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第46話

その後、殿下とオーウェン様の雑談を聞きながら、部屋の様子を観察していました。

部屋は広く、調度品も派手さのない洗練されたものだけれど、余計なものはなく殺風景な印象は変わりません。

お花の一つでも飾ってありそうなものなのに、それもないのです。

私が力になれることはないのかと残念に思っていると、外からメイドさんの声がかかりました。

「オーウェン様、お食事をお持ちしました。」

オーウェン様の返事を受けて、ベッドの横にワゴンを止めて、お茶を注ぐとメイドさんは一礼して部屋を出ていきます。

メイドさんが運んできたワゴンにはスープ皿とティーセットだけがのっていました。


それだけ?と思いましたが、食欲が低下していると聞いたのを思い出して言葉にはしませんでした。

スープは私が前世で使用率No.1だったホウレン草のポタージュスープ(私はインスタントですけどね)のような見た目で、たぶんポーレンというホウレン草に似た野菜を使用したものだと思います。


ポタージュスープは、ガルダ芋(ジャガイモに似てます)やボニオン(玉葱に似てます)、牛乳を使用しているので、そこに緑黄色野菜のポーレンも入って、一皿でかなりバランスよく栄養を摂取できるのでお勧めではあるかな。


「オーウェン、長居してすまなかったね。食事の邪魔になってしまうし、そろそろ帰るよ。」

殿下の言葉に、オーウェン様は一瞬悲しそうな表情になりましたが、すぐに笑顔にもどり「今日はありがとう。また来てくれよ。」と言いました。


私には植物がなければ何もできないわけで、無力感を感じながら席をたとうとしましたが、スープが視界に入って、ふと気づきました。

スープの具材も植物だ。

私の植物鑑定の能力は、手で触れたときだけ発動するから普段の食事でギフトが発動することはなかったけど、触れれば具材を鑑定できるのではないだろうか?

パンに触れて小麦と鑑定されたことはないし、ポタージュはドロドロに濾されていて原型を留めていないから無理かもしれないけど、せっかく来たのだから駄目元でやってみようと思いました。


「オーウェン様、念のためスープに異物が混入されていないか調べたいのですが、一匙分いただいてもいいですか?」

オーウェン様は不思議そうに尋ねてきました。

「エリエス嬢、どうやって調べるんだい?」

すると殿下が私の代わりに答えてくれました。

「エリエス嬢が聖女と判明したのは知っているだろう?ここだけの話にしてほしいのだけど、エリエス嬢はギフトで植物の特性を見抜くことができるんだよ。」

「なんとも珍しいギフトを賜ったものだね。では、念のため調べてくれるかい?」

「原型を留めていないので難しいかもしれませんが、やってみますね。」


私はソーサーにポタージュスープを一匙分移し、指で触れてみました。

うーん、何も浮かんでこないな…。

私は指先に神経を集中させて『神様、お願いします!』と心で祈りました。

すると、カインを救ったときの妙な脱力感を覚えたかと思うと、私の体は光の膜に覆われていました。


殿下とオーウェン様が目を瞠って私を凝視しています。

私はこのとき初めて、祝福の力を放出する感覚を掴むことができました。

そして、次々に鑑定結果が脳裏に浮かんでは消えていきます。


(ガルダ芋)(ボニオン)(ポーレン)(ガルダ芋)(ガルダ芋)(ポーレン)(ボニオン)(ガルダ芋)・・・(ボニオン)(冷血草)(ポーレン)(ガルダ芋)(ガルダ芋)


私は慌ててスープから手を引き抜きました。

冷血草!?

エリエスが保存していた薬にもなる毒草が混入している。

熱を冷ますためなら入れる意味もあるけど、オーウェン様は体温が下がってしまう謎の病気だよね。

だとしたら、冷血草こそが病気の原因なのでは?

たしか体内に蓄積された量に応じて摂取者の体温を下げる効果だったはず。

日々排出はされているだろうけど、毎日摂取しているなら治りようがない。

そもそも冷血草って普通に流通しているのか、図鑑の記憶を探りますが思いあたる知識がない。

また、図鑑に載っていない毒草…。

部屋でみつけたときに気づくべきだった。

でも、エリエスがどこで採取したか記憶にない。

やはり、これに関する記憶は共有できていないのよね。


私は大きく深呼吸して冷静さを取り戻すと、固唾を呑んで待っている殿下たちにこの事実を伝えました。


「このスープには冷血草という毒草が混入されています。」

「そんな…。私は命を狙われているのか。」

オーウェン様は信じられないとばかりに目を見開いて言葉を紡ぎました。

「オーウェン、公爵家を封鎖して犯人を突き止めるぞ。叔父上に協力を要請しよう。」

殿下の言葉に、オーウェン様は力なく頷きました。


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