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第44話

「オーウェンのことが気になるのかい?」

殿下の表情が暗いので深入りしていいか不安になったけれど、もしかしたら死という未来を変えることができるかもしれないので、これは殿下のためでもあると自分を納得させて一歩踏み込んでみます。


「病気で療養していると聞いたものですから心配なのです。」

これは緑化委員のメローナ先輩からオーウェン様のことを話題にして今日聞いた事実ですが、昨年に殿下とともにオーウェン様もご入学されたけど途中から病気を患って休んでいるというのは、2年生なら周知の事実だとのこと。


「確かにオーウェンは原因不明の病で療養を続けているが、エリエスはオーウェンと交友関係は無かったのでは?」

「はい。ですが昨日のこともあって、本当に病気なのか疑問に思っているのです。もしかしたら、私のギフトが何かの役にたつかもしれないと考えまして。」

「あぁ、そういうことか…。申し訳ない、オーウェンはご令嬢方に人気があるから、いらぬ心配をしてしまった…。」

殿下は猛省しているようです。


婚約者に気になる男性のことを聞くわけないのに…。

殿下は恋愛に関しては、かなりの心配性のようです。

私が真剣に心配しているのに、見当違いに浮気を心配したのは恥ずかしいでしょうね…。


気まずいので、話題を戻します。

「オーウェン様の部屋に怪しい植物がないか確認したいので、私も殿下がお見舞いに伺う際にご一緒させていただけませんか?」

「それは、願ってもないことだよ。今週末にお見舞いの予定を組むから、エリエスも予定を空けておいてくれると嬉しい。」

殿下から真剣にお願いされました。

私は「わかりました。」と即答しました。


翌日には殿下の言葉通り、王家から王国にもう一人の聖女が生まれていたことが発表になりました。

現時点ではギフトは不明であるが、神の祝福を受けていることは確実であり、王家が全面的に庇護することも併せて発表されました。

これについては、私が皇太子殿下の婚約者であることで、当然という見方が一般的ですが、一部の熱心なエルネシア教信者の人たちは、教会が保護すべきだと騒いでいるようです。


発表の翌日に登校すると、侯爵令嬢にして聖女、しかも次期王妃という私とお近づきになりたい貴族子女が校門付近で待機していて思わず引き返そうかと思いました。

それでも停車場で殿下が待っていてくれたので、殿下の手を借りて馬車を降りました。

お心遣い、感謝いたします。


殿下は私と並び立つと、私の手を握り、群がっている生徒たちに向けて宣言しました。

「エリエス嬢は今まで通りの平穏な学校生活を望んでいる。その気持ちを王家は尊重し全面的に支持する。」

殿下の凜々しく力ある声が響き、『安易に声を掛けるなよ』という王家からの指示だとみんなが理解したと思います。


頼りになる殿下の顔を無意識にぼんやりと見上げていたところ、後ろからアニーとシエナの「よかったですね」という小声のユニゾンが耳に入り、私は急に恥ずかしくなりました。

なんか今、私は恋する乙女のようになっていた気がする…。

エリエスに『私、恋しているのかなぁ?』と呼びかけると、トクンと肯定されて認めざるを得ないと思いました。

だって、心の繋がっているエリエスが『そうだ』というんだもの。


教室では殿下に代わってレイリー様の目が光っている感じで、いつも通りの学校生活が送れています。

シェリーも聖女に関する話題は意識的に避けてくれているみたい。

今度、シェリーとアニーと3人だけの時間をつくって、ちゃんと話したいと思います。


侯爵家に戻ると、なんと教皇様から教会へ招待する書状が届いていたので驚きましたが、帰宅したお父様が、王家を通してほしいという旨の簡素な返事を送ってくれました。

なんか、最近のお父様は頼りになります。


あと、ロードナイト伯爵様からお礼の品が届きました。

柄に大きな宝石の埋め込まれた美しい短剣で、部屋に飾るための物とは思うけど、令嬢に贈るものではないよねと思いました。

このセンスは、代々騎士の家系故のものでしょうか…。

一緒に添えてあったカインからの手紙には、丁寧に命を救ってくれたことへの感謝が綴られていました。

可能であるなら、王家より私に騎士の誓いを捧げたいとか書いてあって、カインの短絡的な思考が心配になりました。

命の恩人だからって、そんなこと書いちゃダメでしょ…。

まぁ、自分の気持ちにまっすぐなのがカインのいいところではあるけど、これはダメだよ。

ちゃんと、殿下を支えてもらわないといけないし、私よりシェリーのほうが頑張ったのだから、仮にそう思ったとしてもシェリーへの手紙に書いてほしいね。

でも、もうほぼ全快しているようなので、それがわかったのは嬉しく思いました。


思っていたような混乱もなく日々は過ぎて週末をむかえ、いよいよオーウェン様のお見舞いに行く日になりました。


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