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平和002

遅くなりましたが、更新です!

 地下から地上へ、そこは緻密に隠蔽されたがために共和国軍が見逃していた研究所への入り口だった。そして、私達は共和国軍のど真ん中に出る形となった。しかも侵攻後ではなく侵攻真っ只中の戦争の中へだ。

「おほほほほほもうこんなところまでまったくどうしてあなたたちはそんなに早漏なのでしょうかねえ聞いておりますか」

 四番が前に踊り出る。私に対してではないはずなのにノイズが少し発生するのは圧倒的な力を行使しているからだろうか。

 共和国軍の兵士達が私達に気がつく。その目は大きく見開かれていた。体温も少しばかり上がっている。

 警戒心もあるのだが、何故体温が上がっているのかがわからない。

「おほほほこちらを狙ってきてますわねまずはあれをおとしてみましょうかおほ練習には丁度よろしいかとおもいますわよ」豊満な胸を大きくそらし「生まれたばかりで服もきていないようなあなたでも倒せるような雑魚でございますけれどおほほほほ」

「服を着ていないのはお互い様でしょう。私にだけ適応するものではありません」

 全身の力に精度をこめる。一撃ですべての敵をおとす。

 横で四番が身を低くしたのを皮切りに、発砲。全身から打ち出された弾は私の体に煤を残しながら離れていく。望遠機能は使わなくてもいい。放つということはあたるということを意味しているからだ。何故なら私の弾は一つの目標に対して当てるものではない、その周囲一メートルを爆裂させる。標的に近ければ相手は無力化できるのだ。

 反撃がこない。当然だ。今の時代、電子的に制御されている銃や兵器は珍しくない。ならそれらに対しての天敵として四番がいる。

「あらあらおほほ意外とよろしい武器をお持ちになっておられるのではありませんかこれはこれはよろしい大変よろしいではこれらを私のものとしてもらってさしあげましょう殿方にとっては姫に貢物をするのは大変光栄なものだと思いますわ」

 銃などは人の手ですでにマニュアルに変えてある。しかし、無人兵器はそうそう簡単に切り替えることはできない。四番はそれらを一斉に掌握、手綱をにぎる。

 優勢だった共和国軍は自国の兵器によって一斉に掌握された。

 私は近くで建物を除き自然として一番高い位置を検索、その上に陣地を築いた。といっても回りの共和国軍の兵器の中で四番の支配下に置かれず破壊されたものを改造し、超威力の砲台として作り変える。それを数門造りだし、それによって周り一面を自分の領域として支配する。

「私はここから新たに入ってくる敵を殲滅します。あなたはどうしますか?」

「そうねえ私は共和国との国境付近にある軍用拠点を占領して共和国の足止めをしますわその拠点を通る者以外は無視するのでその対処はあなたに任せますわねおほほあなたなら大丈夫ですわね」

「お構いなく。味方を信頼しておりますし、あなた自身も信用に値すると思っていますので」

「あらあら嬉しいことですわね」

 私はその場で伏せ、改造した狙撃銃を構える。これから何年動かずにい続けることになるかを考えると嫌な気にもなるが、終わりがくるのだろうか。

 その姿勢になってから、四番が思い出したかのようにいい始める。

「ああそうそう思い出しましたわそうですわあなたにあの男からの伝言がありましたのよ」それは「おそらく次に君が出会うモノが君の役目を終えさせてくれるということですわ」

「どういうことでしょうか?」

「それはわかりませんわでもその日がくるまであなたはここを守りぬけということですわ」

 それではと最後の一息で言い切った後、四番は南へと下っていく。私はその援護のために構えた。

 敵が見える。それも数としては数千という値では収まらない、その数は数万数十万という値でしか数えられない。私は数えることを放棄し、とりあえず目の前にいる全ての敵に照準する。

 発砲。銃声は一つ。だが成果は数百を超える。それを連射。弾をこめるのにかかる時間は一秒を数十に分割したものよりも早い。

 敵を撃滅するのに一日もかからないだろう、一時間でも余りある。一分とかからないだろう。四番はただ悠然と南へと下っていく。その姿が望遠よりも遠い位置につくころにはもう敵は一人もいない。

 自分の領域内にあるモノを撃ち砕き、地面を平面へと変え、そして私は私の領域内での平和を獲得した。

 領域に入ってくるものはコレすべてを敵であると認識した。空を舞う鳥、地中深くにいる虫、すべて殺した。どれだけ小さいものであっても見逃さない。私の平和を誰にも乱させはしない。

 そして幾日、幾月、幾年の時が流れた。一ミリも動いた記録もなく、敵は鳥や虫ばかり。共和国軍も最初の時以来一切あっていない。

 四番がどうなったのか、他の姉妹達がどうなったのかはわからない。情報を共有できるようにはなっていないということだろう。私達は一つ一つが自立して動く兵器であり、一つの目的のために使い捨てられるだけの存在だ。

 思考がようやく予測できるすべての事象を観測したとき、停滞を始めた。それは私にとってこの生が無意味なものになることを意味していた。だが与えられた任務を否定する術を持たぬ私に、この朽ち果てるのみの状況を打破することができない。

 そんなときに彼女が現れた。彼女はいつかみた男を引き連れて出てきて、気配を消して全方位監視していた私よりも早く私を知覚していた。そして私が知覚し攻撃するまでに対策をうっていた。明らかに同等かそれ以上の力を備えていることがわかり、全身の神経が迸る。人間はこれを歓喜するとでもいうのだろうか。

 圧倒的な武力で制圧しかできなかったのだ、同等に戦うことができるものが存在する。ならば戦うのみだ。

 第一射は相手のど真ん中にぶち抜くように。

 発砲。

 だが狙いは大きく外れた。いや、自分から外した。何故そのようにしたのかは分からないのだが、そうすることが正しいように思えたのだ。これが姉妹達が言っていた、終わらない戦争の原因となるのならそういうことなのだろう。

 私達姉妹には非認識下において互いに攻撃動作を避けるという基盤があるようだ。直接的な攻撃を私達はお互いに行うことができない。だが、やりようはある。

 構えるのは改造に改造を重ね続けてきた超長距離狙撃砲。全長約五メートル、銃身だけで四メートル。重量数トンにいたる、馬鹿げた狙撃砲台、連式である。私だけがこれを正確に扱うことができる。今こそ使うときであると判断できる。

 私はそれを正確に照準した。スコープは付属させていない。そんなもの必要としていない。私自身の目だけで十分だ。

 敵を見た。男を抱き、四つんばいでこちらを見ている視線を捕らえる。すでに無意識で何度か発砲した後だ。こちらの動静のすべてを記録しようとしているのだろう。だが、この距離である。私の記録機能の方が遥かに役に立つ。

 一度、狙ってみよう。そう思ったのは単純に興味があった。私自身がどれだけ開発者の機能に抗えるのかということに対してだ。

 発砲。弾は敵を僅かに右にそれた。だがその威力は凄惨たるものがあり、その余波で敵の左腕を損壊させた。その威力は私の予想通りではあった。しかし、同時に始めて撃ったものであるから初めて知ったのだが、これはこの威力は、果たして"平和"にふさわしいものなのだろうか。

 私は生まれて初めて、人間でいうところの恐怖というものを体験したのかもしれない。その事実があまりにも衝撃的でノイズが大きかったからか、私には一瞬であったように感じた時間は敵が離脱するのに十分な時間があったようだ。見えなくなった敵を思う。

 私と同型。つまり私と同様の機構があったにもかかわらず、アレがこちらを見る目は私を壊そうとしていた目だった。

 相手がどのような存在なのかは推測することでしか想像することができないが、一つだけ確実にいえることがある。

 それは、――――次は壊す。

 私とアレはこのとき初めて対等に戦うことのできる存在に、一方的な殺戮ではなく、互いに無視できない敵として戦争相手として成り立ったのだ。

 記憶にノイズを入れる。ここから先は私自身の記憶だ。誰にも侵略される訳にはいかない。他ならぬ私を打倒するものであろうとも。

 ――――記憶を遮断。

 ――――感情を麻痺。

 ――――戦闘を開始。

 …………――――――戦争、終了。

次も早く完成させたいです。

気づいたかもしれませんが、タイトルは基盤です。

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