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第七話 水魔帝

「こんにちは、君がジック君かな?」

「はい! 俺がジックです」

水魔帝が来た。

パッと見たところ、優しそうな青年である。ただの村人だと言われれば信じてしまいそうなくらいだ。だが、一つ異常なところに俺は気付いた。指に、手の指十本全てに、指輪が付いていたのだ。しかも、全て形は違うものの、中にある宝石のようなものの色が全て水色なのである。それこそまさに、自らが水魔帝であることの証明かのように、その水色は光って、目立っていたのだ。

「ん? 指輪に興味があるのかな? でもこれは魔術をパワーアップさせるための指輪でね。残念だが君にはあげられないんだ。すまないね」

「いえ、別に欲しいわけではありません」

「そうか。うーん、まぁ僕の授業を受ける以上、君は強くなるだろうし、こんな指輪必要ないか」

ほぉ、やけに自信があるんだな……。

「じゃあ早速特訓といこうじゃないか。ジック君。一歳にしてC級、その才能を見せてもらおう」

「よろしくお願いします!」

あぁ、敬語疲れるわ。


「じゃあ早速、水魔法C級の基本技である水針(スピウォル)を見せてもらえるかな?」

「水針……ですか?」

「あれ? 魔法名は覚えてない感じかな?」

「魔法名とはなんでしょうか?」

「え? そこからなのかい?」

おいおい、そこからってどれだけ基礎なんだよ。俺の母さんは何故俺にこんなことも教えなかったんだ……。

「魔法名ってのはそのまま魔法の名前だよ。全ての魔法には名前がついている。本来、C級などという階級なんかもその階級の魔法名がついている魔法を全部使えてやっと認められるものなんだよ」

「へぇ、C級にはいくつの魔法があるのでしょうか」

「C級なら十二個ほどかな? でも安心して。全て使えるようにするから」

多いよ! 覚えられる訳がねぇ。

「C級でそんなに多いならA級やS、つまり魔帝ならばどれだけの魔法を使えないといけないのですか?」

「A級が二個、魔帝は一個だったかな。逆に少なくなるんだよ。上に行くほど魔法は派手になるからね。魔帝の使う魔法なんかは国一つ滅ぼすレベルだしそこまで数は必要ないんだよ」

「なるほど」

つまり今、俺の目の前にいる人は国を一つ滅ぼせるのか……。

え! 超怖いじゃん!

「さてと、じゃあ今日は水針を教えるよ。あんまりキツくはしないから安心して」

「はい!」

キツくないのか! やったね!

だがその後、俺は魔力が枯れるまで、水針を出し続けた。


「もう魔力切れかい? それじゃあ魔帝は厳しいよ?」

「はぁはぁはぁはぁ」

こいつ……いつか覚えてろよ。

「あ、もう夜だね。因みに僕は住み込み契約だから夜ご飯を食べたらまた特訓にしようか?」

「……はい」

冗談がきついですよぉっ!

「あれ? そういえば先生」

「ん、何かな? ジック」

「先生の名前、まだ教えてもらってないんですけど」

「あぁ……忘れていたよ。僕の名前はガル・オノミリって言うんだ。五年間よろしく」

五年間⁉︎ 五年間ってなんだよ五年間って。

「五年間とは?」

「五年間の住み込み契約なんだよ? 聞いてなかったのかい?」

聞いてねえよ! 俺の母親意外と適当だなぁ……。

いや、でも一歳の息子にわざわざ言うことでもないか。

「聞いてませんね。でも良いですよ。先生とは何年暮らしても飽きそうにありませんし」

なんせ水魔帝だしな。

「……君って聞いたとおりだけど子供っぽくないね。それに一歳……なんて普通はそんなに話せないし敬語も使えないし本も読めないし立って歩くことも難しいよ?」

そう言って、先生は歩いていき、部屋の扉を開けた。

そしてクルリと俺のほうを向く。

「君は一体何者なんだい?」

言って先生は俺の母の料理を食べるため、下の階への階段をタッタタッタと小気味よいリズムで駆け下りていった。

そのリズムが俺の耳にはとても長く感じた。

そして先生は何を知っているのかという疑問に俺は頭を悩ませながらも、料理の香りに誘われるかのように、俺はフラフラと階段を下っていった。


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