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2nd Life~異世界転性生活~  作者: 中二病作家G
転篇・生まれ変わって異世界生活
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グランシェード・ジ・アース








薄暗い部屋の片隅に魔法陣が展開され、淡く発光する。



「ふぅ……」


やっぱり、まだこの身体で長距離を転移するのは疲れる。

レイルは王都の中に屋敷があり、私の家は王都の外れの町だ。

だいたい、往復すれば私の魔力は底を尽く。


ふつうの同年代の子なら、まず魔力を使いきるようなことは無い。


そもそも、まだ魔法すら上手く使う事も出来ないので魔力を消費する事なんて無い。


まぁ、小さい頃から魔法の練習を積む貴族は別としてだが……



「ん?」


ふと私は家の異変に気付いた。


私の家は貴族ではないが、それなりに裕福で、割と大きな家に住んでいる。


お父さん、お母さん、

父方のお爺ちゃん、お婆ちゃん、

母方のお爺ちゃん、お婆ちゃん、

そして私の7人家族だ。


いつも夕暮れ時には賑やかに会話をしていて、笑い声な話し声がこの部屋まで聞こえてきていた。


それに今日は私の誕生日。

いつも以上に賑やかなはず……



だが、今はとても静かだ。





私は不安を感じながらも部屋を出て、みんなの姿を探した。



「!!」


そして見つけたのは、






















真っ赤に染まった部屋と、そこに無造作に転がる6つの真っ赤な人の形をした何か……



「え………」


何、これ……

え、これ、血?

なんで、なんでなんでなんでなんでなんで?



呆然と立ち尽くしていると、背後から床の軋む音が聞こえた。


振り向いた瞬間、私は髪を掴み上げられた。



「痛っ、痛い!!

離して、離せぇっ!!」


「おい、餓鬼がまだ残ってたぞ?」


厳つい男の声が耳に入る。


聞き覚えの無い声だ。



「おっかしいな、どこにいたんだ?」


先程の男とは別の男の声。

こちらも聞き覚えの無い声だ。



「見られたからには生かしてはおけん。

殺せ。」


先程の二人とは違う、

酷く冷たく、冷酷な男の声が耳に入った。

この声には聞き覚えがある。だが・・・・・・・・・



「まだ子供ですよ?」


「子供だろうと、目撃者には変わり無い。

それとも、私の命令に逆らうのか?

えぇ?ラシウス?」


ラシウス「と、とんでもございません、グランシェード様。」


グランシェード………

グランシェード・ジ・アース!?

地を司る四大貴族の現当主がいったい何で・・・・・・・・・


いや、そんなことはとりあえずどうでもいい。

今は逃げないと!!



「いてぇ!?

っ、この餓鬼ぃっ!!」


私は髪を掴んでいた男の手に、爪を食い込ませ、脱出した。



「何をしているんだガロン!!

逃がすな、捕まえろ!!」


ガロンと呼ばれる大男は、すぐさま私を捕まえようと手を伸ばすが、それくらいで捕まるほと甘くはない。



私は一目散に駆け出した。





 


「逃がさんよ。

“大地の刃よ、敵を裂け。”」


「!!

ぎゃああぁぁぁっ!!」


背中に激痛が走ると同時に、凄まじい衝撃で数メートル吹き飛び、家の壁に激突した。



「あっ、ぐぅ……カハッ…」


口から血が溢れた。

いや、それだけでは無い。

背中は焼けるように熱く、壁に激突したせいで全身が痛い。

たぶん、何箇所か骨が折れている。


「おやおや、手加減したつもりだったのですが……」


ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべて近寄ってくるグランシェード。



「この餓鬼、よくもやってくれたな?あぁ!?」


「え゛あ゛ぁあ゛ぁぁっ!?」


ドゴォッと大男の蹴りがお腹にめり込む。



「あ゛、はっ、はぁっ・・・・・・・・・

た、助けて・・・・・・・・」


「残念ですがそれは出来ません。

可哀想ですが、命令なのでね。死んで貰いますよ。」


ラシウスと呼ばれて優男風の男が、細く小さなナイフを取り出す。



「まぁたそんなちんけなもんでちまちま殺すのかよ。」


「それが良いのでしょう?

絶望に歪む顔、恐怖に震えた悲鳴……

あぁ、実に素晴らしい!!」


「相変わらず悪趣味だな……

早く片付けてしまえよラシウス」


「分かってますよグランシェード様、早めに終わらせますよ……」


ラシウスは私の腕にナイフを添えて、浅く斬り裂いた。

抵抗無く肉が斬れジワリと血が溢れ出した。


それと同時に股を温かい何かが伝った。



「はっはぁ♪

この餓鬼、失禁しやがったぜ!!」


「可愛らしいですねぇ……

今すぐに殺してしまうには実に惜しい。


そうです、グランシェード様、この子をあの沼に沈めてみてはどうです?」


私の股をナイフでなぞりながらラシウスがグランシェードに尋ねた。



「はぁ・・・・・・・・・、好きにすると良い。

お前には付き合ってられんよ・・・・・・・・・

私はもう帰る。くれぐれもヘマはするなよ?」


グランシェードはそう言うと転移して姿を消した。



「もちろんわかってますよ。


ガロン、貴方は行くでしょう?」


「ああ。まだまだ殺し足りねぇからな。

その辺の魔物でも狩ってくらぁ」


「決まりですね。」


ラシウスはナイフをしまい、拷問用の拘束魔法で私を縛り付け、

髪を引っ掴んで転移魔法を発動させた。



このままじゃ殺される。

こんな奴等に・・・・・・・・・


何か、どうにかしなきゃ・・・・・・・・・

でも、どうすれば良い?


私の力は不完全だ、魔法にしても武術にしても、経験が圧倒的に足りていない。

下手に力を使ったところで、容易くいなされるだろう。


痛さと恐さで頭が混乱する。

どうしようもないと言う絶望が、恐怖が、思考の邪魔をする。



転移先で髪を掴まれたまま、吊るされるようにして何処かへ運ばれる。

全く見覚えの無い景色だ。


荒れた荒野に、所々毒々しい草木が生え、淀んだ瘴気が充満している。



「いつ見ても気味の悪い沼ですねぇ。」


絶望に打ち拉がれていると、どうやら目的地に到着したようだ。



ガロンと言う大男は途中で魔物を見つけると、その魔物を殺しに向かって行った。



「ふふふ、立ち入り禁止区域にある毒の沼。


人をここに沈めたら、どんな悲鳴を奏でてくれますかねぇ……」


そう呟くと、私を沼の真ん中に放り込んだ。



ボチャアァァン!!


ドロリとした沼の水が、身体にまとわりつく。

粘度の高いそれはもがこうにも動きを阻害し、更には動こうとすればするほど、沼に私の身体を引きずり込んだ。


私はそのまま抵抗も出来ずに沈んでいった。







「?

浮かんで、こない?


チッ、つまらない。

“瞬く刹那の閃光、空を切り裂き敵を灼き貫け。”!!」


ラシウスは沼に魔法で雷を落とすと、すぐに転移でいなくなってしまった。





ねっとりとまとわりつく水が肌を焼く。


ゴポポッ!!


私は激痛で酸素を吐き出した。

さらには、吐き出した酸素の変わりに毒の沼の水を大量に体内に入れてしまった。



毒が、私の身体を焼いていく。



痛みで目を開けると、視界に何か大きなものが見えた。

が、すぐに目を焼かれ、何も見えなくなった。


あまりの激痛も、脳がシャットアウトする。

次第に全ての感覚が抜け落ちるように無くなっていく。



もう、良いかな・・・・・・・・・


諦めにも似た、もう全てがどうでもいい、こんな禄でもない最期なんて、悔しい、でも抗えなかった、どうすれば良かった?、どうしていれば良かったの?、なりふり構わず力を奮っていれば、でも、でも、



ああ、そんなことはどうでもいいや。


ごめん、ごめんな。

俺がもっとしっかりしていれば、もっと・・・・・・・・・




私はそのまま、沼に沈みながら意識を失った。













 

 

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