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小さなヒーローは、きっと私だけの魔法使い

作者: 澪ナギ
掲載日:2026/04/10

 大好きな親友に食べ物を渡すと、必ず言うことがある。


「カリナ半分する?」


 嬉しそうにそう言うから、かわいくて。より喜ぶ、「半分」を選ぶ。


「お願いしますわ」

「♪」


 頷けば、やはり心底嬉しそうに微笑んで。渡したお菓子を半分にして私に渡してくれた。


「はい…」

「ありがとうございます」


 いただいた半分のお菓子を、口に含みながら。


 ふと頭によぎるのは、そっくりだけど正反対の兄。


「……」


 兄はどちらかというと一人が好きな印象がある。

 もちろん、誰かといることも嫌いじゃないのも知っている。リアスを始めとして誰かといることが多いし、面倒見もいいからよくそばで見ていてくれる。


 けれど単独行動も多くて、ふらっと一人、どこかへ行ってしまうことも多い。


 本心はどうかはわからないけれど、どことなく一人が好きなんだろうなという印象があって。

 血がつながっていながら、たまに。心の距離を感じることがあった。


「……」


 その心の距離は、きっと隣でもぐもぐとおいしそうにお菓子をほおばっている親友にとってはあってないようなものなんでしょう。兄がこの場にいたら、私にしたように、彼女は兄にも半分こをする。

 それもあってか少しだけ、ほかの人よりわかりあっているように見えた。


 いいな、というのが正直な感想なのかもしれない。


 クリスティアと同じじゃなくても、ほんの少しだけ。兄の心の壁みたいなものに、許されたら。


「……」

「…あそぶ?」

「……あそぶ前に、聞いても?」


 黙っている私を見かねたクリスティアに聞かれて、私も質問を返した。それに、彼女はのほほんと「いーよー」と笑ってくれる。

 それに、「ありがとうございます」と言ってから。


「……魔法の言葉の一つを、借りてもいいかしら」

「?」

「……仲良くなれる、半分この魔法を」


 実際、私とクリスティアとの距離が縮まったのもこの半分こがあったからだと思うから。

 その魔法を、少しでも借りれたら。


 ちょっとだけ緊張をして、返答を待っていたら。


「…クリス、魔法使いじゃない…」


 なんて言葉が返ってきてしまった。

 ちょっと思っていた返答とは違いましたわ。


「びっくりしますわ」

「わたしもびっくり…。魔法使いみたいに言うんだもん…」

「そこまでは言っておりませんけれども」


 あぁでも。


「……あながち間違えでもないのかもね」

「魔法使いじゃない…」

「押しますねそこ……」


 だって。


「みんながやさしいだけ」


 そう、大好きな親友は言った。


 半分こに応じてくれること、あそんでくれること。

 それはクリスティアが魔法を使っているんじゃなくて。


 わたしたちがやさしいから、成立しているだけと。


 この子はどこまで大人なんだろう。子供のようなのに、その考えにいつも驚かされるわ。


「……」

「でもね」

「はい」


 驚いているのもほどほどに、クリスティアが口を開いたので耳を傾ける。


「カリナが使えば、魔法になるよ」

「私……?」

「カリナの笑顔があるから。ちゃんと魔法になるの」


 だから、行っておいで。


 そう、ポケットから何かを出しながら――ちょっと待ちましょうか。


「あなた何持ってるんですか」

「さっきもらったお菓子と同じお菓子…」

「あなたも持ってたんです?」

「先にカリナが持ってきて渡してくれたからそっち半分にしようかなって…」

「あなたと私で一個ずつで成立したのでは??」


 わざわざ半分にすることもないでしょうよ今回は。この子本当にいろいろ驚かされる。

 また驚いている中で、クリスティアは「でも」と言った。


「役に立ったでしょう…?」

「結果的にですわね……」

「結果、オーライ…おわりよければなんとやら…」

「そのことわざはリアスに教わってきなさいな」

「もう一個持ってるからリアスと半分こしながら教わってくる…」


 あぁあとで死にそうな顔で集まるのかしら。何個持ってるのと言うより幼馴染の心配をしながら。


 クリスティアの手にあるお菓子を受け取りつつ、立ち上がる。


「とりあえず、こちらはありがたくいただきますわ」

「うん…がんばってね」

「はいな」

「…」


 では、と行こうとしたとき、小さな声が聞こえる。

 それに、微笑んで。


「ありがとうございます、クリスティア」


 後押しをしてくれた親友にお礼を言って。

 部屋の中で薬草の本に溺れているであろう、兄のもとへ向かった。



『小さなヒーローは、きっと私だけの魔法使い』/カリナ


おまけ

カリナ「レーグーナ」

レグナ「んー?」

カリナ「お菓子、半分こしましょう」

レグナ「なに、クリスの真似?」

カリナ「クリスから伝授された魔法です」

レグナ「なにそれ」


 笑いながら食べてくれました。


 そして数百年後。


カリナ「……兄のスキンシップが恋人のようになっているんですが」

クリスティア「仲良しの魔法、効いてよかったね」

カリナ「方向性合ってます??」


 いけない方向に行きそうで不安。




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