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第33話

ついに王立学校入学式の日がやってきました。

王立学校は王都の西方にあって、先日私が落水した湖のある公園地区に近いです。

貴族の子女が共に学び、交流を深める社交の練習の場でもあります。

たいていの貴族は王都にタウンハウスをもっているので通いとなるのだけど、一部の裕福でない貴族は寮に入ることになります。


今年は私の愛読書『細腕聖女の奮闘記』の主人公である聖女様、シェリー・ブラウンが平民の立場ながら特例で入学するため話題になっています。

かという私も、主人公に会えるのは楽しみでソワソワしています。

ただ、原作では私は聖女様を無視する『冷酷姫』こと悪役令嬢なので、ちゃんと会話して仲良くなろうと思います。


シェリーはピンクゴールドの髪色に青い瞳、華奢で童顔なのに出るとこ出てるという男性読者受けの良さそうな設定だった。

現実にいると思うと、男性からの庇護欲をそそりそうです。

シェリー自身は活発で正義感も強く、猪突猛進な性格だし、貴族の礼儀とかよくわからないから初めのうちは貴族令嬢から総スカンだったなぁ。

最終的にはエリエスが断罪されて、婚約者のいなくなった殿下と教会の後押しもあって婚約するというシンデレラ・ストーリーだった。

私がエリエスである以上、断罪はされない予定なので、カインあたりと幸せになってくれればいいなぁと思います。

相思相愛になれるからお勧めだよ!

でも、今のカインはアニーのことを好きかも…。


入学式は学園祭イベントのときにダンスホールとして使用された講堂で行われました。

今年から採用された女子用制服は、やはり原作と違ってシエナが選んだあの服装に決まりました。

制服に身を包んだ学生がずらーっと並んでいる光景は、本当に学生時代に戻ったような感覚になります。


シエナは、「私の目に狂いはなかったです」と鼻高々になっていたので、「私が庇っていなかったら、今頃クビになっていたかもね。」と言ってやると、シュンとして鼻は引っこんだようです。


学校長の話のあとは、生徒会長から歓迎の挨拶があって、殿下の格好いい姿を拝めました。

新入生代表の言葉は、頼まれたけど必死に辞退したところ、もう一人の侯爵令嬢であるレイリー・フォーレス様が立派に務めてくれました。

レイリー嬢は後に生徒会入りする眼鏡美人です。

脇役ではあるけど曲がったことが嫌いな性格で、一部読者からは『レイリー様』と人気があって、私も結構好きだったので、できたら仲良くなりたいです。


入学式を終えてアニーとお喋りしながら教室に向かいます。

1学年2クラス編成ですが、運よくアニーとは同じクラスになりました。

ちなみに、シェリーもレイリー様も一緒です。


教室は大学の講義室を思い出させるような段差のある構造で、3人が並んで座るように長机が設置されています。席は自由みたいだったのでアニーと一緒に最後列の窓側を占拠しました。

『冷酷姫』と呼ばれた黒歴史があるため、他の令嬢からは恐れられているみたいで、全然話しかけられないのよね。まぁ、気楽でいいけどさ…。


先生が来るのを待つ間に、初日にどんなイベントがあったか原作を思い出してみました。

たしか、シェリーが一人だけ席が埋まっている長机のところに座ろうと思って、「隣いいですか?」と聞いたところ、先に座っていた令嬢が無視したうえに他の席に移ってしまい、一人ポツンと座ることになって目を潤ませるという、貴族令嬢の先制パンチを受けてしまう悲しいエピソード。


知っているだけに何とかしてあげたいと思うけど、もう事後みたいで、シェリーは最前列の席でポツンと座っているのよね。


「ねぇ、アニー。やはり最後列はやる気がないという印象を与えそうだし、最前列に移動しない?」

「そうですね。あの、よければピンクの髪の子と同席しませんか?あと2人座れますし、さっき意地悪されたように見えたので気になってしまって…。」


私はアニーの視野の広さと優しさに感動してしまいました。

いい子すぎるよ。前世でもこんな友達がほしかった…。


「そうね、実は私も気になっていたの。アニーは優しいね。ますます好きになっちゃう。」

素直な気持ちを伝えるとアニーは顔を真っ赤にして、「エリエス様ほどではありません」と謙遜していました。


私たちは荷物をまとめて最前列に移動し、シェリーに話しかけました。


「お隣、よろしいかしら?」

他の令嬢がざわついているけど気にしません。

シェリーは潤んだ目で驚いたように私たちを見ると、頑張って笑顔をつくり「はい。」と言いました。


うわぁ、本当にかわいいなぁ。


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