媛神姫鏡
どうも、初めましての方は初めまして。
中二病作家Gです。
この度は本作品に目を通して頂きありがとうございます。
本作品はエブリスタにて公開しています“異世界転生物語”を再構成し、加筆修正した物となっております。
旧作を知っている方にも、本作が初めての方にもお読みいただける内容になっているかと思います。
今後ともよろしくお願いします。
『あなたは世界の歪みに巻き込まれて、世界の理から外れてしまいました。
あなたに残された選択肢は、ここで一生を終えるか、異世界に転生するか、です。
どうしますか?』
「はい?」
とある朝、唐突に告げられた人生終了のお知らせ。
既に肉体的な感覚は無く、何とも表現し難いふわふわとした感覚に、その言葉が偽りでは無いと言う事を、否が応でも理解させられてしまう。
自分が今、横になっているのか、立っているのか、はたまた座っているのかすらわからない。
手を伸ばそうにも、伸ばす手が無い。
身体を動かそうとしても、ただふわふわと漂っているかの様な感じしかしない。
非常にむず痒く、何ともイライラする感覚だ。
確かにふわふわ漂う様な感覚は心地よくて、眠気を催す程ではあるが、自分の意思で動く事が出来ないと言うのはとてつもないストレスを感じる。
目の前で(恐らく目も無いのだが)申し訳なさそうに佇む、黒い巫女服を纏った小動物を彷彿とさせる少女を見つめながら(たぶん目は無いのだが)、俺は脳をフル回転させながら(脳足りんどころか脳すら無いのだが)、必死に現状の把握に勤しんだ。
勤しんだのだが・・・・・・・・・
「え、いや、え?
ちょ、なに?」
俺の理解力を遥かに超えた事態に、俺は思考を破棄する事を選択した。
仕方ないだろう?
こんな理解し難い事態を、一平々凡々な高校生である俺がいくら頭を捻ったところで(捻る頭すら無いのだが)、どうこうできるわけがない。
「ドッキリ、とかですか?」
『いいえ、全て真実です
貴方は死に、既に世界からその存在を消し去られました』
僅かな希望すらも無く、ただ“死”と言う現実を突き付けられる。
「冗談、キッツいなぁ・・・・・・・・・」
否定したくとも、この非現実的な状況で納得させられてしまうし、既に俺が死んでしまったとわかってしまっている。
『………ごめんなさい』
ポツリと謝罪の言葉が囁かれる。
「貴方が謝る事じゃ、ないでしょ?姫鏡さん・・・・・・・・・」
目の前の黒い巫女服を着た少女・・・・・・・・・
家の近所にある媛神神社の巫女さん兼神主の媛神姫鏡さんであった。
俺が幼い頃からお世話になっている近所のお姉さんみたいな存在で、両親や親戚の居なかった俺の面倒を保護者代理として甲斐甲斐しく見てもらった。
いわゆる親代わり、と行った感じか。
近所のお姉さんと言っても、俺が中学の頃には既に身長は越えていたし、何かと天然でゆるっとふわっとして『私は~神様なんですよ~』とか良く言っていた。
だが姫鏡さんはことある事に首を傾げてフリーズしてしまうので、大半が俺が世話をしていたのは記憶に新しい。
現に昨日も、万札片手に自販機の前でフリーズしていたのを見かけたので、俺の小銭でお茶を買ってあげたりした。
っと、話しが逸れたな。
今はこんな思い出に浸っている場合では無い。
「姫鏡さん、俺が死んでいるのは何となく分かったけど、
何で死んだのか、いつ死んだのか、教えてほしい」
悲しげに俯いたままの姫鏡さんは、見ているこちらもとても悲しい気持ちになるので、とりあえず話題を振る。
とりあえずではあるが、決して無駄な事じゃない。
俺の知りたい事でもあるしな。
『私も全てを見たわけではないですが、貴方の死因はわかります。
貴方は世界の歪みと言う現象によって、世界からその存在を弾き出され、消されてしまいました。
世界から弾き出された貴方は狭間と呼ばれる世界と世界の間にある虚無空間で消滅仕掛けていました。
狭間では器に依存する物は存在する事は出来ず、消えてしまいます。
私は世界から貴方の存在が消えたのと、歪みが発生したことを察知したので、狭間に貴方を探しに行きました。
そこで消えかかっている貴方の魂を保護し、今に至ります。』
「それが原因、か・・・・・・・・・」
色々とぶっ飛び過ぎていて理解に苦しむ所だな。
「次にいつ死んだのかだけど・・・・・・・・・」
『そうですね、では先ず、あなたの最後の記憶を話してください。
私が駆け付けた時点で貴方は魂の残骸でしたので・・・・・・・・・』
そうだよな、現場に姫鏡さんが居れば俺は死んでないよな。
「確か、学校へ行こうとして……」
そうだ。
遅刻しそうになって急いで玄関から飛び出たんだ……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今朝、いつも起きる時間を少し、いやだいぶ過ぎた辺りで目を覚ました。
目覚まし時計の電池が切れていたせいで、起きる事が出来なかったのだ。
ふと壁掛けの時計を見れば、ホームルームの始まる30分前といった時間。
高校までは急いでもおよそ30分は掛かる。
「ヤバい、遅刻するっ!?
け、ケータイどこだ!?
あと財布と鍵!!」
顔を洗う暇も無く、制服に着替えてドタバタと部屋を引っ掻き回して、捜し物を見つける。
この時点で5分が経過している。
校則違反だが、バイクを使うしか無いか・・・・・・・・・
見つかれば停学待ったなし、1週間生徒指導室で反省文とただひたすら漢字の書き取りの毎日になってしまう。
ならば制服の上からジャージでも着て、途中で着替えるとしよう。
急いで準備を済ませて玄関の扉を開き外へと1歩を踏み出す。
「行ってげろんぱっ!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「玄関を出た瞬間に凄まじい衝撃が……」
『そこです。
そこであなたは歪みに触れたのです。』
「あぁ、何か思い出してきた・・・・・・・・・」
凄まじい衝撃の後、回る視界の中で俺は自らの潰れ、捻れ、弾けた身体を見た。
痛みは無い。痛みすら感じる間も無く、意識は途絶えたのだろう。
『で、それを見つけた私が、世界の裏側の世界に一時的に連れてきて、今こうしてお話ししている訳です。』
んっんー?
「世界の裏側の世界?」
『はい。
ありとあらゆる世界を繋ぐ裏側の世界です。』
「…………ん~……
つまりこういう?」
世界┓
世界┫
世界┫
世界╋世界の裏側の世界
世界┫
世界┫
世界┛
こと、かな?
俺は簡単に絵を書いてみた。
どうやって書いたかは追求しないように!
『たぶん、それであってると思います?』
頭にクエスチョンマークを浮かべながら、首を傾げる姫鏡さん。
すっげぇ不安。
『この世界は、ありとあらゆる世界を調整するために存在しているんです。』
「調整?」
『歪みによって世界が崩壊しないようにしているんですよ。』
なるほどわからん。
『ですから裏側から表側に介入することは出来ますが、表側が裏側に介入することは出来ません。』
「へぇ……
ん?
じゃあ何だ、その裏側の世界にいる姫鏡さんって?」
『?
私はこの世界を統べる神ですよ?』
驚きの事実!!
いや、知ってたけども!知ってたけども!?
よく自分で言っていたけど、まさか本当に神様だったとは・・・・・・・・・
「え?あ?神様!?」
『はい。
あくまでも、この裏側の世界を統べる神ですから、あなたのもといた世界の神とは違います。』
「あぁ、神様って複数いるんだ……」
『一つの世界に必ず一柱は存在します。』
あぁ、八百万の神々とか言うからな……。
正直、何でもかんでも神格化してしまう日本の風習はどうかと思う。
物から何から、果ては悪霊や妖怪であっても日本では神様として崇められ、奉られている。
日本人は臨機応変と言うか、悪霊や何かもそれで本当に神様としての役目を果たしてしまうあたり、日本は本当に寛大だなぁ。
『それでは、本題に戻ります。
私の役目は歪みの修正と、それによって生じた事象の後始末です。
歪みによってあなたはもといた世界には存在出来なくなりました。
あなたはこのままでは世界の歪みそのものになってしまいます。
なので、貴方に残された選択肢は二つです。
ですから、そうなる前に、今ここで一生を終えるか、別の世界に転生するか、二つに一つです。
どうしますか?』
「……どうして戻れないんだ?」
『あなたの存在は始めから無かった事になっています。
そんなあなたがまた元いた世界に戻ったらどうなるか、わかりますよね?』
「なんかヤバそうなことが起きそうなのはわかるな。」
それこそ、姫鏡さんの言う歪みとやらに俺がなってしまうという事か。
そうなれば俺は姫鏡さんの仕事の対象になってしまう。
『ですから貴方は元いた世界には戻れないんです。』
「それなら答えは決まってるだろ。
もちろん、異世界に転生だ。」
俺はまだまだやりたいこといっぱいあるしな。
『わかりました。
では、今回は私の不始末と不注意でこんなことになってしまったので、特別にあなたの望むものを叶えて上げますよ。
と言っても、転生するあなたのパラメーターを調整するだけなんですが……』
「マジで!?
あっ、転生する世界ってどんな所?
魔法とかあるの?」
『そのような世界がお望みでしたら、そういたしますが?』
「是非!!」
ぃやったぜ!!
ファンタジー世界に転生とか!!
オラワクワクすっぞ!!
『それじゃあ、他に望みは?』
「ん~……
その世界に関する基本的な知識と無限魔力はお決まりだよな……」
『魔力は無限に持つ事は、人間には出来ません。
肉体が耐え切れないので……』
「そうなのか?
じゃあ、上限いっぱいまでならOK?」
『いえす』
「後は……
属性の適正とか、あるよな?」
『はい。
世界を構築する炎、氷、風、地の四大属性とその派生属性。
それと特殊属性の光、闇。
後は無属性があります。』
「全属性使用可、OK?」
『おーけー。』
「うっし。
後は、身体能力も高い方が良いよな……
それと、そうだ。重力を自在に操る能力と、創造する能力とか。」
『創造する力は創造神のみが持つ力なので、その力は与えられません。』
「あぁ~、そう上手くいく訳ないか……」
まぁ、そりゃあそうだよね。
人間ごときが神様の力を持とうなんて……
『ですか、例えば武器を創造する力、とか、限定された創造の力なら可能ですよ?』
「あ、じゃあそれで。
よし、最後に寿命以外では死なない肉体で」
『不老不死とかじゃなくていいんですか?』
「そこまで高望みはしないよ。
それに、いつまでも一人で生きてるのって、辛いと思うんだ。」
『そう、ですね……
では、あなたの望みを叶えましょう。
後は、私からお詫びとお礼をかねて私の加護をプレゼントします。』
「姫鏡さんの加護?」
『これから送る世界は、私の管轄下にあるとはいえ私の目の届きにくい世界であり、介入が難しい世界です。
ですからせめて私の加護で貴方をお護りします。
とは言え元々私は加護を与えるような神ではないので、効果は余り期待しないでくださいね』
「姫鏡さんの介入が難しい世界?」
『はい、その世界は私よりも上位の神の創った世界なので、如何に私と言えど最低限の介入しか出来ません』
「姫鏡さんより凄い神様もいるのか・・・・・・・・・」
姫鏡さんって所謂、世界神よりも上の存在だよな。
・・・・・・・・・全く想像出来ないな。
そもそも姫鏡さんが神様ってのも、まだいまいちピンと来ないんだよなぁ。
現に今も心無しか瞼が閉じかけて、うつらうつらと船を漕いでいる。
『さて、そろそろお昼寝の時k・・・・・・・・・
準備が整ったので、転生しましょうか。』
今、お昼寝の時間って・・・・・・・・・
いや、追求はしない事にしよう。
割といつもの事だからな。
「いよいよ、転生か。
色々とお世話になりました、姫鏡さん。
ありがとうございます。」
『はい。
それでは、第二の人生、楽しんできてくださいね。』
姫鏡さんのその言葉と同時に、俺は意識を失った。
わくわくが……とまらな…………
【貰った能力】
・世界に関する基礎知識
・莫大な魔力
・全属性の適正
・高い身体能力
・寿命以外では死なない肉体
・重力を自在に操る能力
・武器を創造する能力
・媛神姫鏡の加護