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戦争006

何も考えてません。ストーリーしか頭にありません。

全部ではありません。この相手との終わりまでです。

 地獄の門とは違う。そもそもそのようなものが本当にあるのかどうか知らないし、あったとしても私がソレを理解できるのかどうかは別々の問題なのだ。しかし、今目の前にある門をそのように表現することが何故だか納得できるものがある。

 無数に、本当に無数に、どれくらいかと言えば要塞を包み込む壁の一面全てに数えるのも面倒なほど機械が磔にされていた。そして、それと同じくらい、その無数の機械を埋め尽くす程吊り下げられたものがある。それが人だった。無残にもとは言いがたい。傷がないことは見ればわかる。そこに無数にあるものは全てが身包みを剥がされていた。男も女も、子供も大人も、おおよそ戦争には巻き込まれるだけの人間達が、無残にも。

 要塞の門は巨大だ。両開きの門は人間にたった二つしかないものを寄せ集めて釘打ちされていた。胸が多い気がする、ただし胸だけだ。ほかには腕、足、眼球、耳、そしておそらく腎臓だろうか、それが所狭しと打ち付けられている。だが巨大なもんを開けることなく入ることが、その脇にある小さな人の手が文字通りの取っ手の通用口を使えばできる。

 彼我はそれを取り、開く。そして入る。

「あらあらうふふようこそ『不落城』へお越しくださいました歓迎しますええ歓迎しますとも」そこにいたのは五番の記憶にあったモノ「私はあなた方を歓迎いたしますわええそういたしますとも」

「あれがNT004ですね」端的に言おう「壊しますか?」

 刺激がめぐる。外的なものではなく内的なものが全身をめぐっている。何故こんな状態になっているのか自分ではわからないが、人間でいうなら私はコレを拒絶していることになるのだろう。理由はわからない。ただ、そう思った。

 四番は笑って私を見た。そして笑って私を掌握しようとした。

「も、申し訳ございますせん」何を言っているのか理解はできる把握できない「よろこんで案内されるます」

「おほほほほよろしくてよ案内してあげますわ付いてきなさい」

 そういって四番は踵を返した。単純な疑問になるのだが、私の仲間や同型は服を着るということをしないのだろうか。四番もまた裸であった。しかし生まれたままの姿というわけではない。その体は確かに一糸まとわぬ姿ではあったのだが、赤黒い何かがびっしりとこびり付いていたからだ。

 それが固まった血であるということは分かりきっていた。

 疑問だ。私が初めて、といっても二度目の目覚めになるのだが、そのとき私の裸に対して服を着るように言っていたが、彼女にそれを求めない。それが私にとって違和感となる。

「すいません」思った通りに口を開くことができる「服を着ないのですか?」

「あらあらごめんなさいねでも残念ながら私は服を着ることを禁止されているのですそこの男によってでも安心してください私にだけ適用されているのですから」だから「五番が服を着ていなかったのは彼女に服を着るという思考ができる前に彼女があそこに配置されていたからですわおほほ開発されてから彼女は戦争を始めていたということですわ」

 四番が歩き、私と彼我が後に続く。最初に案内された場所を四番は生産場といった。私は何も感じることがなかったが少しだけ胸が高鳴る場所であったが、彼我はあからさまに嫌な顔をする。

「あららあなたも生まれたばかりですね」

「相変わらずだなお前は」そして感想はここを的確に表して「嫌な場所だな」

 人間であるなら当然の感想を言い放ち、次の場所を案内しろと彼我は手で合図した。中からひっきりなしに響いてくる嬌声は耳を刺激し続ける。特に不愉快なことはないが、頭の回路の奥底が常に何かしらの警告を発しようとしていた、だがそれは何かに導かれるように消されていく。

 四番は残念そうに笑いながら生産場を後にした。次に連れられた先を四番はいう。商店街だと。

 そこは大きな部屋だった。部屋の扉を開けると同時に鼻から強烈な刺激を受けた。解析したのち、それが人間でいうところの嫌悪感であるということを理解した。

 日用雑貨から家具、服飾品などが多く立ち並んでいた。それは強烈な刺激とは無関係なものではないということは理解できたが、しかしそれが強烈な刺激と無関係であると思った。

 となりで彼我が気分悪そうにしている。彼我にはここにあるものがどういうものか理解できているということだ。

 しかし四番は残酷にも言った。

「ここは比較的楽でありますわおほほまだ先がありますもの次はそこにいきましょうおほほ吐いても構いませんわよ」意味深に続ける「何に吐くのかをあなたは理解しているとは思いますけどおほほほほ」

 意味が理解できなかった。思わず吐くとき、それは地面あるいは床に吐くものだ。誰かの服に吐くようなことがあってもそれはやがて地面あるいは床に落ちるだろう。つまりはこのごつごつとした白い床にということになる。この床に何かしらの意味があるというのだろうか。

 何であるかを四番がいうことはなく、次の場所を案内すると言って商店街を進む。通り過ぎていく人は死んでいるような動きで、しかし四番を見ると生き返ったように素早く避けていく。ゆえに私達が人にぶつかるということはなかったが、誰も彼もが四番の後に続く私達に奇異の視線を投げつけている。

「た、助けて!」

 私達に向かって言葉を投げかけたのは、その無関係な人の一人で女だった。肌色の服をきた女性、着ているものには所々黒い斑点があるが、そういう模様なのだろうか。だが、女は危機迫るといった感じで私達に手を伸ばそうとすらしていた。その手が届くことはない。

「あらあら私の客人ですわよおほほそれに私の上司でもありますものあなたがたに触れさせる訳ありませんわ」それに「私の命令に逆らうとどういうことになるということを忘れているようですわねおほほよろしいあなたは住人の立ち位置でしたわね次の役職は生産場にしましょうおほほ私は優しいので殺しはしませんわええ殺すことなんてしませんし死なせたりさせませんわ」

 女の手を掴み一息に言い切ると手で回りにいた中から適当に男をいざなう。男の手を女に乗せ言った。

「あなたにもその職を与えますわおほほ彼女をそこまで案内してさしあげなさい」

 男の方も血の気が引いたような顔をしている。そして一度女を睨む。女がびくっと身を竦ませてからその無意味さを知ったのか、おとなしく女を連れて商店街を去っていった。女は最後まで私達を、四番を見続けていた。

「時間を無駄にしてしまいましたわねおほほ行きましょうか」

 次に案内されたのは食堂と呼ばれた場所であった。確かに中では人々が笑顔で食事をしていた。しかし楽しんでいるというような雰囲気はない。全員が揃って涙を流しながら笑って何度も嗚咽を漏らしながら食べていた。その光景は異常なまでに異常であった。

 四番はそこをなんの感情も、いや、ただ一つ愉悦に満ちた顔をしながら歩いていく。私達はその後に続くだけだ。彼我は口で手を抑えてなるべくそれらの光景を見ないようにして進んでいく。

 一番奥の部屋についた。そこを四番は私室であると紹介し、続けて言った。

「そういえばあなた達の乗ってきた車ですけど収容しておきましたわおほほあのままですともしかしたら盗まれたかもしれませんもの私なりの気遣いというものですわおほほほほ」

 そんなことあるわけがない。事実私達がくるとき、この要塞の周りには誰一人としていなかったのだ。なら別の目的か、そう思考して合点がいった。

「私達を逃がさないというわけですねか」また要らぬ言葉が挟まり三度目の正直にまさかと思い「私を掌握している?」

「おほほ今の恐怖に犯されている私に出来ぬことはありませんわおほほ私達とはそういうものですわ」

 私は全身を精査した。そして最初の刺激、つまり車の中で四番に襲われたとき以前のものと比較する。恐ろしいことに変化という変化は見当たらなかったがまったくないというわけではなく、それでいてめちゃくちゃにかき回されていた。

 私の中の体を動かすための指令がすべて私自身によって書き換えられる。なるほど違和感がないというのは最初の時点で既にこの状態にされていたからということか。そのまま招かれるように四番の部屋に入る。

 中は豪華というより質素そのものだった。生活感というものはなく必要最低限のものしか置かれていない。

「私はあのようなもの使いたくありませんものおほほあれはここに生きる人々のためのもので私が使うためのものではありませんもの」

「お前が一番そのような言い方しちゃいけないものだろ、あれは」

「何かわかるというのですか?」それは「あれは何ですか?」

 それを聞いて、今まで以上に嬉しそうな表情を四番は浮かべた。

 そして楽しそうに、言った。

「おほほほ生産場をみたならわかるでしょうあれは文字通りこの不落城のすべてのものを生産する場所でありますわ」つまり「あれは人間達が生み出したものですわ」

「それはつまり」

 答えを言おうとしたら彼我が私の口を押えてそれを遮った。だがそれでも答えは分かる。目の前に答えを知るモノがいるのだから。

「ええそうですわそうですともおほほあれはヒトですわ」そして「この不落城すべてヒトによって作られておりますわおほほほ」

「すべて、ですか」

 彼女は言葉の中に初めて区切りをつけて言う。

「ええ、すべて、ですわ」

 次の相手が誰なのか、私は見失うことになった。

 彼我はたまらずに吐いていた。

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