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第52話

世界が闇にのまれていた時間は体感で20秒ほどの短い時間だったようですが、その異常な現象が人々に与えた影響は計り知れないものでした。


終末論を叫ぶ謎の予言者が現れたり、闇を司る精霊の怒りをかってしまったため今後はどんどん昼の時間が減っていくのだという根拠のない噂が広まったりと、民衆の間で混乱が起きています。


教会は『世界を終末から救っていただくため、エルネシア様へ祈りを捧げましょう』と根拠もなく終末論を指示し、お布施を大量に集めているようです。

その活動の一環で、神様から祝福を賜ったシェリーは各所にひっぱりだこにされているみたいです。

教会は胡散臭いことこの上ないのよね。教皇は権力に貪欲みたいだし、何とかシェリーを教会から解放してあげられないかな…。

エルネシア様はエリエスとシェリーを心配していたけど、教会のことなんて全く関心がないみたいだったし…。


王立学校は前倒しで夏季休暇に入りました。

このような不安の蔓延する情勢で学業に集中するのは困難であるとの判断がなされたみたいです。


王家は原因究明と国民の不安解消のための人道支援に力を入れています。

原因は私とエリエスだけが知っている状態だけど、さすがに上位世界とかを説明するのは無理があると思うので困っています。


いろいろと考えた結果、私は一つの作戦を思いつきました。

シェリーと私が同じ神託を授かったと言って、一緒に終末論を否定するというもの。

そうすれば、国民の不安も払拭されるし、教会が根拠のない終末論を指示していたことが明るみになって、権威が失墜するかもしれない。

なかなかいい案だと思うけど、シェリーは教会のことをどう思っているのだろう。

教会に傾倒しているなら、私の案はシェリーを悲しませることになっちゃうよね。


考えても埒が明かないので、とにかくシェリーと話してみようと思いました。


王立学校が休暇中のため、シェリーは教会に身を寄せているということだったので、私はシェリー宛にグリーンウッズ男爵としてブラウン準男爵と話をしたい旨の手紙をだしました。

教会が内容を確認しそうだと思ったので、詳しいことは書かずに『聖女として』ではなく『貴族として』の立場にしてみました。

シェリーが貴族になっていたことで教会に遠慮しないで誘うことができたので、陛下に改めて感謝の気持ちを抱きました。


翌日にはシェリーからと、教皇からの手紙が届きました。

教皇のものは、聖女同士の話し合いの場に教皇や司祭を同席させてほしいというものでしたが、これに対しては、貴族同士の話し合いなので遠慮していただくよう手紙を返しておきました。

シェリーからは是非会いたいという内容だったので、侯爵家に招待する手紙を返しました。


シェリーは教会のシンボルのように扱われていて本当に忙しいみたいで、結局会うことができたのは4日後の夜となってしまいました。

迎えにだした侯爵家の馬車から降りてきたシェリーは疲れからか顔色も悪く、ひどく心配になってしまいました。

迎えに出た私の顔を見たシェリーは、目を潤ませて私に抱きついてきました。

「エリエス様、会いたかったです。」

しみじみと噛みしめるように発した言葉から、シェリーのここまでの辛さを感じ取り、私は優しく背中をポンポンと叩いてあげました。

「私もシェリーに会いたかったわ。」


客間に移動した私たちは、シエナの入れたお茶を飲みながら互いの近況を語り合いました。


シェリーは教会の上層部から、近隣の町に出向して教会で布教活動に協力するよう指示されていて、ずっと忙しい毎日を送っていたみたい。

裏では、多く献金したものほど救われるみたいな虚言が横行していて、自分が詐欺に加担しているような罪悪感に苛まれているのだという。

かといって、自分も世話になってきた教会の支援で成り立っている孤児院や市井の学校は、当然献金で賄われてきたものだから、逃げることもできず心をすり減らしていたとのこと。


話を聞くうちに私はシェリーの心の痛みに共感し、目が潤んでしまいました。

私はシェリーのもとにいき、横から包み込んで優しく言葉をかけました。

「辛かったよね。大丈夫、一緒に考えましょう。」

するとテーブルにポタポタとシェリーの涙が落ちていきました。


「エリエス様、ありがとうございます。」

シェリーは絞り出すように気持ちを言葉にしました。


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