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最終話「名前を呼ぶ世界」


 ――静かな朝。

 どこにでもある街。

 人がいて、空があって、風が吹く。

 だが――少しだけ違う。

 誰もが、ちゃんと“相手”を見ている。

 流れ作業のような関係じゃない。

 一つ一つの出会いに、意味がある。

 

「……」

 影山は、空を見上げる。

「終わった……のか?」

 

「終わりじゃないですよ」

 

 隣から声。

 振り向く。

 

 そこに――ユイがいる。

 

「ここから、始まりです」

 

 少しだけ、柔らかく笑う。

 

「……消えなかったな」

 

「はい」

 

 ユイは、自分の胸に手を当てる。

 

「ちゃんと、ここにいます」

 

「……そっか」

 

 影山は、少しだけ照れくさそうに笑う。

 

「なあ」

 

「はい?」

 

「もう確認するなよ」

 

「え?」

 

「お前は、“選ばれたからいる”んじゃねえ」

 

 まっすぐ言う。

 

「“自分で選んでここにいる”んだろ」

 

 ユイは、一瞬驚いて――

 それから、ゆっくり頷く。

 

「……はい」

 

 その答えは、強かった。

 

 空の向こう。

 かつて“観測していた存在”は、もういない。

 

 あるいは――

 

 この世界の中に、溶けた。

 

 誰かが誰かを見るたびに。

 誰かが誰かを選ぶたびに。

 

 “観測”は続いている。

 

 だがそれはもう――

 

 ただの記録じゃない。

 

 “関係”そのものだ。

 

 影山は歩き出す。

 ユイも、その隣を歩く。

 

 特別じゃない日常。

 

 だが確かに――

 

 自分たちで選び取った世界。

 

完結

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