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第53話

シェリーが落ち着いたところでシエナに席を外してもらい、私は考えていた作戦を共有することにしました。


「ねぇ、シェリーは神託を受けたことはある?」

もしかしたら、シェリーもエルネシア様から何が起きたのか伝えられたかもしれないと思って確認してみました。

「いえ、私は神託を授かるような経験はありません。もしかしてエリエス様にはあるのですか?」

シェリーの様子を見る限り、経験がないのは確かだと思いました。


「実は、あの闇にのまれたとき、私はエルネシア様から何が起きているか教えられたの。」

シェリーは驚いて言葉を失っているようでした。


さて、どう説明しようかな…。真実の中に多少の嘘を混ぜないといけないよね。

シェリーに嘘をつくのは心が痛いけど、シェリーも幸せにするために必要と覚悟を決めました。

「聖典にはエルネシア様が創造神と記されているけれど、実は創造神は別の存在だとおっしゃられたわ。創造神様がこの世界を去ったために、その眷属である精霊たちが自由に行動するようになったらしいの。それで闇の精霊が悪さをしたと教えてくれたわ。」

創造神は『細腕聖女の奮闘記』の著者で間違いないし、世界が切り離されたから創造神が去ったというのも間違いではないよね。

闇の精霊の怒りをかったという噂話も利用させてもらったけど、実際に精霊が暴れ出すかもしれないようなことをエルネシア様も言っていたから、ありえる範囲の嘘だと思うし。


シェリーはあまりにも自分の信じていたことと違う事実を突きつけられ、動揺しているようでした。

「あの、それではエルネシア様はどういった存在なのですか?」

シェリーが自分の立つ土台を崩され、それでは聖女と呼ばれる自分は何者なのかという答えを求めます。


「エルネシア様は、創造神様によって生み出されたそうです。私やシェリーのように神に祝福されて生まれ落ちた人間を見守り、力を与えるのが役目だとおっしゃったわ。」

この辺りは全て真実だから、自信をもって話すことができました。


シェリーはじっと私の目を暫く見つめ、深く息を吐きました。

「エリエス様はすごいですね。神託どころか、エルネシア様と会話されたとは。」

シェリーが少し寂しそうな目をしたのは、自分にはエルネシア様から言葉をいただけなかったからなのかな?


「エルネシア様はシェリーのことも愛し子として心配していたのよ。見守っているとも言っていたし、私にシェリーのこともお願いされたわ。」

私の言葉に安堵の表情となったシェリーは、手を合わせ祈りを捧げました。

孤児として大変な幼少期を過ごしたシェリーにとっては、教会の教えやエルネシア様は心の支えだったのだろうと思います。


祈りを終えたシェリーは、何かを思い出したように不安な表情になりました。

「闇の精霊の話が本当だったのでしたら、これから夜の時間が長くなっていくというのも本当なのでしょうか?」

「そういうことはお聞きしなかったけど、今後は精霊のような力あるものが自由に動きだすということを懸念されていたわね。」

「そうなのですね…。」

まぁ、不安になるよね。そんなことを聞いたら。


「ねぇ、シェリー。私たちはエルネシア様の寵愛を受けた者として、やるべきことがあると思うの。」

私の言葉にシェリーは顔をあげ、聞き漏らすまいとしています。

「私たちは人々の不安を取り除く使命があると思うの。不安を煽ってお布施を回収するようなことに協力してはいけないわ。」

この指摘は厳しいものだと思うけど、はっきりと言ってあげたほうがシェリーも踏ん切りがつくと思うから、心を鬼にして伝えました。


傷つくことは予想していたけど、シェリーの目に涙が溜まっていくのをみて私も辛くなりました。


「でも、孤児院の子供達とか…、私はどうすればいいのですか?」

シェリーは嗚咽をもらしながら、追い詰められて私に答えを求めようとします。


「王家に支援を求めましょう。教会の今の在り方は、決してエルネシア様が求めるものではないもの。私はエルネシア様に頼まれたからではなく、あなたの友達として、あなたを教会から解放してあげたいの。」


シェリーは泣きながら、今までの自分を振り返っているようでした。


「私は、教会に捕らわれていたのですね…。恩があるからと、言われるがままに全てを受け入れていました…。ギフトで傷を癒やしてあげたくても、お布施をもらわないといけないことも嫌で嫌で仕方ありませんでした…。エリエス様、気づかせてくれてありがとうございます。」

シェリーは、溜まりに溜まった膿を吐き出すように、本当の気持ちを絞り出しているようでした。


「シェリー、神託は今日この場で2人で授かったことにしましょう。そして王家に依頼して国民を集め、真実を公表するのです。そして、みんなの不安を拭い去ってあげましょう。」

「どうして、私も神託を受けたことにするのですか?」

「聖女2人が揃ったことで神託を受けたことにした方が信憑性があるでしょう?それに、王家と協力することで教会から決別するのです。」


シェリーは私の言葉の意味を考えてから、不思議そうに言いました。

「エリエス様って、思っていたより打算的な考え方をされるのですね。」


ちょっとショックを受けました。『打算的』ね…。

まぁ、22歳の大人ですし、綺麗事だけでは生きていけないのよ。

あ、もう23歳になってるね…。


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