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第37話

「レイリー様、この度はご助力いただき、ありがとうございました。」

私たちは3人そろって頭を下げました。


「こんにちは、エリエス様。私は生徒会規約に則って対処しただけですので、お礼を言われるようなことはしていませんよ。」

姿勢良く、無表情で、淡々と正義を執行する眼鏡美人。ノブレス・オブリージュを地でいく人だ。

私はレイリー様のファンクラブがあったら入会してしまいそうです。


「それでも、感謝の気持ちを伝えたいのです。私の大切な友達を守っていただいたので。」

「そうですか。では、そのお気持ちは受け取っておきますね。」

そう言うと、レイリー様はアニーのほうに視線を向けた。


「アニーさん、先ほどの伯爵令嬢にも堂々と正論で切り返したのには感心しました。人に頼るだけでなく、自力で状況を改善しようとする人には好感がもてます。あなただからエリエス様は友達として認められたのでしょう。」

アニーはレイリー様からの賛辞に自己肯定感を高められたことでしょう。

「もったいないお言葉です。今後もご期待を裏切ることのないよう努力していきたいと思います。」

アニーは力のこもった目で、真摯に応えました。


次にレイリー様はシェリーに目を移すと苦言を呈しました。

「シェリーさん、不当に責められたなら言い返す勇気も必要でしてよ。あなたはエルネシア様の加護を受けて、この国で唯一奇跡の力を行使できる存在です。ご自身の価値を自ら下げるようなことはせず、堂々としてくださいませ。」

シェリーは自分を責めるように表情を歪ませ、ただ「はい。」と応えました。


私たちは再び3人で頭を下げると、いつものテーブルに移動して食事を始めました。

その間も、シェリーは自分を恥じている様子で、元気がないのが気になって仕方ありませんでした。


その日の放課後、私とアニーは緑化委員の仕事に向かうため、シェリーに挨拶して教室を出ようとしました。

すると思い詰めたような顔をしたシェリーから呼び止められました。


「エリエス様、アニー様、今日は助けていただいてありがとうございました。」

私たちに?と思ったけど、お礼を言いたかったのなら素直に受けておかないとと思いました。

「気にしないでいいのよ。実際にはレイリー様が助けてくれたようなものだし。」

「そうですよ。私は反論してみましたが、何の効果もありませんでしたし。」

私たちが謙遜したことを、シェリーは顔を横に振り否定しました。


「いいえ、私は何もできませんでしたが、アニー様が私の手を握ってくれたことが本当に心強くて嬉しかったです。それにエリエス様は私たちの前に立って庇ってくれました。しかも貴族令嬢の嗜みに反して走って駆けつけてくれました。」

シェリーは悔しそうな顔で目を潤ませていました。


「友達なのだから助け合うのは当然よ。」

「そうですよ。当たり前のことをしただけですから。」

私たちの言葉にも、シェリーは納得がいかないようでした。


「私は守られるだけで何も返せていないことが恥ずかしいです。私だって、お二人を友達として守れるようになりたいんです。私、強くなりますから!」


それは、主人公である聖女シェリーの力強い、己の殻を破る宣言でした。

そうだよ、原作の聖女に比べて、今までは大人しすぎだったもの。

これから本来のシェリーに成長していくんだね。


私は教師だったころの気持ちがよみがえり、今後のシェリーの成長を間近で見られることを嬉しく思うのでした。



数日後、レイリー様とシェリーが生徒会役員になることが発表されました。

聖女とはいえ、平民出身のシェリーが生徒会に入ることに納得のいかない生徒も少なくはないようでした。

私たちはというと、発表の前日には、シェリーから教えてもらっていたので驚きはなかったです。原作通りでもあるしね。

そのときにシェリーは改めて決意を語ってくれました。


「私、生徒会に誘われていたのですけど、始めは断ろうと思っていました。私が何か言っても貴族の方々は無視すると思って怖かったんです。でも、受けようと思います。私は平民だってやれるってことを生徒会で証明したいんです。そして、エリエス様、アニー様と堂々と肩を並べて歩けるようになります。」


シェリーの表情は晴れやかでした。

アニーも過去の自分を重ねたようで、目を潤ませ頷いていました。


「がんばってね。シェリーの決意を私は応援しているからね。」

私もアニーにつられたかもしれません。気づくと目が潤んでいるのでした。


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