第四話 暖かさを感じる
「な、なんだ⁉︎」
父は大声でそう言った。
「さ、寒いわね……家が凍ってるみたい」
母はそう言って寒そうに薄い布団を体に巻きつけた。
や、やばい……。
なんでこんなことになってるんだろうか?
うん、俺のせいだな。
アイスゾーンとか叫んだからなんやかんやで家が凍ってしまったんだ。
あぁ、家が凍らしてしまうのはやばすぎる……。
怒られるかな? もしかして追い出されたりして……。
「大丈夫? ジック」
そんなことを思っていると、母はそう言って俺を布団に入れた。
「貴方、早くこれを溶かして! ジックが凍ってしまうわ」
「ん、あぁ。ジック、父さんがすぐに溶かすから安心しろよ?」
俺は唖然とした。
家族とはここまで暖かいものだったのか。
家族とは…………ここまでたよりになるものだったのか。
俺が犯人と誰も考えていないなんて……。
赤子だから疑う訳もないけれど、俺は……それがとても嬉しかった。
「廻る血液よ……」
父さんが炎の魔法を放とうとし、詠唱を始めた。
「詠唱なんかいいから早く溶かして!」
「え、こっちのほうが気分出るのになー……」
母さんがそう言うと、父さんはそう言って普通に詠唱無しで炎を放った。
すると、みるみる内に家は元に戻っていった。
詠唱いらねえのかよ!
「それにしても何で急に……」
母さんが言い、首を傾げた。
「そろそろ冬だ。少し遠いが、ウソボル山にいる氷竜がこっちに来たのかもしれないな」
父さんはそんなことを言って、その後母さんも「そうね。確かにそんな季節ね」と言って、会話は終了した。
氷竜……氷の竜、か。やっぱりそんなやつがいるんだなぁ。
それにしても……もしかしたら俺は魔法の才能があるのかも知れない。
だって明らかに強そうな名前の氷竜と思われるほどの氷を使えたんだぞ?
ワクワクしてきましたよぉ!
無駄にハイテンションになったところで、思ったけれど、俺に仮に才能があったとしても魔法使えなくね?使ったらまたこんなことになるかもしれないし……。
どうするべきかねぇ?
とりあえず勉強かな? 勉強しないことには魔法なんて危なっかしくて使えたもんじゃない。
うーん、でも勉強するための書物なんてあるんだろうか?
このくらいの時代だと本ってとても高いんじゃなかったか?
まだ印刷技術が無かったからとか聞いたことあるぞ……。
それに家はそんなに金を持ってるほうでもなさそうだしなぁ。
まぁ、歩けるようになったらとりあえず家を探索してみよう。
本の一つか二つくらいはあるかもしれないしな。
家が凍ってから、一年が過ぎた。
一歳の誕生日、と言ってもこの世界では二年に一回しか誕生日を祝わないらしいので誕生日パーティーとかはなかったけれど、とにかく、一歳の誕生日も終わり、俺は赤子としては異常なほど早くも、歩けるようになっていた。
最近は、母さんと父さんが眠りにつくと、俺は起きて家を探索するようになった。
そして一週間前、俺は本を見つけたのだ。
タイトル『極剣と剣十士』
内容は、極剣と言われた最強の剣士が、十人の仲間、剣十士と共に、化物を倒す物語である。
俺はそれを毎日夜に起きては読んでいる。
読んではワクワクし、読んではワクワクする。
この世界の小説家は元の世界と比べてとても文章を書くのがうまいのだ。
それとも、この作者が特別うまいのだろうか?
他の本は見てないのでわからない。
あー、魔法を使おうと思ったけどとにかく剣を使いたくなってしまった。
父はそこそこ剣を使えるようなのでもう少ししたら教えてもらおうかな?
「さて、寝るとしますか……」
俺がそう呟き、後ろを振り向くと、父さんと母さんがそこにはいた。