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2-2 スカウターの実験場-2

 画面が「天国酒場」から「探求の洞窟」に切り替わった。

 キャラクターのすぐ後ろにどこか外に繋がっているような光が見える。どうやらここが「探求の洞窟」の入り口か出口なのだろう。


 「――へぇ……」


 「探求の洞窟」は、緑色に輝く鉱石がそこらに散らばって生えている、綺麗な場所だった。

 洞窟というからには暗い感じをイメージしていたけれど、輝く鉱石が丁度いい感じの光源になっていて、落ち着いた明るさを持った雰囲気になっていた。


 「どうかな?なかなか綺麗な所だろう?」


 「リクワ」さんも到着したようだ。


 「ええ……凄いですね」


 素直に感心した。専門的な事はわからないけれど、やっぱりこのゲームのグラフィックは本当に丁寧に、綺麗に作られていると思う。

 こんなフィールドがどこまでも広がっていることを想像すると、少しドキドキした。


 「探求の洞窟」にもモンスターがいた。緑色のマネキンのようなヤツがうろついている。「ミドリヒトガタ」とかいうセンスを疑う名前だった。


 「彼ら……『ミドリヒトガタ』はこちらから仕掛けなければ襲ってこないし、戦闘を仕掛けたとしても単純な攻撃しかしてこないんだ。検証相手にはピッタリだよ」


 そう「リクワ」さんが説明してくれた。


 「さて、ここが『探求の洞窟』入口だ。ここからもうちょっと進むと、広場みたいな、十分な広さのある場所があるんだ。検証にはソコが一番適しているだろう。着いてきてくれ」

 「はい、わかりました」


 洞窟内を進んでいく。しばらくはキャラクター二人分くらいの狭い道を進んでいくことになった。

 巨体の僕のキャラクター「ユウ」にはちょっと窮屈そうだな、なんて思った。


 しかし、そこから急に広い場所にでた。どうやらここが、「リクワ」さんの言っていた広場なんだろう。

 ここにも「ミドリヒトガタ」が数体フラフラうろついている。実験対象として絶好の目標だ。



 「よし!はじめようか、『ユウ』君!」


 そういうと、「リクワ」さんの体から一瞬銀色の輝く閃光のようなエフェクトが表示された。

 

 「もしかしてそれが……」

 「うん。今[スカウター]を使った。これから5分間、ボクはこの周辺で使われたスキルについて検証できるようになった。準備完了だ……さぁ、『ユウ』君。[極死の太陽]を使ってくれ」

 「……はい」



さぁ。2回目の超大技の機会がやってきた。

 また、あの太陽が見れる――いや見ようと思えばいつでも見れるけれど、やっぱりここまでの大技だと使う度に気が引き締まるような思いに駆られるんだろうな、と思う。

 しかも今回はこの「太陽」を検証してくれる人までついている。この「太陽」の正体というか、得体というか……それが判明する、というのにはなんだか偉大な発見に立ち会うような、そんな気分すら感じる。


 [極死の太陽]が設定された「キー・ボード」のボタンを、昨日と同じように震える指で押す。

 僕のキャラクター、「ユウ」が人差し指をピッと天井に向けた。

 その指先から小さな赤い球体が現れる。

 それがどんどん大きくなり、炎を纏い、ゲーム画面を覆い尽くす。

 そして、「ユウ」は天井に向けていた指先を、思い切り振り下ろし……太陽が全てを燃やし尽くすために動き出した――


 


 「・・・・・・・・・・・・」


 そして、太陽が消え去った後に広がる光景は炎が支配する世界。

 辺りをうろついていた「ミドリヒトガタ」は一匹残らず燃やし尽くされ、姿を消した。

 洞窟内は太陽から燃え移った炎で埋め尽くされるようだった。

 

 この世界を一変する感じ……うん。正直に言うと、堪らない。この「太陽」がこの世界……SSLで使えるのが僕一人だと事実も含めて。

 二回目だったせいか、僕はこの太陽が作り出す光景と、それに対する自分の感情について、前よりは冷静に考えることができる、と思う。

 やっぱり、VRじゃなかろうが、この光景には圧倒されるし、気持ちも昂る。とんでもない大技を放った快感が、自分の中には確かにあった……

 だからこそ、この「太陽」を[スキャン]によって検証されることが、ちょっと複雑だ。

 もし検証の結果、この「太陽」を手に入れる条件が判明し、公開され、自分だけのモノじゃなくなったら……

 もう無用なトラブルに巻き込まれることは無いだろう、確かに。だけど……少し残念に思うかも知れない。

 「自分だけの」という要素が、僕がこの「太陽」に惹かれる理由の一部になっていることが、今は理解できるから。

 

 ……まぁ、もうやってしまったのはしょうがない。検証の結果を教えてもらおう。

 ――先ほどからなにも言葉を発しない「リクワ」さん。この人もこの光景に圧倒されているのかも知れないが、いつまでもこうしてはいられないだろう。


 「『リクワ』さん、『リクワ』さん」

 「あ、ああ……何だい?」

 「何って……[スキャン]したんでしょう?結果、教えてくださいよ」

 「……それなんだが」


 そこで、なにか躊躇しているような間があった。



 「[スキャン]による検証は不可……だそうだ」

 「え?」

 「……どうやら……規定外過ぎるようだな。[スキャン]では、[極死の太陽]を検証するには、()()()()()らしい……」


 

 ――僕は……「ユウ」は一体、何を手に入れてしまったのだろう。

 [極死の太陽]は、本当に、一体なんだっていうのだろう。

 歪な興奮と、奇妙な恐怖が、僕の頭をかき混ぜた――



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