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第56話

神託の内容は瞬く間に国中に広がっていきました。

エルネシア様が見守ってくれているという話は、この世界を生きる人々にとって想像以上に心強いものだったみたいで、各地に日常が戻っていきました。


少し予想と違ってしまったのは、教会の権威が失墜しなかったことです。

根拠もなく終末論で国民の不安を煽ってお布施を集めたことで、非難の対象になると思っていたのになぁ。

結果的に、エルネシア様が聖女に祝福を与えて、世界を覆った闇を払ったという認識が広まったことで、教会の主張した『世界を終末から救ってもらうため、エルネシア様へ祈りを捧げる』が、嘘ではなくなっちゃったのよね…。

シェリーの状況を改善できたから、まぁ、いいけどね。


シェリーは王立学校の夏季休暇が終わるまで、王宮の客室で寝泊まりすることになりました。

協会側からは戻るように通達が来ているみたいだけど、王家としてこの度の功績に応えるため、もてなしたいとの建前でお断りしてくれているみたい。

私からも、陛下や殿下にシェリーを匿ってあげてほしいとお願いしておいたので、夏季休暇終了まで王城に住んで、学校が再開したら寮生活に戻るという予定です。


私はというと、かなり困っています…。

あの広範囲発光現象によって、過去最高にエルネシア様に愛された聖女として噂が噂を呼び、巡礼者が次から次へとグリーンウッズ家にやってきて、正門の前で祈りを捧げていくのです。

前世の聖地巡礼を思い出したけど、観光地でもない侯爵邸にとっては迷惑でしかないのよ。

使用人の人たちも屋敷を出入りする度に、巡礼者たちから「聖女様は息災ですか?」みたいな質問攻めにあっているみたいで業務妨害もいいところだし、当然私も外出する気になんてなれない状況なんだよね。

せっかく夏休みなのに、軟禁状態です…。


そんな状況でも、午前中のお稽古に同席し、午後は書庫で学習するためにアニーが毎日来てくれるのが私にとっては癒やしになっています。

王都の様子を聞けたり、一緒にお菓子を食べながらお茶を飲んだり、毎日友達と過ごせるのは学生に戻ったみたいで嬉しいものです。


そんな生活が一週間ほど続いた頃、嬉しいけど困ってしまうことが起きました。


一日を終えて私が眠りに落ちたとき、私はあの何もない空間に立っていました。

目の前にはエリエスが立っていて、なにやらモジモジしています。

「エリコ、私ね、アニーとお話してみたいの。」


そっか、植物の話ができる友達ができたのだから、そういう気持ちがでてくるのは自然だよね。

エリエスがまたここから出てみようと思ったことは本当に嬉しい。

嬉しいのだけど、私はどうなっちゃうのか不安だし、中身が入れ替わったらアニーも異変に当然気づくはず。

わからないことで悩んでいても仕方ないので、私は入れ替わりの仕組みについてエリエスに聞いてみることにしました。


「ねぇ、エリエスはここから自分の意思で自由に出ることができるの?」

「前は、出てみようと思ったら、体にもどっていたからできると思う。」

「そうなんだ、そうなると私がここに残されるのかな?」

「たぶんそうなると思う。エリコは嫌?」

エリエスが少し不安そうに聞いてきました。

せっかく自分の意思で生きようとしているのだから止めるなんてできないけど、やっぱり不安で…。


「嫌ではないよ。エリエスがここから出ようと決意したのは本当に嬉しいの。ただ、私はここに一人で取り残されたことがないから怖いだけ。」

「エリコが起きているときは、同じように見えているし聞こえるし感じられるから怖くなかったよ。」

そういう感じなんだね、それは少し安心だけど。

「ねぇ、私がここを出たいと思ったら、やっぱり入れ替わるのかな?」

「それはわからないけど、そう願ってくれたら体を返すよ。」

エリエスは、当たり前のことのように大事なことを言いました。


私は今後ずっとここにいないといけないのかもと思っていたのだけど…。

「えっと、エリエスはそれでいいの?」

「うん、アニーと話してみたいだけだから。それに、アニー以外と話すのはまだ怖いの。」

そういう感じなのね。確かにスモールステップで慣らしていかないと危険だと思うし、そういうことなら大歓迎です。


ただ、アニーを混乱させるのも本意じゃないのよね…。

「一つ提案なのだけど、私たち多重人格ということにしない?」

「多重人格?」

「一つの体に複数の人格が存在するっていう状態のことなんだけど、アニーにそのことを説明して、理解してもらったうえで入れ替わったほうがいいと思うの。」

エリエスは少し考えてから答えました。

「うん、私はエリコみたいに上手にお話できないから、それがいいと思う。」

「よかった。それなら明日アニーに説明するから、それが済んでから入れ替わってみましょう。」

「うん。」


エリエスの返事を聞いた後、空間に光が差して眩しいなと思っていると、私はカーテンの隙間から差し込む朝日で目を覚ましました。

寝不足な感じはないけど、時間間隔が違うのかな?


そんな疑問も抱えている心配事が上塗りしていきます。

さて、うまくアニーに納得してもらえるかな…。


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