第41話
侯爵家から王家へ書状を送ると、入れ違いに王家から召喚状が届きました。
送ったことに意味があるよね。
報告しようとしていたって証拠にはなるし。
急を要する旨が書かれていたので、私たちは家族3人ですぐに準備して王宮に向かいました。
王宮に到着すると、私たちを待っていた騎士に連れられて、玉座の間に案内されます。
叙爵の後に、しばらく来ることはないだろうと思っていたのに、間隔はやすぎだよぉ。
中に通されると、正面奥の豪華な椅子に陛下と王妃様が座っていて、その右横の奥に殿下が立っていました。
左側の手前に立っているのは宰相のフォーレス侯爵様。レイリー様のお父様なので信頼のおける人物だと思います。
皆さん、真剣な顔です。
談笑する雰囲気ではないですね、わかっておりますとも…。
私たちは玉座の前まで進んで、片膝をついて頭を下げました。
陛下のお言葉待ちです。
「面をあげよ。」
陛下の威厳のある声が響きました。
私たちは顔をあげ、お父様が口上を述べます。
「ダラス・グリーンウッズ及び家族2名、召喚状に従い罷り越しました。」
陛下は鷹揚に頷いた後、宰相様に向けて言いました。
「フォーレス侯爵、ここで見聞きしたことは他言してはならぬぞ。」
侯爵様が「はい」と返事をすると、陛下は私たちに向き直り、威厳のある顔から優しい顔に変わりました。
「3人とも楽にしたまえ。」
穏やかな陛下の声で、私は安心して肩の力が抜けていきました。
「それにしても驚いたぞ。エリエス嬢が神の祝福を受けていたとはな。」
斜め後ろで殿下も頷いている。怒っている感じはないみたいなので、ほっとしました。
「私どもも驚いております。今日までその事実に我々も気づいていなかったもので。」
お父様が代表して対応してくれるみたいで、私は胸をなでおろしました。
「もう一人の聖女に触れたことで、力が発現したということか。初めての事案だな。」
疑っている感じはないみたいで、本当によかったです。
「それでエリエスは、どのようなギフトを賜ったの?」
今度は王妃様が興味津々な様子で聞いてきました。
むむ、この質問にどう答えるか作戦会議で決めてなかった…。
「エリエスは植物に触れることで、どのような特性をもつかを知ることができるようです。」
お母様が代わりに答えてくれました。
お母様、ありがとう。もう隠さないほうが後腐れないもんね。
お父様は初耳だったので驚いたのでしょう。
チラっと私を見てきたので、私は申し訳ない気持ちを表情で伝えました。
うまく伝わっていればいいのだけど…。
「まぁ、それは珍しいギフトですね。どのくらいの情報を得られるのかしら?」
王妃様の興味は尽きません。ここは私が答えないとだよね。
「まず、名前がわかります。それに食用の可否や毒性、薬草としての適正などもわかります。」
「凄いな、そのような奇跡の力があるとは。」
殿下が思わず声に出しました。
地味と言ったシエナに聞かせてやりたいです。
「そうだわ、今日献上された花をもってくるから、あなたの力を見せてくれないかしら?」
王妃様はノリノリです。まぁ、見てみたいよね、奇跡の行使されるところ。
でもなぁ、光とか出ないから、そこは本当に地味なんだよね…。
断ることもできないので、私は「はい。」と答えました。
待つことしばし、王妃様が鉢花を抱えて戻ってきました。
王妃様、フットワーク軽いよね。侯爵家までお見舞いに来てくれるし。
「他国から取り寄せた珍しい花らしいの。」
王妃様は興奮を隠さず、笑顔で私の前に鉢花を置きました。
王妃様に初めて会ったときは緊張したけど、気さくだし仲良くなれそうです。
私は花弁の形を見てエリエスの知識から、触る以前にバタフライ・リリーかなとわかってしまいましたが、ここは触れることに意味があるからね。
地味でがっかりされそうだけど、やってみます。
まぁ、エリエスは嬉しそうにトクントクンいってますけど。
(ヴェノムモス・リリー 花粉には神経毒を含む 開花時に花粉を飛散させ虫等の媒介なしに受粉が可能 神経毒は呼吸器疾患を引き起こし摂取量によって死に至ることもある)
なにこれ!?バタフライ・リリーにそっくりだし、図鑑にも載ってなかったやつです。
「王妃様、離れてください!これは毒草です。」
場に緊張が走りました。
「ヴェノムモス・リリーという毒草で、花粉に毒を含んでいるのですが、その花粉を自ら飛散させる危険なものです。」
「フォーレス侯爵、この花を献上した者及び入手経路を徹底的に調べろ。」
厳しい顔に戻った陛下が命令しました。
「御意に。」
宰相様は一礼すると玉座の間を後にしました。
「エリエス嬢、大義であった。そのギフトについては他言せず、どのようなギフトかまだわかっていないことにするように。」
「わかりました。」
私の声は震えていました。
王家へ明確な反逆の意思をもって行動している者がいる。
それは後に輿入れする私にも牙をむくかもしれない。
私はじわじわと恐怖に支配されていくようでした。
そんな私を、お母様が優しく包み込んでくれるのでした。




