第54話
シェリーは2人揃って真実を公表することには賛成してくれたのですが、一緒に神託を受けたことにするというのは、エルネシア様のことで嘘をつくことになり気が進まないみたいでした。
なんか私はここまでエルネシア様のことをいいように使って嘘を重ねてきたので、だいぶ麻痺しているのよね。
よく考えたら、こんな嘘つき聖女は嫌だなと自己嫌悪しました…。
そういう訳で、私が神託の内容を公表し、シェリーは同席して私の言葉を支持するという役目を担うことにしました。
夜も遅い時間だし、シェリーを教会に帰すのが心配で、私はこれからのことを提案してみました。
「ねぇ、シェリー。夜も遅いし、今夜は泊まっていかない?」
驚いたシェリーは、迷っているようでした。
「すごく魅力的なお誘いなのですが、着替えも何も持ってきていないので遠慮しようと思います。」
うーん、まぁ簡単に『ありがとうございます』とは言いづらいよね…。
「私ね、シェリーは暫く教会に戻らないほうがいいと思うの。もし戻ったら、王家に協力しないように説き伏せられたり、最悪監禁されたりしないか心配でならないのよ。」
私と2人きりで会わせたくなさそうな対応だった教皇のことを考えると、ついつい悪い未来を想像してしまいます。
シェリーは考え込んだ後、ポツリと言いました。
「ないとは言い切れないかもしれません…。」
「シェリーが心配している孤児院や学校については、もし教会が支援を打ち切ったときには王家から各地の領主に通達を出してもらって、運営を継続させることも可能だと思うの。」
「そこまでのことをしてもらったら、今度は王家に捕らわれてしまわないでしょうか?」
シェリーは今までの行いを後悔して、権力者のいいなりになるのは避けたいみたい。
「まぁ、教会だって支援の打ち切りはできないと思うわ。そんなことをしたら教会の評判は地に落ちてしまうもの。それに、王家のいいなりになるなんて、それこそ心配いらないわ。陛下も王妃様もいい人だし、次の王妃は私だもの。シェリーの嫌がることなんて絶対にしないと神に誓うわ。」
私はシェリーを安心させたくて、極力明るく言葉を重ねました。
「聖女であるエリエス様がエルネシア様に誓うというなら、疑いようがありませんね。」
シェリーの笑顔がやっと見られました。
「では、泊まっていくということで決定ね。今夜はガールズトークで盛り上がりましょう!」
はしゃぐ私をみて、シェリーは笑い出しました。
「エリエス様は立派なお貴族様に見えたり、お茶目な庶民の女の子のようだったり、救国の聖女のようだったり、本当に素敵な人ですね。私は、そんなエリエス様とお友達になれたことを心から感謝します。」
「私も、何にでも一生懸命で、人の道に反することは嫌いで、誰に対しても優しくて、責任感の強いシェリーと友達になれたことを心から感謝しているわ。」
私の言葉に顔を赤くして照れているシェリーは、本当にかわいい女の子で、真のヒロインでした。
私は夜のうちに王家に神託の内容を国民に公表したいと書状を送りました。
驚いたことに、就寝していてもおかしくない時間だというのに王宮に来るように召喚状が届きました。
私のパジャマパーティーでガールズトークの予定は、もろくも崩れ去りました…。
私とシェリーだけでは心配だといって、お父様とお母様も付き添ってくれました。
お父様が生活リズムを崩してでも、私のために行動してくれているのに正直なところ驚いています。
なんか、変わってきている?
私の知識ではASDは生まれもっての特性で変わらないものという認識だけど、前世の世界とは違う世界なのだから、変わったっておかしくないのかもしれない。
そう思うと、私の家族はもっともっと幸せになっていけるような気がして嬉しくなりました。
それに、お父様が変われるならエリエスだって変われることになる。
私の心の中に希望の火が灯りました。
私は馬車の中で両親に、王宮では両陛下と殿下に、神託の内容を伝えました。
全部を話すことはできないので、以下の6点に絞りました。
①終末論は間違いであること。
②創造神は別の世界に旅立ったこと。
③創造神がいなくなったことで精霊が自由になったこと。
④闇にのまれた現象は闇の精霊が悪さをしたこと。
⑤昼が短くなっていくことはないということ。
⑥エルネシア様は聖女を通して世界を見守る存在であること。
少し私の脚色が入っているけど、大筋は間違っていないはず。
私もシェリーを見習って、嘘は控えようと思いました…。
神託の内容を聞くと、皆一様に驚きます。
まぁ、創造神とエルネシア様が別の存在となると、聖典が間違っていたことになるんだから大騒ぎだよね…。
王家としても民衆の不安をなんとかしたいところだったので、渡りに船といったところだったのでしょう。
なんと翌日には、聖女がエルネシア様から神託を受けたため、王都の広場でそれを国民に伝える場を設定してしまいました。
中学の時、朝礼台に上がって生徒に注目されただけでも緊張で足が震えたのに、国民の注目を集めて話をするなんて私に耐えられるのでしょうか…。




