第十三話 斧使いの山賊
三つの人影は俺に見られた事に気付いたのか、凄い勢いで走ってきた。
暗闇なので細かくはわからないが、一人は大柄で斧のようなものを持っており、他の二人は杖を持っているようだった。
物理攻撃に加えて、魔法持ちが二人……くっ、厄介だな。
初めての戦闘だ。勝てるか? いや、そんなことを考えている場合ではない。
勝てるかなんて関係ない。勝たなくてはいけないのだ。
俺はそう自分に言い聞かせ、雷を身体に纏わせた。
バチバチとした音が耳に響く。
暗闇の中での戦闘に慣れていない以上、まずは明かりが必要だ。
ならば他の魔法は使わず雷魔法だけを集中して使ったほうがいいだろう。
「雷斬」
魔法名を短く唱える。
俺は無詠唱魔法使いであるため、これだけで良い。
雷斬と言う魔法は名の通り雷で斬る技だ。
威力は低いがそのスピードは、俺の使える魔法において最速を誇る。
故に……一般の魔法使いならば、その攻撃に気づくことすらなく気絶する。
「なっ!」
大柄な男はそんな間抜けな声を出して驚いた。
それも当然だ。いきなり自分以外の二人が倒れたのだから。
思ったより上手くいって良かったぜ。
「くっ、でも一人には効かなかったか……」
俺は一応三人全員に雷斬を放ったがこの男、それに気づいてもなかったのか倒れた二人の魔法使いを阿保な顔をして見ている。
斧にでも偶然当たったか?
いや、それでも男に電撃は当たるはずだ。
ならなぜ、この男は電撃に気づいてすらいないんだ?
そんなことを考えていた時だった。
身体がガタガタと、俺の身体がガタガタと震え出した。
それは何かの警告か、はたまた森で毒にでもあたったのか、何せ急なことなのでさっぱりではあるのだが、俺はその理由をその身体で知ることとなった。
気づけば身体はくの字に曲がり、腹にはまるで車でもぶつかったかのような衝撃が響く。
その勢いは止むことは無く、身体はその威力に耐えられず吹っ飛ぶ。
どこまで吹っ飛んだのか、木にぶつかったということはかなりの距離を飛んだのはわかるが、意識が朦朧としそんなことを考えられる状況ではない。
本来ならば死んでいてもおかしくはないのだ。
雷を身体に纏っていなければ死んでいた。
あれは明かりの役割だけでなく、バリアーにもなる。
だからこそ助かったのだろう。
霞む目で遠くを見ると、男は赤色のオーラのようなものを身に纏いその右手に持った斧を今にも先生が寝ている簡易な家に振りおろそうとしていた。
唖然とし、どうしようも出来ない状況に呆然とした。
そして当然のことのように斧を持った男はその斧を振りおろした。
バキバキと家の材料となった木の折れた音が聞こえた。いや、もしかするとその中にいた先生の骨が折れた音なのかもしれないが、そんなことは考えたくもなかった。
気がつくと、身体は勝手に動いていた。
身体中のいろいろなところからダラダラと血が垂れているのがわかるが、そんなことはどうでも良い。
一歩歩くごとに足が千切れてしまいそうなくらい痛いがそんなこともどうでも良い。
ただ奴を殺さないといけないということだけを考え、そのために俺は行動していた。
だが、倒れた。
ドスンと音を立て、俺は倒れた。
手を伸ばせば男に触れるか触れないかという、本当に後少しのところで俺は倒れた。
「あの攻撃を食らい、子供にしてここまで戻ってくるその根性は、最底辺の人間である山賊の俺から見ても素晴らしいものだが……残念だ。お前はここで死ぬことになる」
男は俺を見下ろしそう言った。
俺は……死ぬのか。
「おやおや、僕の弟子に手を出すなんていい根性してるじゃないかぁ……」
背後から声がきこえた。
振り向くと、そこには優しそうな青年がいた。十本の指全てに指輪を着け、その指輪に付いた水色の宝石は月に照らされ光り、己の存在を主張しているかのようだった。
「その紅気……破壊流の人間か。中々、自分の腕に自信があるようだけど……」
そう言いながら青年は大きな水の球体を創り出し、それを地面に放った。
放たれた水の球体は地面を砕き、壊し、そこに月のクレーターような、巨大な穴を発生させた。
「水魔帝の弟子に手を出したことを後悔するんだな」
俺の先生、ガル・オノミリはそう言った。




