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第38話

平和な日々が続き、学校生活にも完全に順応してきました。

授業内容は、入学以前に家庭教師から習ったことの復習のようなものが多く、あくびだけは絶対にしないように気をつけています。

初見の内容が多い授業は、領地経営学や刑法関係くらいでした。

私は男爵でもあり領地も所有しているので、この辺りは真剣に受講しています。


ただ、最近よく不安になることがあります。

そもそも私は、本当に未来の王妃として、その役割を全うできるのでしょうか。

全然、自信がないのだけど…。


アニーはいつだって一つも聞き漏らすまいと真剣に授業を受けているし、シェリーも時々手で覆ってあくびを隠してはいるものの、真剣に授業を受けています。

シェリーは生徒会の仕事もあるし、週末休みは聖女として教会の儀式などに参加しないといけないみたいで、とにかく休みがないのが不憫です。

3人で遊びに行こうと誘いたいけど、今のところは我慢しています。


クラスの他の令嬢とも挨拶くらいは交わすようになり、過去の『冷酷姫』の印象も払拭できつつあり、順調だなぁと油断していた頃にあの事件は起こりました。


放課後に私はアニーと花壇の草花の生育状況の確認をしながら校地内を回っていたとき、馬場のほうから悲鳴があがりました。


私は原作のあの事件が起こったのだと悟り、冷静さを保つこともできず、アニーに何の説明もせず馬場のほうへ駆けだしていきました。


事件の概要としては、騎士の必須スキルである騎乗の訓練のため、カインは乗馬クラブによく参加していたのですが、調子にのったカインは他の男子生徒たちにレースの提案をします。レースが始まり、先頭を行くカインでしたが、後続を気にして片方の手綱を放して後ろを振り返ったときにバランスを崩して落馬し、反応が遅れた後続の馬に胸部を踏みつけられ重傷を負ってしまいます。駆けつけた学校医は、肋骨骨折と内臓損傷で手の付けようがないと判断するのだけど、そこに駆けつけた聖女シェリーがギフト『生命力強化』をフルパワーで使用して一命を取りとめるというもの。

力を使い切ったシェリーはその後3日間も目を覚まさず、周囲を心配させます。

目を覚ましたときの第一声が、側にいて自分を責め続けていたカインに向けて『よかった』だったことから、その献身的な心に惚れカインは聖女を好きになってしまう。


ラノベとして読んでいたときは感動的なシーンだなぁくらいに思っていたけど、実際に重傷を負うのがよく知っているカインだと思うと胸が締めつけられるようでした。

事件自体を回避するために、カインに乗馬をやめるように言うこともできたかもしれない。でも、理由も説明できないし、騎士になるための訓練はカインにとって重要なことだもの。

私に止めることはできないよ。

それに、この事件を通して聖女の奇跡に触れた学内の貴族子女は、シェリーを侮るのをやめるようになるため避けては通れない。


ただ、原作から外れている今、ちゃんとシェリーが駆けつけてくるという保証もない。

もし、これでカインが命を落としたら、私は一生自分を許すことができないと思う。

私は走りながら、神様に必死に祈りを捧げました。


私が馬場に着いたときには人集りができていて、状況がわかりませんでした。

私は「すいません。」「すいません。」と言いながら人垣をかき分けていき、その内側に到達することができました。


中心にはカインが横たわり、ヒュゥヒュゥと不自然な呼吸の音が聞こえてきます。

近くには先輩と思われる男子生徒が寄り添い、「校医を呼んできてくれ!」と叫んでいました。

私は血の気が引いて卒倒しそうになるのを耐えて叫びました。

「シェリーを呼んできて!聖女を呼んで!お願い、誰か!」

そして私はカインに駆けより、跪いてその右手を両手で包みこみ、何度も何度も励ましました。

「大丈夫、カインは助かるわ」

「すぐにシェリーが治してくれるから」


私の言葉に気づいたカインは苦痛に顔を歪めながらも、私に向けて笑顔をつくろうとしますが、痛みから上手くいきません。


「無理しないで、大丈夫よ。大丈夫だから。」

私はこの状況を止めなかったことを後悔し、涙が止めどなく流れ落ちていきます。


永遠に思えるほどの時間が経ち、シェリーが人垣の輪の中に姿を現しました。

息を切らすシェリーに、私は余裕もなく懇願しました。

「お願い。あなたのギフトでカインを助けて!」


私の言葉を受け、シェリーは一つ頷くとカインの横で膝をつき、その患部に手をあてました。

シェリーの体が光りの膜で覆われ、私は奇跡の力を目の当たりにしていました。

その光景は、小説の挿絵とは比べものにならないほど、神聖で美しいものでした。


時間が経つにつれ、カインの苦悶の表情が少しずつやわらいでいきましたが、反対にシェリーは奇跡の力を使い続けることで苦悶の表情を浮かべるようになりました。

シェリーがバランスを崩して倒れそうになったので、私は咄嗟にシェリーの体を支えました。すると、私の体から力が抜けていくような感覚に襲われました。

そのとき光りが一層強くなったように思え、シェリーが頑張ってくれているんだと感謝の気持ちを抱いていると、人垣をつくる人たちがザワザワし始めたのが気になりました。


どうしたのだろうと顔を向けてみると、みんなが私を見ているようでした。

なんで?と思って自分の体を見て私は衝撃を受けました。


なんと、私の体も光の膜に覆われていたのです。

動揺していると光の膜は消えて、シェリーは深く息を吐き出すと「もう大丈夫です」と言いました。


あれ?シェリーは力を使い果たして気を失うはずでは…?


楽しめていただけているか不安になることもありますので、たまには☆評価や「いいね」、感想などいただけると励みになりますので、よろしくお願いいたします。

また、毎回「いいね」つけていただいている読者の方に感謝申し上げます。

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