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第49話

殿下以外の男性と仲良くしているなんて噂は危険な香りしかしない。

だって原作でも、庭師の男との逢瀬で不貞を疑われたりしたのも断罪の一因になったのだから。

これは早めにケリをつけておく必要がある案件です。

私はオーウェン様に放課後お時間をいただきたいと伝え、了承してもらいました。


アニーには先に緑化委員の仕事に向かってもらい、私はオーウェン様と約束した会議室に向かいました。

以前、殿下に案内してもらったときに使用許可の取り方も教えてもらっていたので、他に適切な場所も思いつかず消去法です。


会議室の前に到着すると、もう中に人のいる気配を感じたのでノックして入室しました。

部屋の中にはオーウェン様が寛いで座っており、私を見るとあまーい笑みを浮かべました。

ちょっと、困ります…。

『私は殿下一筋でいくと決めたガードの固い22歳女子です』と心に言い聞かせます。


「オーウェン様、お時間をいただき感謝いたします。」

「エリエス嬢と2人で過ごせるなんて、いつでも大歓迎だよ。」

なんでしょう…。私、誘惑されているの?

それとも、これがオーウェン様の平常運転?


「あの、私が殿下とオーウェン様を手玉にとっているという噂があること、ご存じですか?」

「ああ、そんな話をしている生徒がいたね。」

気づいていたのね。それなら、もう少し気を遣ってほしいよ。

「ちゃんと否定していただけましたか?」

「何でだい?そんなに見当違いな噂でもないだろう。」

へ?何言っちゃってるの?

「実際、僕はエリエス嬢に恋しちゃっているからね。」

そう言うと、魅惑の笑みとウィンクを私に向けて放ちました。

私はプルプルと震えながら釘をさします。

「私は殿下の婚約者なのですよ。そんなこと、冗談でも言ってはいけません。」

「冗談だと思うかい?命を救ってくれた麗しい聖女に一目惚れしてしまうのは最早自然なことに感じるよ。」

本気なの!?どうしたらいいのよ、この状況…。

経験値のない私にオーウェン様を諦めさせるスキルがあるとは思えないけど、とにかくこのままはマズイです。

「もし、その気持ちが本当だとしても、私がお慕いしているのは殿下ですから、オーウェン様はもう失恋しています。どうかその想いは忘れてくださいませ。」

彼氏なんていたこともない私が何言ってるのよと思いつつ、ちゃんとお断りしました。

「それもわかっているよ。だからといって、この気持ちが急に褪せることはないさ、僕の初恋だからね。それに、今後もしエリエス嬢がランディと喧嘩して婚約破棄したら僕はそのときエリエス嬢の2番目に気になる人でいたいからね。」

その発言は不敬ですと言おうと思ったとき、急に入口のドアが開きました。


「いい加減にしろ、オーウェン!」

怒りに任せて強く扉を開けたのはカインでした。

「盗み聞きとはカインらしくないね。」

私は何が起きているのか動揺しているのに、オーウェン様は余裕の笑みを崩しません。

「王太子の婚約者が他の男性と2人で密会しているなんて噂になったら困るだろう。何もなかったと証言できる人間が必要だったんだよ。」

「それで盗み聞きか?ランディに頼まれたわけでもないだろうに、ご苦労なことだ。」

オーウェン様の言葉が、カインの怒りの感情を煽ります。

「オーウェン、先ほどの発言は不敬罪に問われても弁解の余地はないぞ。」

「不敬罪か…。愛があれば乗り越えられるのではないだろうか。」

「おまえ、病気療養中に頭がおかしくなっちまったのか?」


なんか私の存在を無視して、幼なじみ2人の会話が進行していきます。


「そういえばカインもエリエス嬢に命を救われたそうじゃないか。」

「そうだよ、感謝してもしたりないほどの恩がある。だから俺はおまえのような悪い虫からエリエスを守ると心に決めている。」

「ふーん、おまえは惚れなかったのか?」

オーウェン様は試すような目をカインに向け、変なことを聞きました。

カインは顔を赤くして慌てて言い返しました。

「何をバカなことを言っているんだ!エリエスはランディの婚約者だぞ!」

「なるほど、そういうことね。」

オーウェン様は面白くなさそうに呟きました。


カインが元気に復学していたのは嬉しいけど、何なのよ!

私がいること忘れてない?


「もういい加減にしてください!オーウェン様、今後は私に関わらないでください。アニーたちだって公爵令息を無碍にできなくて困っているはずです。」

言ってやりましたとも。私だって怒るときは怒るんです。


「そんな悲しいこと言わないでくれよ。僕も1年に編入で親しい人がいないんだ。アニー嬢やシェリー嬢とも仲良くなりたいんだよ。」

寂しそうにオーウェン様が呟きました。


そんな言い方ずるい。

私は口ごもってしまいました。


「とにかく、これ以上エリエス嬢に迷惑を掛けるな。」

カインが私の代わりにピシャリと言うべきことを言ってくれました。

「わかったよ、僕だってエリエス嬢を困らせるのは本意じゃない。」

「なら話は終わりだ。」


私はカインに追い出されるように部屋を出ました。

なんか強引に終わらせられちゃったけど、まぁカインには感謝しています。

私一人だとオーウェン様に丸め込まれていたかもしれないし…。

これで解決してくれるといいなと思いつつ、私はアニーのもとへ向かいました。


会議室に残ったオーウェンとカイン。

「カイン、おまえはそれでいいんだな?」

「何のことだよ?」

「おまえらしいよ。」

カインはその言葉には応えず、部屋を後にするのだった。


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