第二十一話 五神祭の朝
五神祭開催の地、イァードタウン。
五神祭開催前日ともなれば、老若男女問わず、皆が皆、準備に勤しむ。
わいわいと騒ぐ子供の声。
酒を飲みながら笑うおっさんの声。
祭りのための料理の材料を買う女性。
全てが合わさり大変騒がしいが、それは聞いていて心地の良い騒がしさだった。
装飾を施された屋台や建物の明るさ。久しぶりに見る太陽の明るさ。そして皆の笑顔の明るさが、まさに『祭り』という雰囲気を醸し出している。
そして、その祭りの雰囲気をぶち壊す三人の人物がいた。
一人は俗に水魔帝と呼ばれる人物。
手に着けた十個の指輪が全て土により光を失い、リングに石ころをくっ付けているようにしか見えず、その姿はかなり滑稽なことになっている。
だが、その顔に浮かべた笑顔は消えず、それも相まってかなりの気持ち悪さになっているせいか、先程から女子供の中に、泣くものや、叫ぶものがいて、もうなんというか無茶苦茶である。
もう一人は伝説のアリシナの悪魔と呼ばれる者の娘。
服は土だらけ。最初は可愛い服だったのかもしれないが、その土のせいか奴隷の服のようになっていて、手も何か硬いものを何回も殴ったのかのようにボロボロで奴隷感が体中から滲み出ているため、先程から人たちが軽蔑の眼差しでこちらを見ている。
最後の一人は俺。特に称号も何もない、普通の一般人だ。強いて言うなれば水、草、土、雷という基本の五つの内、炎を除いた四つがA級というのが自慢できる点である。
後、剣術も嗜んでいる。
俺の格好は……言うまでもないだろう。
とにかくボロボロだということさえ分かっていただければそれでいい。
さて、ということで土と泥で汚れた俺たち三人は、イァードタウンの人にジロジロと見られながら、道を歩いていた。
宿を、探すのだ。
とにかくベッドでゆっくりと寝たいというのが三人共通の目的だった。
だからこそ、宿はすぐに見つかった。
俺たち三人に出来ないことはない。この数日間の穴掘り作業でわかった。
俺たちが力を合わせればなんだって出来るのだ。
その後、見つかった宿で俺たちは死んだように眠りに落ちた。
朝、起きるとまだ空は暗かった。
前の世界の時刻で言うなら、午前四時……いや、五時というところだろうか?
昨日、寝る前に着替えを探していたのだが、半袖しかなかったため、少し肌寒い。
ブルブルと肩が震える。
「ねぇ、ジック」
すると、肩をポンと叩かれた。振り向くとそこにはミシリスがいた。
「ん……? 何だい? ミシリス」
「着いたんだよね……イァードタウン」
あれ? 意識がはっきりしていないのか。
よし、少しからかってやろう。
「うん? 何を言っているんだミシリス。ここはアッカヌ村だよ」
「え? ということは、明日から出発⁉︎ またあの穴を掘らないといけないの…………」
ミシリスはそう言いながら口に手を当て、暗い顔で今にも泣きそうだった。
「冗談だよミシリス。本当はイァードタウンに着いたよ」
「もう! ジックの馬鹿! 本当かと思ったよ! はぁ……良かったぁ」
ミシリスの安心した顔を見て、俺もイァードタウンに着いたという事実を、心の底から理解した。
「さてと……一応今日が五神祭だったよね? ということは、もう用意したほうがいいかな」
俺はミシリスに言う。
「うん、割と朝早い時間から始まって夜までやるってお兄さんから聞いたし多分そうだと思うよ」
するとミシリスはそう答えた。
「じゃあ、起こしますか。先生を」
「そうだね。起こそうか。お兄さんを」
二人でそう言ってたから、せーの! とタイミングを合わせて俺たちは言う。
「起きろー!」
五神祭の朝は始まった。




