十六夜
目を開けると白というよりは黄色に近い光が埃に反射して
窓から光が射している
良く見ると天井にある電球の位置が違う
カーテンも可愛らしいピンク色
絨毯も・・・
「気付いた?」
そう言ったのは彼女だった
その顔は少し不安げにそして少し安心した顔をしていた
彼女を見てすぐに気付いたのはここが彼女の部屋だということ
ではなく、俺はあの時倒れたということだった。
「俺、もしかしなくても倒れたのか・・・迷惑かけたな」
彼女は少し戸惑いながら答える
「ううん、迷惑かけたのは私だよ・・・そうでしょ?」
俺は彼女が俺に迷惑をかけてしまったと思った理由を
探したがどうも上手く見つからなくて俺は少し悩んだ
「いや俺は迷惑なんて思ってないよ、それに瀬戸さんじゃなかったら
俺はこの病気について話したりしないから」
そう言った時に瀬戸さんの後ろにある鏡をみて驚いた
それこそ本当に40代程の年齢を感じさせる顔になっていたのだ
自分でも驚いているのに彼女はそのままの笑顔で
「ありがとう、もしね迷惑じゃなかったら朝ごはん食べていかない?
って言ってもねもうお昼なんだけど」
そう照れながらいう彼女に心浮かれた俺はその提案にのることにした
大した料理では無かった特別凝ってあるわけでも無かったけれど
彼女の作るご飯はとても温かくそれは最近では味わうことも感じることもなかった気持ちに出会った
それがなんという気持ちかは分からないけれど
やさしい気持ちになれたというのは確かだった
「こんな簡単な料理でごめんね、おいしくなかった?」
不安げに聞く彼女のその不安を払いたくなり
「そんなことないよ、最近コンビニのお弁当しか食べて無かったしさ
温かい料理は久しぶりに食べて本当においしかったよ」
よかったと彼女は少しつぶやいた
少しそのとき頭痛が起きたせいで少しふらついた
彼女に気付かれないように今日は帰ろうと思った
「もう帰るとするよ」
そう言って玄関から外に出ようとしたときだった
彼女の呼び声に振り返った瞬間
彼女の唇と触れ合った
それはあたたかくそれ以上に数え切れない程の思いが立ち込めた
「ごめん、迷惑・・・だったよね?」
その言葉が聞こえながら気持ちを抑えきれなくなり
逃げてしまった・・・
次の木曜日謝ろう
そう思ったが・・・
次の木曜日もその次の木曜日も彼女は来る事は無かった。
それまで霧が晴れたような日々にまた陰りを感じた
彼女の家の前で待ったこともあったが彼女が来ることはなかった
そうして家から出る回数はかなり減った
彼女が来てるかもと思うと外に出ようとも思ったが
その一歩がどうしても踏み出せずにいた