第40話
私はギフテッドだということを皆に知られてしまった経緯を説明しました。
「お嬢様と聖女様が協力すれば、重症の人でも回復させられるのですよね。誇るべきことではないのですか?」
シエナは何が問題なのかわからない様子です。
「婚約者である殿下にも報告していなかったのよ。絶対、なんで黙っていたのか問われるわ…。」
私が何を心配しているか、シエナに伝えました。
「では、知らなかったことにしてはどうでしょうか?シェリーさんに触れたことで初めて祝福を受けていたことが判明したと口裏を合わせるのです。」
さすが私のアニー。名案を出してくれます。
「でも、それならどうして逃げ出したのかって、問われてしまいそう。」
私が不安を口にすると、お母様が助言をくれました。
「突然のことに動揺してしまい、家族に相談したくなったということで問題ないと思うわ。」
ふむふむ、私がママっ子の気質があるのは、侯爵家の使用人のなかでは周知の事実だし、アロマショップ開業のときも一緒に行動していたから仲の良さは有名になっているかもしれない。
うん、大丈夫そう。
「お母様、ありがとうございます。その案できり抜けようと思います。」
私の表情が明るくなったことが、お母様は嬉しそうでした。
「ところで、お嬢様はエルネシア様からどのようなギフトを賜っているのですか?今までお光りになった姿を見たことがないのですが。」
今日初めて聞いたシエナは、素朴な疑問を投げかけてきました。
「私のギフトはね、植物に触れることで、その特性が一通りわかるというものなの。仮説でしかないけど、祝福の力を外に向けて放出しようとすると光の膜に包まれるのだと思うわ。私の場合は触れるだけでいいから、光ることはなかったのだと思う。」
「地味なギフトなのですね。」
一言多いよ、シエナ。
「シエナさん、そんなことはありません。そのギフトのおかげで、太陽の魔石という未知の魔石を発見できたのですから。」
アニーがシエナの認識を改めようとしてくれました。
「なるほど、あの庭園での不審な行動は、太陽の魔石があると確信してのことだったのですね。安心しました。」
不審な行動って言わないでよ。それに安心したってどういうことよ…。
「それに、エリエスはエルネシア様から未知の技術を授けられたこともあるのよ。強い寵愛を受けているに違いないわ。」
お母様の我が子自慢が始まりました。ちょっと恥ずかしいけど嬉しそうなので止めはしません。
「それで、これからどうしたらいいと思いますか?」
逃げ出したままという訳にはいかないもんね…。
「関係も深いですし、まず王家にはご報告しておくべきだと思います。」
アニーの言葉に、私は納得して頷きました。
「それも勿論そうですが、お父様に先に伝えましょう。当主が知らないまま進めてはいけないわ。」
お母様の意見はもっともです。
「お父様にも、今日初めてギフテッドだったことを知ったという前提でお話しすればいいでしょうか?」
「そうね、前からわかっていたのに言わなかったとなれば、気を悪くしてしまうかもしれないわ。」
お母様は相変わらず気遣いのできる人で感心します。
「神の祝福を受けていることは、教会に報告する必要はないのですか?」
シエナの疑問に、そういえばシェリーの後見人は教皇様だったと思い出しました。
そこのところは、どうなんだろう?
「それはエリエス様個人からではなくても、王家の判断にお任せすればいいと思います。それに、もう王家にも教会にも伝わっていそうな気がします…。」
アニーの想定には私も同意です。あの感じなら噂はあっという間に広がりそうだもの…。
「では、もうすぐお帰りになる時間なので、お父様に報告して、その後に王家に謁見のお伺いの書状を送るという流れでいきましょう。」
私がここまでの話をまとめると、皆は頷いてくれました。
お父様は予定より早く戻られました。
法務省まで噂が届いているなら、王家には当然伝わってるよね。
私は気持ちが沈んでしまいました。
帰宅したお父様に、「お話ししたいことがあります。」と伝えると、書斎で聞いてもらえることになったので、お母様と一緒に向かいました。
途中、私の気持ちが沈んでいるのに気づいて、お母様が私を抱き寄せて、「大丈夫よ」と元気づけてくれました。
それで実際に元気がでたので、私は結構単純なのだと思います。
お父様は私の報告を黙って聞いた後、私を見てから口を開きました。
「祝福を受けて生まれたことは喜ばしいことだが、エリエスは嬉しくないのか?」
私の表情か声のトーンで感情を判断してくれたの!?
お父様、やればできるじゃない!
私は話と関係ないところでテンションがあがってしまいました。
「あの、急に聖女などと言われて囃したてられるのは気が重いです。」
私は不安を吐露しました。
実際、聖女が2人とか、原作から完全に外れて予測できなくなっちゃうし…。
「聖女となることで辛いことがあったときは私に相談しなさい。必ず守ると約束しよう。」
その表情は相変わらず雄弁ではなかったけれど、言葉はしっかりと家族の愛情を感じさせてくれるものでした。
私は嬉しくて、初めてお父様に抱きついてしまいました。
「お父様、ありがとうございます!」
お父様は驚いたようですが、ぎこちなく私に笑顔を向けてくれました。




