2-2 スカウターの実験場-1
「SSL(スキルシーカーズリンクの略)研究所」……まだまだこのゲームを始めたばかりの僕にはまったくわからない。
ホロフォ(ホログラム・フォン)を操作して、新たな立体映像を出して、「SSL研究所」をキーワードにしてネット検索をかけてみる。
どうやら、SSLのファンサイト、というか攻略サイトらしい。このサイトでは、SSLに存在する無数のスキルを管理人自らが検証し、その詳しい効果を掲載しているらしい。
「管理人プロフィール」の項目を見てみる。
SSLでのキャラクターネームは「リクワ」……先ほどのメッセージの署名と一致している。
この人は[スカウター]というスキルを持っている。この[スカウター]は、僕の[極死の太陽]と同じように、この人しかこのゲーム内で所持している者のいないスキルらしい。
念の為、公式HPのスキル一覧で調べてみたが、確かに[スカウター]の欄、発見者の項目には、「リクワ」以外の名前は載っていなかった(他に所持している者がいれば、例えば、「リクワ他〇名」という感じで表示される)
[スカウター]の効果は、スキル発動中、[スカウター]使用者から一定範囲内で使用されたスキルの能力を、非常に事細かく検証して表示することができる、というものだった。
スキル名や消費SPといった基本的な情報から、フレーム(時間を現す単位。60フレームで一秒。「F」と示される。例えば、スキル使用からスキル終了まで20F、というように表される)情報、ダメージ倍率、さらにはその入手方法まで分かるらしい。
その[スカウター]を使って調べ上げたスキルの情報を、「リクワ」は自分のサイト、「SSL研究所」にて公開している。SSLプレイヤーにとってはスキルの取得方法まで公開されているそのサイトはかなり重宝され、その結果、管理人の「リクワ」は有名プレイヤーになっているようだ。
その「リクワ」からのダイレクトメッセージの内容は単純明快で、[極死の太陽]を[スカウター]で計測させて欲しい、そしてその結果を「SSL研究所」に公開させて欲しい、という要望だった。
僕は少し考え……
「わかりました。お願いします。どこで待ち合わせますか?」
と返信した。
なんせ、この[極死の太陽]、初心者の自分には完全に持て余しているモノであるし、それが原因でやっかいなダイレクトメッセージや掲示板での好き勝手な推測をされたりしている。
とっととその[スカウター]とやらで[極死の太陽]の情報が「SSL研究所」に公開されれば、それも少しは収まるかも知れない。
それに、この[極死の太陽]は確かに、レベルアップでのランダム入手によって手に入ったスキルではあるけれど、他にも入手方法はあるのかも知れない。他の入手方法が明らかになれば、[極死の太陽]は僕だけの「特別なスキル」でなくなり、持っていない人からの嫉妬に付き合わされることも無くなるだろう。
どこかで、「それは少し残念だな」と思いながらも、やはり現実的に考えて、僕はこの[極死の太陽]という強大なスキルを持て余していて、それによってこれからも大なり小なりトラブルを引き起こす可能性があることを恐れた。もうダイレクトメッセージの処理に追われたくない。
「『天国酒場』で待っててください~」
すぐ「リクワ」からの返信が届いた。丁度良い。今「天国酒場」にいるワケだし。
このまま待っていれば、「リクワ」が現れるだろう。
「やぁ。お待たせ。『ユウ』君。『リクワ』です。よろしく」
そう言って現れた『リクワ』の姿は、なんだか「魔法拳闘士」なんていう戦闘職、というよりも、科学者と言った風貌だった。
医者が着るような白衣、丸ぶちの眼鏡、オールバックにした緑色の髪、といった特徴を持っていた。
「こんにちは、『ユウ』です。……そんな服って、このゲームにあるんですね」
「あぁ、モンスターを倒すと、たまにこういう変わった服とか、ちょっと変わったアイテムを手に入れることもあるんだよ。ていうか、そんな事聞いてくるってことは、本当に初心者?」
「えぇ、今も「チュートリアル」を受けてた頃ですよ。昨日は『ゴブリン』相手に戦ってたレベルです」
「ははぁ、本当に初心者……こりゃたまげたな。じゃあこういうアイテムの存在もよく知らなかったり?」
そう言って、言葉を切った「リクワ」さん。何だろう、と考えていると、「『リクワ』から『探求の洞窟:スクロール』を受け取りました」という通知が表示された。
――なにかアイテムをくれたらしいが……どういうものかわからない……
「それはね、どこからでも『探求の洞窟』っていう場所にワープできるアイテムだよ。とりあえず、そのアイテムを選択して、使ってくれないかな?そこなら[極死の太陽]の検証に向いてるだろうから。『スキル・フィールド』なんだ、そこ」
また聞きなれない言葉が出てきた。
「……すみません、『スキル・フィールド』ってなんですか?」
「あぁ、ごめんごめん。そこからだよね……そうだねぇ簡単に説明すると……」
「リクワ」さんの説明によると、『スキル・フィールド』というのは、特定のスキルを入手していないと、入ることの出来ない場所のことだそうだ。
『探求の洞窟』は[スカウター]のスキルを入手しているプレイヤー……つまり「リクワ」さんしか入れない場所、ということだった。
例外は、この渡された「スクロール」というアイテムを活用すること。「スクロール」を使用すると、その時点でそのプレイヤーがいる場所へのワープが出来るアイテムへと変貌する。
つまり、「リクワ」さんは一度、「探求の洞窟」で「スクロール」を使用することで、「探求の洞窟:スクロール」を用意し、僕に渡してくれたのだ。これで、「リクワ」さんと二人だけで、「探求の洞窟」に入れる事になった、という訳だ。
「噂によると、[極死の太陽]ってフィールド自体に大規模な影響を及ぼすスキルなんだろう?だったら、誰にでも入れるような場所で使うと、人によっては迷惑に感じちゃうかも知れないし、それに他のプレイヤーがいなければ気兼ねなく検証ができると思うんだけど、どうかな?」
「……良いと思います。それでお願いします」
「うんうん」
「というか、特定のスキルが無いと入れないフィールド、なんて変わってますね」
「ははは、だろう?」
「リクワ」さんが笑った。まぁ文字上で、だけど。
「このゲーム、スキルだけじゃなくて、フィールドもどこまでも続くんじゃないかってくらい広いんだよ。『ユウ』君もたまには、きままに散歩してみたら良い。[極死の太陽]専用の「スキル・フィールド」も見つかるかも知れないし、沢山の数のフィールドをただただ踏破していくだけでも楽しいよ」
「へぇ……また試してみます」
「話が逸れちゃったね。じゃあ、そのスクロールを使ってくれ。『探求の洞窟』に出発だ。ちなみに、帰りの分も用意しているから心配しないで良いよ」
「ありがとうございます、では、『探求の洞窟』で」
メニュー画面から「アイテム」を選択し「探求の洞窟:スクロール」があることを確認する。
……広大なフィールド……「スキル・フィールド」か。またこのゲームの魅力を発見できたなぁ。
「リクワ」さんが言ってたように、[極死の太陽]専用の「スキル・フィールド」もあるんだろうか。
それを見つけるのも面白いかも。
あぁ、なんか知れば知るほどハマっていってるぞ、僕。[スカウター]の「リクワ」さんによる[極死の太陽]の検証……どうなるんだろうか?
そんな期待に胸を膨らませながら、「探求の洞窟:スクロール」を使用した。




