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新月

俺はもう死ぬんだな・・・背中に温かみを感じながら走馬灯を見た。


普通だった、多少性格や趣味が変わっていたが普通という言葉が

しっくりくるだろう。

友達も自分で言うのはどうかと思うが多いほうで仲もよかった。

学生時代から多くの友人と旅に行くのも好きで良く友達と海外にも行った

イギリス、フランスそれにアメリカ様々な国の人々の優しさを感じた

本当に良い思い出だ。


しかし二十五を過ぎた夏のある日・・・俺の体は変化していった。


手先が器用だった俺は工業系の大学に進み電気製品系の会社に入ったものの毎日上司のご機嫌うかがいばかりで、

手先の器用さが生かされる職場ではなかった。


偉そうな顔とシルクの高価そうなスーツを着込んだ

いつもの五代目社長の怒鳴り声が社内に轟いていた。

その矛先は自分である。その声は俺の脳まで揺らし

その場に倒れこみ意識を失った。

意識を失った原因は社長のせいであり、まったくもって社長のせいではなかった。

病名・・・アレルギー性コミュニケーション

他人とのコミュケーションに対して免疫反応が働き

肉体的老化や障害などを引き起こすという。

所謂普通のアレルギーなら死をもたらすほどのものではないはずだが

このアレルギーに関しては難しい言葉で言えば自己免疫疾患

簡単な話でいえば、排除すべきだと考えたもの以上のものにまで

攻撃を加えるといったようなものだ。


しかし考えれるだろうか、他人との関係を一切持たずに生活するということが

恐らく不可能だ、だがやらねばならないやらなければ死んでしまう

しばらく思いつめたが考えるのがどうしようもなく嫌になった俺は

考えることと会社を同時に辞めた。


夏の暑いある日部屋で一人、内職をする男が一人居た

そいつはひどく汗を掻きながら

暑い暑過ぎるの連呼だ・・・そうその男とは俺だ。

いやひとつ否定しておくと決して暑いのが好きなわけではない

そうむしろ嫌いなほうだが内職でお金があまりないというのと

コミュニケーションに対する異常なまでの免疫を持っているせいで

故障したクーラーを直せずにいたからだ

まったくドキュメンタリー番組にすれば売れるんではないかと

考えたこともあったが、それこそ俺の命を売るようなものだと思い

少しため息をついた。

本当に笑える話だ、恐らく他人に起きた不幸だったならば

だが本当に笑えない・・・笑えないどころか困ることばかりだ。


ある日のことだが、あまりのお金のなさに親に頼るのは不本意だったが

仕方が無く電話をした後に、鏡を見ると二十七の顔が

30代半ばの顔になっていたときは幽霊でもでたのかと

驚いたこともあった。

ちょうどその夜だった、深夜3時頃のコンビニ人が居ない時間を見計らってそそくさと品物を取る。

店員がひどく怯えている。原因は俺だろう

黒い遮光性のサングラスに白いマスクと茶色のニット

一言で言えば強盗、ここから金を根こそぎ奪い取って

ちょっとでも楽な生活をしよう!と思っているわけではない

そう少しも微塵もそんなことを考えているわけではない

これは知り合いに偶然出くわしても自分だと思われないための方法だ

夏の暑い日にこの格好は恐らく恐怖を招く以外に他ならないだろう。

知り合いにもし出会い、長々と話をされた日には俺の命はすぐにでも

消え去る可能性がある。

そういうことを考えながら無言でお金を渡し

すばやく外に出た時だった、鈍い音をして何かとぶつかった。

それは女性だった。同年代より少し下くらいの日本美人で

長い黒髪と白のワンピースが良く似合うきれいな人だった。

あたった衝撃のせいだろう、彼女の髪の毛がなびくのと同時に

俺のサングラスとマスクが落ちたが、まったく気にすることもせずに

その場から無言で立ち去ってしまう俺が居た。

そのサングラスがブランド物だったということよりも

もう少し彼女に対して気の利いた言葉の一つや二つかけてあげるべきだったと

反省をしながら独り言をつぶやきながら一人で帰った。



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