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第47話

殿下は帰るふりをして外に出ると、護衛として帯同してきた騎士に指示を出して戻ってきました。

しばらくオーウェン様の部屋で待っていると、すごい数の騎士が到着し瞬く間にリネット公爵家を封鎖しました。

スープの調理に関わった者や運んできたメイドなど、多くの使用人が個別に取り調べを受け、使用人の住居も家宅捜索されます。

途中、外出されていたリネット公爵夫妻もお戻りになり、殿下と私は挨拶して事情を説明しました。

このときに殿下からギフトの内容も伝えられました。

殿下からは、秘密にするように指示したのに、指示した側の王家の人間が秘密を知る者を増やしていることを謝罪されました。

仕方のないことなので、「覚悟の上でここに参ったのですから、気にしないでください。」と応えました。

その後も捜査の結果を待って、オーウェン様の部屋で待機することになり重い時間が流れました。


部屋に差し込む日差しが夕暮れ色に変わる頃、状況は動きました。


オーウェン様はポーレンのポタージュスープが好きで、体調を崩す前から朝食には必ず食していたそうです。ポタージュ愛好家の私としては親近感を感じます。

そのスープを担当していた料理人の住居で、怪しい乾燥した葉が発見されたとの報告が入ったのです。

騎士の一人が運んできた小さな木箱には、見覚えのある冷血草とおぼしき葉が数枚入っていました。

殿下が私に向けて頷いたので、私は念のため鑑定してみました。


(冷血草 体内に蓄積された量に応じて摂取者の体温を下げる 少量であれば解熱剤となるが大量に摂取すると致死性の毒となる)


「間違いありません。冷血草です。」

私の言葉に殿下は怒りを隠すことなく騎士様に指示をだしました。

「その料理人から全て吐かせろ。何をしてでもだ!」

殿下が本気で怒っていて怖いよ。拷問とか行われるのかな…。

想像してしまい私は気分が悪くなって、血の気がひいていくのを感じ、ふらふらと椅子にもたれかかりました。


「ランディ、私のために怒ってくれるのは嬉しいが、エリエス嬢の前で見せる姿ではないぞ。」

オーウェン様が気遣ってくれます。

自分が殺されそうになっていたというのに、このような気遣いができるなんて紳士だなと思いました。

「すまない、エリエス。怒りにとらわれ、周りが見えなくなっていたよ。」

殿下はだいぶ気が動転していると思う。オーウェン様の前でも『嬢』をつけ忘れちゃってるもの。

私は殿下の手を両手で包み込み、いずれ伴侶となる者として殿下を支える言葉を伝えようと頑張ってみました。

「私だってアニーやシェリーが殺されそうになったとしたら冷静ではいられませんもの。大丈夫です。オーウェン様は助かりますわ。」

私の言葉に殿下の手に籠もった力が抜けていきました。

「ありがとう、エリエス。」

殿下が感謝の気持ちの籠もった緑の瞳で私を見つめる横で、もう一つの緑の瞳も、うっとりと私を見ていることに私たちは気づきませんでした。


その後、いよいよ帰れるのかなと朦朧とする頭で考えていると、公爵夫妻に呼ばれました。

もう一仕事あるみたいです。


客間の応接セットのソファーで私と殿下は夫妻と向かい合って座りました。

「アーランド、それにエリエス嬢、愚息のために力を尽くしてくれ、ありがとう。この恩にどう報いたらよいか今はわからないが、今後何があったとしても私は2人を支えることを神に誓うよ。」

目を潤ませて公爵様は感謝を述べると、深く深く頭を下げました。

「聖女様、オーウェンは助かるのですか?それとも、今後もベッドの上で生きていかなければならないのですか?」

少し前まで泣いていたのだろう。婦人は目を赤く腫らして聞いてきました。

「ご安心ください。これから冷血草を摂取しなければ次第に体温も戻っていくはずです。少量であれば、解熱の薬にもなる植物ですので。」

私の言葉を聞いて安心した婦人は、また涙を流しました。

そして私の横で両膝をついて私の手を握り、何度も感謝の言葉を述べるのでした。

「ありがとうございます。聖女様、本当にありがとうございます。」


私は聖女様と呼ばれるのに抵抗感はあったけれど、母親の深い愛情を目の当たりにして感動してしまい目が潤んでしまいました。


王家の馬車で送ってもらうと思っていたら、グリーンウッズ侯爵家の馬車が迎えに来てくれました。

公爵夫妻に会う前に、連絡するよう殿下が指示してくれていたみたいです。

馬車が到着すると、お母様とシエナが勢いよく飛び出してきました。

お母様、淑女の嗜みが…。

そんなことを思ったのも一瞬のことで、お母様が目を潤ませて一直線に駆けてきて、私を抱きしめてくれて、私は張りつめていた気持ちが緩み、泣いてしまいました。


「あぁ、どうしてエリエスがこんな恐ろしいめに…。」


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