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第65話

「そんなことないです。私は、正しいことを迷いなく貫くレイリー様を尊敬しています。」

私の気持ちを知ってもらいたかったから、レイリー様の言葉を遮るような言い方になってしまいました。

レイリー様は顔を左右に振って否定すると、言葉を続けました。

「私が殿下の婚約者となるために、幼い頃から厳しい教育を受けていたことを知っていますか?」

私は言葉に詰まりました。知らなかったけど、私が婚約者に選ばれたことで負の感情を抱いただろうことはわかります。

「殿下と歳の近い高位の貴族令嬢は私とエリエス様だけでしたが、グリーンウッズ侯爵は地位への執着がないお方だったので、自ずと私が婚約者になるだろうと両親は確信していたようです。そのため、物心ついた頃から私の生活は学習と稽古で埋め尽くされていました。」

何か慰める言葉をかけたいけど、どうして私が言えるだろうか。

私が選ばれたことで、レイリー様の人生を奪ってきたものが無駄になってしまったというのに…。


「私ね、実は友達がいないのよ。」

確かに一匹狼の印象が強いけど、そんなことってある?

こんなに完璧な侯爵令嬢と友好関係を結びたい令嬢は山ほどいるはずなに。


「あの、私はレイリー様と友達になれたら嬉しいとずっと思っていました。これまでの事情はわかりませんが、是非仲良くさせていただきたいです。」

これが今の状況で相応しい言葉なのか自信もないけど、どうしても伝えたかったのです。


「最後まで話を聞いても、そう思ってくれていたなら是非友達になってください。」

何故だろう、レイリー様は自嘲気味に言いました。


「私は可愛い気のない子供だったと思います。頭でっかちで融通がきかないから、仲良くなろうと近づいてきた令嬢にも、不道徳な発言や行動があれば無神経に厳しい指摘をしていたのです。今ならわかりますけど、嫌な気持ちにさせることも多かったでしょうね。」

「レイリー様は正しい指摘をされていたのですから、気にすることはありません。」

「それでも、私の周りに貴族の子息令嬢は寄りつかなくなっていきました。孤独を感じることはありましたが、エリエス様も友達がいないと伝え聞いていたので、私は卑しくもそれを理由に心の平静を得ていたのです。」

また私が絡んでいる話で、うまく慰める言葉が思いつかない…。


「エリエス様を同等の存在のように勝手に思っていましたが、殿下がエリエス様を選んだと聞いたとき、私は殿下は見た目だけで判断したのだと決めつけました。エリエス様は見目麗しい令嬢と聞いていましたが、対して私は眼鏡をかけたきつい印象の見た目でしたし…。私は自分の内面の醜さから目を逸らし、殿下の決断を侮辱していたのです。」

殿下が見た目でエリエスを選んだのは間違ってないのだけど、それが正しい判断だったというほど私も馬鹿じゃない。

何を言っても、『結果的に私の方が優れていたから選ばれた』と言っているようになってしまいそうで、何も言えないよ。


「王立学校でアニーさんやシェリーさんと接するエリエス様を見て、私は全て納得がいってしまいました。過去のエリエス様は信用ならない他者を寄せ付けなかったのであって、私は他者から煙たがられていただけだったと。全く同等な存在などではなかったのだと。そう理解してしまえば、殿下がエリエス様を選んだのも当然のことだったと思えました。」


「レイリー様は、同じように崇高な志をもつ人と友好関係を築けばいいのではないでしょうか。私はレイリー様から離れていった人たちは、単にレイリー様に相応しくない人たちだったと思います。」

私はレイリー様を勇気づけようと言葉にしましたが、何かそれも見当違いな言葉だったように感じました。


「それでも、私が一人であることに変わりはないわ…。」

だったら私が友達になると言っても、同情しているだけに聞こえそうで言えませんでした。


「婚約者も決まらないままでしたが、オーウェン様がご回復されたことで、お母様は公爵家との婚約を思い描くようになりました。毎日のようにオーウェン様と交友関係を結んでくるように言われていましたが、オーウェン様の好意はエリエス様に向いていることが明白でしたし、話しかけることも躊躇していました。今日はダンスに誘うよう、お母様からきつく言い含められていたので、勇気を振り絞りましたが予想通り断られてしまいました。」

私は家格も釣り合うし2人が上手くいけば悩みの種が解消されると思ったことを、今になって不謹慎だったと後悔しました。


「オーウェン様はレイリー様のことを知らないだけです。これからレイリー様を知っていくことで変わっていくと思います。」

オーウェン様の好意が私に向いているのに、こんなことを言っていいのか悩みましたが、レイリー様が素晴らしい人だと心から思っているから伝えることにしました。


「そういう可能性もあるかもしれませんが、もうオーウェン様に近づくことはしません。そもそも、ダンスに誘うこと自体、オーウェン様に対して不誠実だったのですもの。」

不誠実ってどういうこと?何も問題ないと思うのだけど。


「何か問題があるのでしょうか?」

私の疑問を受けて、応えるべきか悩んでいるようでした。


「私は、オーウェン様どころか男性に魅力を感じることができないのです。それどころか女性に対して性的な魅力を感じてしまうのです。気味が悪いでしょう?私は異常者なのです…。」

最後は言葉が震え、レイリー様はボロボロと泣き出してしまいました。



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