよ。でもそれで現実の事をおろそかにするのはどうかと思う」

 「うぐっ」

 「わかった。今日は一人でプレイしとくよ。アリマは精々アマノさんのご機嫌取りを頑張ることだね」

 「ううぅ……すまん。折角誘ってくれたのによぉ……昨日も断っちまったし……」

 「いいから。また遊ぼうよ、アリマ。とにかく今はアマノさんに構ってあげるんだ。……というか、あれだけアリマの事を好いてくれる人とかそうそういないと思うから。つまんない理由で別れたりするんじゃないよ」

 「お、おうよ」

 「んじゃ。頑張れよ」

 

 通話を終了した。まったく、アリマは……ゲームにハマり過ぎて恋人をほったらかしにするなんて。

 アマノさんのアプローチは随分いじらしくて、見ているこっちが気恥ずかしくなってくる程だった。

 アリマと大体一緒にいる僕にも相談しにきて、二人きりになるように仕組んでみたりと協力したこともあったなぁ。

 アマノさんは本当に良い人だと思う。性格が明るくて、はきはき喋る。困っている友人は必ず助け、そして……人を好きになったらその人に一直線だ。

 ……まぁぶっちゃけそこまで詳しく知っているわけじゃないけど、良い人っていうのは何となくわかる。

 アリマもなんだかんだ言って、明るく気の良いヤツだし、このまま二人が上手くいけばいいと思う。

 だからこそ、アリマにはつまらないことでしくじって欲しくない、と思うのは、彼の友人として自然なことだろう。


 ホント、上手くやれよ、アリマよ。つーか羨ましいぞアリマよ。


 


 ――まぁそういう事情で今日も一人だ。ログインして「ダイレクトメッセージ」を処理する。文言が話通じ無さそうな感じのものが大概のものになっていた。


 「[極死の太陽]の情報よこせよ!なんかあんだろ!」

 「生意気なんだよ!初心者の癖に!」

 「お前が手に入れて良いモンじゃないっつーのwww」

 

 メッセージの件数自体は昨日より減っていたが、こういう攻撃的な文言のメッセージの比率は増えていた。こんなのいちいち相手にしていたらキリがない。

 まとめて無視することにした。

 どんな言葉を返しても火に油を指すようなものだ。どうしようもない。こういう手合いはオンラインゲームをやっているとたまには出会う。それが「特殊な事情」で特に僕に群がってきているだけだ。

 

 次にステータスポイントの割り振りを変えることにした。1500のステータスポイントはいつでも自由に振りなおせる。HP500、魔力500、SP2000というSP偏重ステータスにする。

 僕には[極死の太陽]という消費SP500なんてスキルがある。だから、その切り札をいつでも使えるようにしておくべきだと考えたのだ。

 このゲームではスキルは基本的にガンガン使っていくものだ。だから、SPには余裕を持って多めにポイントを振っておいた方が良い。このSP偏重型ステータスは、このゲームのステータスの振り方の王道の一つだ。[極死の太陽]という消費SPの馬鹿高い切り札を持つ僕には、特に従うべき王道だろう。


 次に、ログインしてプレイヤーが最初に降り立つ場所、おなじみになったこの中世ファンタジーな城下町……その中にある商店による。ここでは「リクワ」さんが使っていた「スクロール」やHPを回復する「回復薬」が売られている。

 これから出来るだけ遠くまでフィールドを探索したいと思う。そのための備えにきたのだ。

 このゲームではお金がモンスターを倒すと自動的に溜まっていく仕組みになっている。今まで僕が倒してきたモンスターの分、手に入れたお金をチェックしてみると、「5102G」と表示されていた。

 多いのか少ないのかは、まだよくわからないが……「スクロール」は500G、500ポイント分HPを回復する回復薬が200Gだったので、「スクロール」を2つ、それと回復薬をとりあえず10個ほど購入した。

 これで残りのお金は2102G。全部使い切ってもいいのかも知れないが、他にも使う機会があるのかも知れないので、少し残しておいた。


 そして、もう一つチェックしておくことがあった。まずは「ステータス」の画面を開いて、レベルをチェックする……と、「レベル20」になっていることが判明した。

 

 「もう20になってる……!?」


 初回で[極死の太陽]で敵を大量倒し、レベル2から10になり、「リクワ」さんと一緒にいった「探求の洞窟」で「ミドリヒトガタ」を数体「太陽」で倒し、10から20になった、らしい。

 どうやらあの「ミドリヒトガタ」、低レベルな自分にとっては結構な経験値になるヤツだったらしい。


 「『リクワ』さんに感謝しないとな……」

 

 そうつぶやきながら、今度は「スキル」の画面を出現させ、チェックする。

 レベルアップしたのなら、また新しいスキルを手に入れているはず。

 今まで色々あってすっかり忘れていた。レベル2に上がった時からチェックしてないから……

 レベル20の今、18個の新しいスキルを手に入れているはず。

 ワクワクしながらチェックしてみたが……


 「なんだ、コレ……」


 ほとんどが弱そうなスキルだった。[ミニマムキック]とか[極小光弾]なんていう滅茶苦茶弱そうなものがほとんどだった。[デコピン]、[しっぺ]なんてものもある。……最初に[極死の太陽]なんて大当たり引いちゃたから、バランスでもとろうとしてるのかな……まぁ、ただの偶然なんだろうが。


 一通り調べた結果、戦力になりそうなのは、18の新たなスキルの中の、3つ。

 素早いステップで敵の攻撃をかわす[ステップ]。

 ボタンを押しっぱなしにすることでその間ひたすら拳で連打する[ラッシュ]。

 高速で突進して、ぶつかった相手を一瞬動けなくする[スタンタックル]


 ――それを確認して、僕は、城下町を出て、冒険を始めた。




 「――よし、倒した!」


 「スライム」に[ファイアーボール]を直撃させると、「スライム」はいつかの「ゴブリン」と同じように煙のようになって消えてしまった。


 「スライム」は「ゴブリン」と比べて、その身体の特徴故か、攻撃のパターンが多かった。右から左から、その身体を伸ばしてはたくように攻撃してきた。


 だけど、「ゴブリン」よりもっと動きが遅く、攻撃を食らってもあまりHPは減らなかった。非力だ。体力は多いらしく、中々倒れなかったが、魔法が弱点だったらしく、思い付きで使った[ファイアーボール]を当ててみると、一気に弱ったので、そこにもういちど[ファイアーボール]で追撃すると、勝利することが出来た。


 「全然弱いな」


 さっきの動画の「ゴウカ」氏や「サエ」氏の動きを見た後じゃお粗末だ。まぁそれは僕にも言えることだが。


 「もっと奥に進んでみよう」


 もっと強いモンスターと戦ってみたい。そんな思いが僕を突き動かしていた。


 


 「光り輝く草原」をさらに北へ、北へと突き進んでいく。ここには他に、犬のようなモンスター、「ハウンドドックミニ」や「ユウ」と同じくらい大きい「大蜘蛛」等がいたが、問題なく倒すことができた。

 あのハイレベルな戦いの動画を見たからか、そんじょそこらのモンスターの動きでは、遅すぎるように感じた。初めて見るモンスターが相手でも、冷静に対応することができた。

 多くのスキルを駆使し、相手に行動を予測されないように、戦っていく。

 それが出来れば、もうこのあたりのモンスターには負けないだろう。

 

 モンスターを蹴散らしながら先へ、先へ。

 一体この道はどこへ向かっているんだろう?

 

 

 冒険はまだ始まったばかり。まだ見ぬ世界に向かって、僕は期待に胸を膨らませ、「ユウ」を走らせる――。


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