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第六話 違和感

 母さんは、俺を寝かしつけたと思い、部屋に寝に行った。

だが、俺は起きている。

理由は簡単だ。

水、草の魔法を試すのである。

まずは草から、炎を出そうとした時の感覚を応用してやれば何かしら出るかもしれない。

「え? おいおいおいおい!」

魔法は成功した。

異常なほどに……。

部屋の床全てから、草が生えていたのである。

うーん、どうしようか?

水も試すかぁ?

「とんでもなさすぎる……」

水で部屋の下半分が埋まってしまった。

何で炎は成功しなくて水と草は成功するんだよ……。

ぷかぷかと水に浮きながら、俺はどうしようかと考える。

うーむ…………。

すると、扉が開いた。

俺の部屋の扉が開いたのだ。

「ジック。しっかり寝ているかしら?」

母さんだ。

母さんが扉を開けたのだ。

そう気付いた時には遅かった。

開いた扉から水は溢れ出し、母さんは流れていく。

勢いで草も床から抜け、水と一緒に流れていった。

「あー、うん。寝よう。寝るとしよう」

俺は、寝た。

まだ少し水に濡れた床の上で。


「起きなさい。ジック」

う……もう朝になってしまったのか。

「ご、ごめんなさい。俺がやりました」

俺は素直に謝った。

「いいわよ。それにしても、ジック。なぜ草魔法や水魔法を使えるの?」

いいのかよ!

「母さんから教えてもらった炎魔法を出す方法を応用したんだよ……」

「へぇ、流石ジックね。しかもあの草と水、どっちもC級はあるわよ」

「へ? C級?」

結構……強いんだよな? 母さんも水と草はC級って言ってたし。あと父さんの炎もC級だったか? うん、なかなか凄いじゃないか俺。

「えぇ、このペースでいけば三歳のころには魔帝かしら?」

「そ、そんな……俺には無理だよ」

そんな才能があるとは思えない。

「諦めては駄目よ。三歳はまだしもいつかはなれるかもしれないのだから」

「うん」

「今からまた特訓よ。炎もC級にしてもらわないとね」

「はい!」


 三時間後、疲れ果てた俺は、座り込んでいた。

「ねぇ、ジック。草や水は出来たのよね?」

「はい、母さん」

「炎はなんで使えないの?」

「わかりません」

わかってたら苦労しねえよ。

「うーん、炎が怖いのかしら?」

「う……」

そうだ。俺は炎が怖い。

前の世界で、鼻の中に火をつけたタバコを十本ほど無理やり詰め込まれてから、トラウマなのである。

「なら仕方ないわね。貴方に炎魔法は使えないわ。けれど、草と水を特訓しようにも私もジックと同じくらいしか草と水は使えないの。だから……水魔帝を呼びたいと思います」

「へ?」

水魔帝って…………え?

なんかすごい人だよね? そんな人呼べるの?

「水魔帝を呼びたいと思うのよ。彼ならすぐに連絡がつくし」

「な、何で水魔帝とすぐに連絡がつくんですか……」

「十年くらい前だったかしら? お腹を空かしている水魔帝を助けてあげたのよ」

「へぇ……」

魔帝って凄いんじゃないのか? 腹空かしてるって……つまり魔帝だからって金を貰えるとかじゃないってことか?

うーん、もし仮に凄い魔法を使えるようになっても仕事に就けるようには頑張らないといけないようだな…………。

「まぁとにかく、明日から水魔帝を呼ぶからしっかり教えてもらうのよ」

「明日からですか⁉︎」

「当たり前じゃない」

当たり前なのか?

「あの、母さん。水魔帝ってどんな人なんですか?」

「優しい人よ」

そうか。優しい人か。

優しい人なんて……いるわけないのに。

「そうですか。では俺は今日はもう寝ますね。明日に備えなくては」


 俺は……歩いて、寝床へ向かう。

廊下を歩いて寝床へ向かう。

何だろう……何だか上手く出来すぎている気がする。

父は剣士、母は無詠唱魔法を使える。そして知り合いには魔帝。さらに母の父も無詠唱魔法を使えて魔帝。

そんな家庭に生まれた俺……。

うーん……。

気にしすぎなのだろうか?

でも……昔の俺から考えたら恵まれすぎて、とても違和感を感じてしまう。

うううううう。苦しい。

もう、寝よう。寝てしまおう。寝れば忘れる。寝れば終わり、寝れば始まる。

とにかく寝れば解決する。

今、結論を出す必要はない。

引き伸ばせ、引き伸ばせ。

人生は始まったところだ。

何年かかければわかることだ。

なーに、何が起きても一度終わった人生だ。せいぜい楽しんで死んでやるぜ。

ん? 今、思ったんだがこれ夢オチじゃないよな?

普通に考えれば実は夢とかあるよな?

いや、夢じゃないとは思うけれど……。

この世界が夢なんてオチじゃないことを祈りつつ、部屋に戻った俺は、眠りに落ちた。


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